ODA(政府開発援助)

ODAメールマガジン第345号

2017年3月8日発行

平成29年3月9日

ODAメールマガジン第345号は,シリーズ「世界を変える日本の技術」第6弾として株式会社ゼロ・サムから「インドで初めての交通渋滞緩和システム」,シリーズ「質の高いインフラ支援」第3弾としてウズベキスタン共和国から「シルクロードの国・ウズベキスタンの産業と生活を支える日本の発電システム」,シリーズ「国際機関と開発協力」第6弾としてUNFPAソマリア事務所から「命をつなぐ イラクの国内避難民に対する日本・UNFPAの共同支援」と,国際協力局政策課から「【イベント報告】「ワン・ワールド・フェスティバル2017」に参加しました!」をお届けします。

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インドで初めての交通渋滞緩和システム

原稿執筆:株式会社ゼロ・サム 菊池 力

インドでの待ち合わせでは,予定時間から遅れるのは日常茶飯事です。
理由は決まって,「交通渋滞」であり,その言い訳を聞く側も,「ノー・プロブレム」と挨拶を交わします。この交通渋滞は,自動車の増加に,道路や地下鉄などのインフラ整備が追い付いていないためであり,経済の発展段階において発生する問題です。

  • インド・グジャラート州の交通渋滞
    (写真提供:株式会社ゼロ・サム)

そのインドの状況を変えようと奮闘しているモディ首相の出身地がグジャラート州です。この州では,発電,道路などのインフラが他都市と比べると整備されており,インドで初めての新幹線も,ムンバイ市からアーメダバード市(グジャラート州)を結ぶ計画です。

このグジャラート州でも発生している交通渋滞を緩和するため,日本のODAで試験的に導入されたのが,インドで初めての交通渋滞緩和システムです。道路に設置されたセンサーで交通状況を把握し,モバイル通信を使ってインターネット上の交通センターへ情報を集約し,道路上の交通情報板へ,まさに今発生している交通渋滞情報を表示します。自動車のドライバーは,先の道路の渋滞情報が分かるため,う回路を選択することで,交通が分散し,渋滞が緩和される仕組みです。

  • 交通情報板システム
    (写真提供:株式会社ゼロ・サム)

さらに,このシステムが持続的に運営できるように,交通情報板の半分を広告スペースとして企業に貸し出しています。企業の広告費から,システムの継続的な運営費をねん出する仕組みです。これにより,交通渋滞だけでなく,市の財政負担も緩和させることができます。

  • 交通情報板への広告表示例
    (写真提供:株式会社ゼロ・サム)

モディ首相の号令により,インド全土のインフラが整備されようとしています。このグジャラート州のシステムが他の都市に広まることで,待ち合わせに遅れたときの理由が,多様になるのでは!とひそかに期待しています。

  • 交通渋滞緩和システムのオープニングセレモニー
    (写真提供:株式会社ゼロ・サム)

シルクロードの国・ウズベキスタンの産業と生活を支える日本の発電システム

原稿執筆:在ウズベキスタン日本国大使館 向井 晋一 一等書記官

ウズベキスタンは,中央アジア5か国(注)の中で最大の人口を有し,かつ他の4か国すべてと隣接する唯一の国です。
日本は,そうした地理的要衝にあるウズベキスタンの持続的な発展が地域全体の安定にも貢献するという観点から,同国が1991年に旧ソ連から独立して以降の国づくりを一貫して支援してきました。(注 カザフスタン,トルクメニスタン,ウズベキスタン,タジキスタン,キルギス)

着実な経済成長を続けるウズベキスタンでは,産業の発展に伴って年々電力エネルギーの需要が拡大している一方で,全国10か所にある天然ガス火力発電所の多くは,旧ソ連時代以来の旧式システムで稼働しています。そこで,「質の高いインフラ輸出」を目指しつつ,電力エネルギー分野を含む「経済インフラの更新・整備」をウズベキスタン支援の重点分野に定める我が国が,電力エネルギー分野の再開発にはぜひとも日本の技術を導入したいというウズベキスタン側の期待に応える形で,二人三脚の取組が始まりました。

新たに導入されている日本の技術は,天然ガスによる発電だけではなく,その排熱をボイラで回収してさらに蒸気タービンでの発電等を行う「ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)」というもので,このシステムの導入により,天然ガス燃料の有効活用やCO2排出の大幅な削減が可能となります。

日本製のGTCCシステムは,ウズベキスタン側の自己資金で産業中心地のナボイ火力発電所に導入されたのを皮切りに,円借款も入った整備プロジェクトによって南部のタリマルジャン火力発電所に導入されたほか,今後も,円借款によってナボイ火力発電所(増設)と東部のトラクルガン火力発電所にも整備されることが決まっています。

  • タリマルジャン火力発電所に導入された
    日本製の発電設備
  • トルクメニスタンとの国境近くにある
    タリマルジャン火力発電所

さらに,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が首都タシケントの熱電併給所(電力,工業用蒸気,給湯・暖房用熱水を一緒に産出する施設)に,「高効率ガスタービン・コジェネレーション」という排熱を活用した同様のシステムを実証事業として導入。実証の結果,首都のエネルギーを支えるタシケント熱電併給所の抜本的な効率化はウズベク側に高く評価され,円借款による市内の別の熱電併給所整備事業でも同様のシステムが導入されることが期待されています。また,NEDOは,東部の人口密集地フェルガナにおいて,やや規模の小さなシステムの実証事業を行うことでも合意しています。

  • タシケント熱電併給所に設置された
    日・ウズベキスタン協力の記念プレート

シルクロードを通じて古代から日本と深い繋がりを持つウズベキスタンの地で,質の高い日本のインフラは今日も市民の生活と産業を支えています。

命をつなぐ イラクの国内避難民に対する日本・UNFPAの共同支援

原稿執筆:国連人口基金(UNFPA)ソマリア事務所 谷口英里(ジェンダーに基づく暴力対策専門官)

国連人口基金(UNFPA)は,一人ひとりが「子供を,いつ,何人産むか」を選択できる権利を持ち,すべての妊娠が望まれ,すべての出産が安全に行われるために活動をしています。

私は2016年9月から12月の4か月間,人道支援活動をサポートするため,UNFPAイラク事務所へ出向しました。UNFPAイラク事務所は,2016年より日本政府の支援を受けて,難民・国内避難民・帰還民の女性が包括的なリプロダクティブヘルス・サービス(家族計画,性感染症の予防と治療,妊産婦及び周産期死亡率の予防を含む一連のサービス)を利用できるよう活動を行っています。

  • リプロダクティブヘルス・クリニックで
    サービスを受ける女性たち(1)
  • リプロダクティブヘルス・クリニックで
    サービスを受ける女性たち(2)

昨年5月,イラク政府は,イラク・レバントのイスラム国(ISIL)の勢力が国内で2番目に強いファルージャを奪還するため,軍事作戦を開始しました。その結果,短期間で8万5千人以上の国内避難民がファルージャ周辺に流れ込み,人道支援に携わる機関は必要な基本的社会サービスを素早く提供する必要に迫られました。
このような中,UNFPAは,軍事作戦開始前に日本政府の支援を受けて,3か所の国内避難民キャンプに開設していた産院を拠点とし,産前・出産・産後サービスを直ちに提供することができました。
更に,国内避難民の動きに合わせ,国内避難民キャンプに到着する前から必要なサービスへアクセスできるよう,移動医療チームを送り込んだり,増加するニーズに対応するため,追加でリプロダクティブヘルス・クリニックを開設しました。

リプロダクティブヘルス・クリニックは,産院とは違い,実際の出産に関わるマタニティ・サービスは行いませんが,それ以外の産前・産後ケアや家族計画,性感染症など生殖器系感染症の診断と治療,女性に対する健康相談といった一連のサービスを提供するクリニックです。これにより,ファルージャの国内避難民に質の高いリプロダクティブヘルス・サービスを提供することができ,軍事作戦開始後の4週間で3百件以上の出産が安全に行われました。こうした結果を受け,UNFPAはその迅速な対応をイラク政府・ドナー・他の人道支援機関などから感謝されましたが,これも日本からの支援があってのことです。

  • 移動式リプロダクティブヘルス・クリニックへ集まる人々
  • 国内避難民キャンプ内にある産院
  • 国内避難民キャンプにある
    簡易式リプロダクティブヘルス・クリニック

3か所の国内避難民キャンプにある産院のひとつを,2回訪れる機会を得ました。
この国内避難民キャンプでは,いまだに自分たちの家に戻れないおよそ8千世帯の国内避難民が生活しています。偶然にも,一人の女性の出産に立ち会うことがありました。こうした厳しい状況の中でも新しい生命が生まれ,同時に新たな希望の芽も生まれてくることに深く感銘を受けると共に,新しい命の誕生と母親の安全を守るというUNFPAの使命に誇りとやりがいを感じた時でもありました。

  • アミリヤート・ファルージャの
    国内避難民キャンプにある産院への視察
  • アミリヤート・ファルージャの産院内で産婦人科医と共に

現在イラクでは,3百万人以上の国内避難民が3,700か所で生活しており,また,主にシリアからの難民も20万人以上います。

2016年10月より始まった,ISILからのモスル奪還作戦により,国内避難民の数は更に増え,奪還作戦の進捗状況によっては,2017年には更に120万人の人々が家を離れることを余儀なくされる可能性もあると言われています。こうした中で,UNFPAは引き続き日本政府及び様々なパートナーとの連携をもとに,迅速に人道支援を展開し女性の尊厳を守っていきます。

【イベント報告】「ワン・ワールド・フェスティバル2017」に参加しました!

原稿執筆:国際協力局政策課

2月4日(土曜日),5日(日曜日),大阪のカンテレ扇町スクエア・北区民センター及び扇町公園にて関西最大の国際協力イベント「ワン・ワールド・フェスティバル」(主催:ワン・ワールド・フェスティバル実行委員会,協力:外務省)が開催されました。2日間で約25,000人が来場し,国際協力に携わる118団体が参加した本フェスティバルにて,外務省は以下のプログラムを実施しました。

1 トークライブ
「LiLiCoとハマカーンが外務省に聞いちゃうよ!国際協力って何のため!?」

LiLiCoさんとハマカーン浜谷さんをゲストに,トークライブを実施し,国際協力に関するクイズに会場が一丸となって挑戦!日本がどのような支援を実施しているか,なぜ日本が途上国を支援するのか,そんな皆様の疑問に外務省の職員が回答し,国際協力について楽しく学べるステージとなりました。

  • 左から:司会者,LiLiCoさん,
    ハマカーン浜谷さん
  • 外務省職員も登壇

トークライブで紹介された日本の支援(クイズ)はこちら。

Q1「プノンペンの奇跡」:詳しい解説

Q2「母子健康手帳」:詳しい解説

Q3「つばさ橋」:詳しい解説

2 写真展
「“誰も取り残さない”世界を願って leaving no one behind」

昨年お台場で開催された「グローバルフェスタJAPAN」の募集作品約100点を大阪でも展示し,世界でがんばる日本人の姿や,現地の人々の様子を皆様に紹介しました!写真展ではクイズラリーを実施し,正解者には外務省員から寄付があった世界各国の民芸品をプレゼント。400人以上の方々がクイズに参加してくれました!

  • クイズに参加してくれた方の様子
  • 写真展の様子

3 トークセミナー
「未来に繋がるアフリカ大陸 TICAD VIの成果と日本企業の更なる飛躍」

昨今,日本企業が多数進出し,そのビジネスチャンスに関心が集まるアフリカについて,異なる業界のスペシャリストが自らの経験談を元に,アフリカビジネスについて紹介しました。
株式会社Digital Gridは,未電化地域の村落のキオスク(小売店)に太陽光パネルを設置し,LEDランタンや携帯電話の充電など,電気の「量り売り」サービスを展開するビジネスモデルを紹介し,避雷器専業メーカーである音羽電機工業株式会社は,世界有数の雷被害を受けている国のルワンダで雷害対策ビジネスに取り組むとともに,ルワンダ人のABEイニシアティブ研修生をインターン生として受入れ,エンジニアの育成にも尽力している例を紹介しました。

外務省からは,TICAD VIの報告を行うとともに,日本企業の海外進出支援や,近年のアフリカ情勢について解説しました。また,ルワンダ出身のABEイニシアティブ第1期生も参加し,音羽電機工業におけるインターン経験について披露してもらいました。

来場者の皆様には日本とアフリカの未来に向けた繋がりを感じて頂く良い機会になりました。

  • 外務省民間援助連携室職員の発表
  • 登壇者のみなさま

4 キャリアガイダンス
「国際機関で働くには!?」

国際機関で働くために必要な資格や経歴に加え,応募方法などについてわかりやすく解説するとともに,国際移住機関(IOM)ソマリア事務所の邦人職員からは具体的な活動内容を紹介しました。ガイダンスのほかにも,相談ブースを設け,国際機関での勤務に関心のある方々が数多く来場しました。

国際機関で働く日本人職員の数は増加しているものの,まだまだ少ない状況にありますので,外務省は引き続き国際機関で働くにはどうしたらいいのかについて情報を発信していきます!

国際機関での勤務に関心のある方は,当省国際機関人事センターホームページ別ウィンドウで開くをご覧ください!

  • キャリアガイダンスの様子
  • 相談ブースではたくさんの質問が寄せられました

5 外務省ブース

外務省の取組や日本の国際協力等,幅広い分野の情報を紹介しました。

6 NGO/NPO支援制度説明会,NGO相談員による情報&相談コーナー

外務省や政府機関,民間財団,企業によるNGO支援事業について説明会を開催し,NGO/NPO関係者の皆様の活動に対する政府の支援について発信しました。
また,外務省委託の「NGO相談員」が,来場者の皆様からの国際協力やNGOに関する相談への対応を行いました。

  • 支援制度説明会の様子
  • NGO相談員による相談ブースの様子

今年で24回目の開催を迎えた「ワン・ワールド・フェスティバル」。本年も多くの来場者のみなさまに外務省企画に参加していただきました。今後とも,外務省は地方における情報発信に尽力していきますので,是非当省イベントにお越し下さい!