ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第302号
ODAメールマガジン第302号は,東ティモール民主共和国からの「紛争復興から経済社会開発へ 世代交代が進む東ティモールの今後」と「東ティモールの人々に安全な水道水を供給するために 24時間給水への取り組み」をお届けします。
紛争復興から経済社会開発へ 世代交代が進む東ティモールの今後
原稿執筆:在東ティモール日本国大使館 吉川 幸絵 専門調査員
東ティモールは2002年の独立を経て2006年の騒乱から脱し,2012年には大統領・国民議会選挙を平和裏に実施し,同年末には国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)完全撤収を果たしました。
政治が安定したことを受け,2007年頃を境に年平均10%前後の急速な経済成長を続けています。2015年2月には同国を長年リードしてきたシャナナ・グスマン氏が首相の座を退き,ルイ・アラウジョ新首相の下に第6次内閣が発足し,多くの有望な若手が幹部に登用される等,世代交代が進んでいます。
東ティモールは人口約120万人の小国ですが,その領海内で天然ガスや石油が採掘されているため,その資源収入を元手に基礎インフラや,年金等社会保障及び教育,保健等の社会インフラ整備が行われています。同天然資源収入は当地中央銀行が管理する「石油基金(Petroleum Fund)」によって管理・運用されており,その運用成果及び運用の透明性は各方面から高く評価され,同国の平和と安定及び経済成長に大きく貢献しています。
しかし,若い国であるからこそ非常に多くの課題を抱えていることも事実です。
現在開発中の石油及びガス田は,2020年代には枯渇することが予想されています。さらに,平和を獲得したことによって,15歳未満の年少人口が急速に増加しています。しかし,例年国家予算の約8~9割を天然資源収入に依存する同国では,人口増加と経済成長にその他の産業開発が追いついておらず,天然資源収入に代わる国家歳入の増加や失業対策が今後の大きな課題となっています。現在東ティモール政府は,資源収入を活用しながらも,それらに過度に依存しない経済の構築を掲げて,手つかずの自然を活かした観光産業やコーヒー,コメ,トウモロコシ等の農業の振興に力を入れています。
日本は2011年に発表された,2030年までの当地の開発計画を定めた「戦略開発計画(SDP)」を踏まえ,「経済活動活性化のための基盤づくり」,「農業・農村開発」及び「政府・公共セクターの能力向上」の3分野を重点分野として設定しています。先に挙げた課題解決に貢献するために,日本は東ティモールの人々と手を取り合い,彼らと共により多くの人が裨益する息の長い支援を実施しています。
東ティモールの人々に安全な水道水を供給するために 24時間給水への取り組み
原稿執筆:千葉県水道局 小林 保雄 元JICA専門家
日本は,独立して間もない東ティモールにおいて,安全かつ24時間給水を実現すべく様々な取組みを行なってきました。
特に,首都ディリではべモス取水施設,べモス・ラハネ導水管,4浄水場(べモス,セントラル,ラハネ,ベナマウク)及び配水池(べモス,セントラル)を修復及び建設し,現在では日量約10,000トンの水を浄水するに至っています。
【24時間給水へ向けたさらなる日本の取組み】
浄水施設の改善を図った次の日本の取組みは配水ネットワークの改善でした。
ディリの配水ネットワークは,無断で水道管に穴を開けること(違法接続)によって発生する漏水,3つの時代(ポルトガル,インドネシア,東ティモール)に導入され重複した配水管,そして,配水ネットワークの基本であるブロック給水(注)が実施されていない等の問題により,給水時間が1日あたり数時間程度でした。
このため,私の役割は,先に述べた問題を解決するための技術指導をとおして,ディリの人々に24時間給水を実現することでした。
(注)ブロック給水とは,配水区域を水源や配水池の能力や標高差,河川及び道路等の地勢により分割して,(1)水圧の均等化,(2)現況把握の容易性,(3)平常時の配水管理と維持管理の向上,(4)非常時対応の向上を図るための施策。
【ベナマウクプロジェクト】
私は,ディリの西部のベナマウク地区にて現地職員と協働してパイロット事業を行いました。
この地区は多くの貧困層が無断で水道管に穴をあけるため漏水が多く,また標高が高いため浄水場から出た水が低区に流れ出てしまうことから配水管には水圧がかかっておらず,ディリの中でも特に給水の状態が悪い地域でした。
このプロジェクトでこの地域においてブロック給水を導入したところ,配水管の水圧が上がり,これまで水圧が低いため地下にしみ込んでいた漏水が全て地上に現れました。そして,それら漏水を全て修理し全ての給水管に蛇口を取付けた結果,ベナマウク地区において十分な水圧で24時間給水を実現することが出来ました。
この方法は短期間で少ない投資で効果が得られるため,今後は現地職員の手で他の地域へ展開することを期待しています。