外交青書・白書
第2章 地域別に見た外交

4 東南アジア

(1)インドネシア

インドネシアは、世界第4位の人口(約2億7,000万人)を有する東南アジア地域の大国として、東南アジア諸国連合(ASEAN)において主導的な役割を担うほか、G20メンバー国として、国際社会の諸課題においてもイニシアティブを発揮している。

2019年10月に発足したジョコ大統領の第2期政権は、国会の議席の約82%を与党が占める安定政権として、(1)インフラ開発、(2)人材開発、(3)投資促進、(4)官僚改革、(5)適切な国家予算の執行を優先課題として取り組んでいるが、新型コロナの影響により、近年一貫して5%前後を維持してきた経済成長率は、2020年にマイナス成長を記録した。日本は、「戦略的パートナー」としてジョコ第2期政権の優先課題であるインフラ整備と人材育成の分野における協力を積極的に進めているほか、新型コロナ対策及び保健・医療体制の強化のために医療機材や約688万回分(2022年2月時点)のワクチンの供与などの協力を行っている。

日本とインドネシアは、新型コロナの世界的な感染拡大により国際的な人の往来が制限される中、2021年は岸田総理大臣がジョコ大統領と首脳電話会談(11月)を行ったほか、茂木外務大臣はルトノ外相との間で4度(2月3月4月及び6月)、林外務大臣は同外相との間で1度(12月)電話会談を行った。これらの会談の中で、二国間関係の強化のほか、地域及び国際社会の諸課題に対する両国の連携について緊密に意見交換を行った。さらに、茂木外務大臣は3月6月及び9月にルトノ外相と対面で外相会談を行い、二国間関係のほか、海洋問題やミャンマー情勢などの地域情勢について意見交換を行った。

また、安全保障面での協力も深化しており、3月には茂木外務大臣及び岸信夫防衛大臣がルトノ外相及びプラボウォ国防相と第2回日・インドネシア外務・防衛閣僚会合(「2+2」)を東京で実施し、その機会に、茂木外務大臣はプラボウォ国防相との間で2015年から交渉を行ってきた防衛装備品・技術移転協定の署名を行い、同協定を基礎として両国の安全保障協力を一層推進していくことで一致した。また、同会合ではスールー・セレベス海とその周辺地域における協力や海洋協力の強化についても一致した。

第2回日・インドネシア外務・防衛閣僚会合(「2+2」)(3月30日、東京)
第2回日・インドネシア外務・防衛閣僚会合(「2+2」)(3月30日、東京)
日・インドネシア防衛装備品・技術移転協定の署名(3月30日、東京)
日・インドネシア防衛装備品・技術移転協定の署名(3月30日、東京)

(2)カンボジア

カンボジアは、南部経済回廊の要衝に位置し、地域の連結性と格差是正の鍵を握る国である。過去20年間平均7%の成長を続けていたが、新型コロナの影響により2020年のGDPはマイナス3.1%となった。日本は、カンボジアに対して約132万回分(2022年2月時点)のワクチン供与などの協力を行ってきている。

1992年に初めて本格的PKOを派遣するなど、日本は和平とその後の復興・開発に協力してきた。両国関係は2013年に「戦略的パートナーシップ」に格上げされ、2021年11月には、林外務大臣とプラック・ソコン外相との間で12月には、岸田総理大臣とフン・セン首相との間でそれぞれ電話会談を行い、二国間関係と地域情勢について意見交換を行い、カンボジアが2022年にASEAN議長国を務めるに当たり、会議の成功に向けて協力していくことで一致した。

内政面では、2017年に最大野党・救国党が解党され、翌年の国民議会総選挙で与党・人民党が全議席を独占した。その後、カンボジア政府は、国内での対話促進や司法手続迅速化など民主的環境の改善措置を表明した。日本は、カンボジアの民主的発展を後押しするための取組として、法整備支援や政府と市民社会の間の対話促進事業を実施している。

日本が長年支援しているクメール・ルージュ裁判では、8月に第2-02事案(元国家元首が被告)上訴審の最終公判が実施され、2022年中に予定されている判決をもって裁判が完結する見込みが高まっている。

日・カンボジア首脳テレビ会談(12月1日、東京 写真提供:内閣広報室)
日・カンボジア首脳テレビ会談(12月1日、東京 写真提供:内閣広報室)

(3)シンガポール

シンガポールは、ASEANで最も経済が発展している国家であり、全方位外交の下、米国や中国を含む主要国と良好な関係を維持している。

国内では、リー・シェンロン首相率いる人民行動党(PAP)が、2020年の総選挙で90%以上の議席数を占め、安定した内政を基盤としてデジタル化の推進など、新型コロナ対策と経済の両立を図っている。

日本とシンガポールは、新型コロナの影響により政府要人の往来の機会が減少したものの、2021年は、5月に菅総理大臣が、11月に岸田総理大臣がそれぞれリー・シェンロン首相と、また12月には、林外務大臣がバラクリシュナン外相と電話会談を行い、地域の諸課題に対する二国間の連携などについて意見交換を行った。対面でも、4月に第15回日・シンガポール次官級政策協議を東京で実施し、二国間関係や地域情勢などについて意見交換を行った。8月には國場幸之助外務大臣政務官がシンガポールを訪問し、シム外務担当兼国家開発担当上級相との間で、新型コロナ対策に加え、グリーン社会の実現に向けた協力、デジタル協力、第三国におけるインフラ協力、多角的自由貿易体制の維持・強化などの経済分野や安全保障分野などの協力につき意見交換を実施した。また、両国は1997年に署名した「21世紀のための日本・シンガポール・パートナーシップ・プログラム(JSPP21)」を通じて、開発途上国に対して共同で技術協力を行っており、これまでに約400の研修を実施し、ASEAN諸国などから約7,000人が参加している。

日本文化情報の発信拠点としてシンガポールに2009年に開所された「ジャパン・クリエイティブ・センター(JCC)」では、感染症対策をとりつつ各種の発信やイベントを開催した。

シム外務担当兼国家開発担当上級相と会談する國場外務大臣政務官(8月11日、シンガポール)
シム外務担当兼国家開発担当上級相と会談する國場外務大臣政務官
(8月11日、シンガポール)

(4)タイ

タイは、1967年の「バンコク宣言」により誕生したASEANの原加盟国の一つであり、また、メコン地域の中心に位置し、地政学的に重要な国である。

日本とタイの外交関係の樹立は1887年の「日暹(にちせん)修好通商に関する宣言(日タイ修好宣言)」まで遡る。現在の両国関係は、二国間のみならず、地域及び国際社会でも協力する「戦略的パートナーシップ関係」にある。加えて、日本からの長年にわたる政府開発援助や民間企業による投資の結果、タイは自動車産業を始めとする日本企業にとっての一大生産拠点となり、今日では地球規模でのサプライチェーンの一角として日本経済に欠くことのできない存在であり、6,000社近い日本企業が進出し、8万人以上の在留邦人が暮らしている。

新型コロナの感染拡大に伴う人的往来の制限のため、2021年は、対面での要人往来は実施されていないが、4月に菅総理大臣がプラユット首相と、11月に岸田総理大臣が同首相と、3月及び8月に茂木外務大臣がドーン副首相兼外相と、また、11月に林外務大臣が同副首相兼外相と電話会談を実施した。さらに、8月には茂木外務大臣とドーン副首相兼外相が共同議長を務める形で、両国の関係省庁が参加し、両国の経済分野での協力推進に向けた意見交換を行う場である第5回日・タイ・ハイレベル合同委員会をオンラインで開催し、ハイレベルでの交流を継続した。

一方、タイ国内状況に目を向ければ、経済・社会的格差や新型コロナの感染拡大に伴う経済状況の悪化などを背景に、若年層を中心とした政府や王室に対する抗議デモが活発化し、不安定な状況が継続している。日本はこれまでタイにワクチンを約204万回分(2022年2月時点)供与するなど、新型コロナ流行下のタイの経済・社会の安定に向け協力してきている。

第5回日・タイ・ハイレベル合同委員会の様子(8月11日)
第5回日・タイ・ハイレベル合同委員会の様子(8月11日)

(5)東ティモール

東ティモールは、インド太平洋の要衝、オーストラリアとインドネシア間の重要なシーレーンに位置する、21世紀最初の独立国家(2002年)である。同国は、国際社会の支援を得つつ平和と安定を実現し、民主主義に基づく国造りを実践してきた。経済は天然資源(石油や天然ガス)への依存度が高く、国家の最優先課題として産業多角化に取り組んでいる。外交面では、東ティモールの最重要外交課題であるASEAN加盟に向けて、ASEAN各国との調整などに引き続き取り組んでいる。

日本は、独立以前から東ティモールに対する支援を継続しており、良好な関係を維持している。2021年には、洪水及び新型コロナの影響を受けた地域に対する食料の供給、若手行政官の育成支援などを行い、また、プレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港の整備計画に関する交換公文に署名した。また、新型コロナの感染拡大を受け、約17万回分(2022年2月時点)のワクチンの供与を行ったほか、医療機材の供与などの支援を行っている。

(6)フィリピン

フィリピンは、2012年から一貫して6%以上の高い成長率を維持してきたが、2020年は、新型コロナの感染拡大に伴い導入された国内経済活動の制限措置による影響もあり、前年(2019年)比マイナス9.6%成長を記録した。その反動で、2021年は前年比プラス5.6%に回復した。ドゥテルテ大統領は新型コロナ対策においても国民の高い支持を得ており、汚職撲滅、治安・テロ対策などの優先課題への対応に、引き続き強い指導力を発揮した。また、ミンダナオ和平については、新型コロナの影響を受けたモロ・イスラム解放戦線(MILF)の退役・武装解除の遅れに鑑み、2021年11月、バンサモロ基本法が改定され、2025年の自治政府樹立を目指したプロセスが継続している。日本とフィリピンは、2021年に国交正常化65周年及び「戦略的パートナーシップ」10周年を迎え、新型コロナの影響により政府要人の往来は実施されなかったものの、「黄金時代」にある日・フィリピン関係の更なる強化のため、5月に菅総理大臣が、12月に岸田総理大臣がそれぞれドゥテルテ大統領と電話会談を、また4月に茂木外務大臣が、12月に林外務大臣がそれぞれロクシン外相と電話会談を実施し、二国間関係や地域情勢について議論を行い、スールー・セレベス海とその周辺地域における協力強化でも一致した。安全保障面では、10月に第4回日・フィリピン海洋協議を開催し、海洋安全保障に向けた協力や意見交換を推進しているほか、外務・防衛閣僚会合(「2+2」)の立上げに向けて検討を進めている。また、経済面では、7月に日・フィリピン経済協力インフラ合同委員会の第11回会合が開催され、2017年から5年間での官民支援累計額1兆円の目標を前倒しで達成したことを確認したほか、スービック湾地域開発マスタープラン策定支援の完了を発表するなど、フィリピン政府が掲げるインフラ政策「ビルド・ビルド・ビルド」を引き続き強力に後押ししている。加えて、新型コロナ対策の一環で、ワクチン接種体制構築のための支援や約308万回分(2022年2月時点)のワクチンの供与などの協力を行っている。

(7)ブルネイ

ブルネイは、豊富な天然資源を背景に、高い経済水準と充実した社会福祉を実現し、政治的、経済的に安定した国である。立憲君主制であり立法評議会があるものの、国王が首相、財務・経済相、国防相及び外相を兼任しており、国王の権限は非常に強い。東南アジアの中心に位置し、南シナ海のクレイマント国の一つであり、ASEANの一体性、統合強化を柱とするバランス外交を行っている。

ブルネイの経済成長率は、原油価格の上昇及び中国との合弁企業による石油精製事業に支えられ、2021年もプラスを維持すると予測されている一方、エネルギー資源への過度の依存から脱却すべく経済の多角化を目指している。

日本との関係では、1984年に外交関係を開設し、様々な分野で良好な関係を発展させてきた。また両国の皇室・王室関係も緊密で、2019年の即位礼正殿の儀にはボルキア国王が参列した。ブルネイは日本へのエネルギー資源の安定供給の面からも重要であり、ブルネイの液化天然ガス(LNG)輸出総量の約7割が日本向けであり、同国産LNGは日本のLNG総輸入量の約5%を占めている。2021年にASEAN議長国を務めたブルネイとは、新型コロナの影響下においても緊密に連携し、ミャンマーに関するASEAN特使を兼任するエルワン第二外相との間で、外相電話会談を7度、対面での外相会談を1度実施し、二国間協力及び地域の重要課題、特にミャンマー情勢について意見交換を行った。また、ブルネイへの新型コロナ対策支援として、約10万回分(2022年2月時点)のワクチンに加え、日本の拠出金によるアジア欧州財団(ASEF)の備蓄事業を通じ、医療用N95マスク5万枚を提供した。

(8)ベトナム

ベトナムは、南シナ海のシーレーンに面し、中国と長い国境線を有する地政学的に重要な国である。また、東南アジア第3位の人口を有し、中間所得層が急増していることから、有望な市場でもある。現在、インフレ抑制などのマクロ経済安定化、インフラ整備や投資環境改善を通じた外資誘致を通じ、安定的な経済成長の実現に取り組んでいる。2020年はASEAN議長国及び2020年から2021年は国連安保理非常任理事国を務め、国際社会での役割も拡大している。

日本とベトナムは、「アジアにおける平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップ」の下で、様々な分野で協力を進展させている。新型コロナ流行下においても、両国のハイレベル間のやり取りは活発に行われており、2021年3月から9月の間に、計6回にわたり両国首脳間、国会議長間、外相間の電話会談が行われた。また、11月には岸田政権初の外国首脳賓客(実務訪問賓客)としてチン首相が訪日した。日越首脳会談において、両首脳は(1)ワクチンの追加供与(2022年2月末時点で約735万回分供与済)、官民協働のワクチン開発協力などのコロナ対策における協力、(2)日越デジタルトランスフォーメーション・イニシアティブ、サプライチェーン多元化、技能実習生を取り巻く環境整備などのポスト・コロナの経済再生に向けた協力、(3)気候変動などの国際社会の共通課題における協力、(4)サイバーセキュリティ及び衛生分野、海上保安能力向上などの安全保障分野における協力、(5)2023年の日越外交関係樹立50周年に向けた協力を強化することを確認した。元来親日的なこともあり、ベトナム国民の訪日者数は2011年の約4万人から2019年には49万人を超え、日本に暮らすベトナムの人々は2011年の約4万人から2021年12月末には約43万人に増えており、国別在留外国人数で中国に次いで2番目に多い数字となっている。

日・ベトナム首脳会談(11月24日、東京)
日・ベトナム首脳会談(11月24日、東京)

(9)マレーシア

マレーシアは、マレー半島の「半島マレーシア」とボルネオ島の「東マレーシア」から成る、インド洋と太平洋の結節点に位置し、南シナ海とマラッカ海峡に面した地政学的に重要な国である。また、13州及び3連邦直轄地から成る連邦国家で、ブミプトラ(土着の民族を含むマレー系)(69%)、華人系(23%)、インド系(7%)などから構成される多民族国家である。

2021年8月に就任したイスマイル・サブリ首相は、内政の安定化を図りつつ、新型コロナ対策と経済の回復に注力している。

日本は、「戦略的パートナーシップ」に基づき安全保障分野及び経済分野を始めとした協力を進めているほか、2021年には、マレーシアに対し、ワクチン約100万回分や、ワクチン用コールド・チェーン機器、医療機器の供与を行った。新型コロナの影響で、二国間の政府要人の往来は例年に比べて減少したものの、12月には岸田総理大臣とイスマイル・サブリ首相が、また、同月、林外務大臣とサイフディン外相がそれぞれ電話会談を行い、二国間関係の強化のほか、地域及び国際社会の諸課題に対する両国の連携について意見交換を行った。

人材育成分野では、マハティール首相(当時)が1982年から開始した日・マレーシア間の友好関係の基盤である東方政策により、これまでに2万6,000人以上のマレーシア人が日本で留学及び研修した。2022年に同政策は40周年を迎えることから、二国間の更なる交流が期待される(62ページ コラム参照)。また、2011年9月に開校したマレーシア日本国際工科院(MJIIT)をASEANにおける日本型工学教育の拠点とするための協力が進められているほか、筑波大学のマレーシアにおける分校設置に向けた協議が行われており、実現すれば日本の大学が設置する初の海外分校となる。経済面においても、マレーシアへの進出日系企業数は約1,500社に上るなど、引き続き緊密な関係にある。

コラム東方政策40周年

2022年はマレーシアが東方政策を開始して40周年に当たります。

東方政策は、当時のマハティール首相が提唱し、1982年に始まった政策です。同首相は、日本人の労働倫理、学習・勤労意欲、道徳、経営能力などが日本の発展の原動力であったと考え、これらを日本から学ぶことで、マレーシアの経済や社会を発展させようと訴えたのです。

東方政策の下、数多くの留学生が日本の大学や高等専門学校に派遣されました。また、日本の民間企業や地方自治体、国際協力機構(JICA)が研修生を受け入れ、産業技術や経営スキルの習得を支援しました。

東方政策は基本的にマレーシア政府の予算で実施されていますが、90年代後半のアジア通貨危機によりマレーシアの財政が厳しくなった時期には、日本の円借款によって継続されました。

マレーシアの政権が変わっても東方政策は引き継がれ、同政策の下で日本に派遣された留学生や研修生は現在までに2万6,000人を超えます。東方政策により育まれた人材は、マレーシアの産業や社会の発展を支えてきただけでなく、日本とマレーシアの架け橋としても重要な役割を果たしてきました。東方政策によって日本に親しみと友情を感じている人材が長年輩出され続けていることは、今日、マレーシアが極めて親日的である理由の一つではないでしょうか。

なお、東方政策以外の留学・研修も含めれば、マレーシア政府各省庁の次官級ポストのうち、実に半分以上が日本への留学・研修経験者で占められています(2021年12月時点)。また、ビジネス界で活躍する日本への留学・研修経験者も多く、日本語を話し日本の労働倫理をよく知る人材の存在が、日本企業のマレーシア進出を促し、各企業の研修などを通じて更に知日派人材が育てられるという好循環を生んでいます。

人材育成を通じた経済や社会の発展という東方政策の精神は、今もその意義を失っていません。しかし、社会の移り変わりに伴い変化する課題やニーズに合わせ、東方政策も進化を続けています。日本は東方政策に基づく留学生・研修生の受入れだけでなく、マレーシア国内における人材育成に対する支援も行っています。その取組は80年代の職業訓練指導員・上級技能訓練センター(CIAST)(注1)への支援から、2010年代のマレーシア日本国際工科院(MJIIT)(注2)設立支援、そして日本の大学として初めてとなる筑波大学の海外分校早期開校に向けた支援など、職業訓練のみならず高等教育分野にも幅を広げています。

日本政府としては、2022年に予定される様々な記念行事などを通じ、過去40年間にわたり日・マレーシア間の協力を支えてきた様々な関係者や団体との連携を再強化し、今後の両国の末永い友情と協力関係の発展に結びつけていきたいと考えています。

東方政策40周年のロゴマーク
東方政策40周年のロゴマーク
東方政策留学生として日本への留学を控えるマラヤ大学・日本留学特別コース所属学生の卒業式(2020年2月)
東方政策留学生として日本への留学を控えるマラヤ大学・日本留学特別コース所属学生の卒業式(2020年2月)

(注1) CIAST:The Centre for Instructor and Advanced Skill Training

(注2) MJIIT:Malaysia-Japan International Institute of Technology

(10)ミャンマー

ミャンマーでは、2020年11月に総選挙が実施され国民民主連盟(NLD)が圧倒的勝利を収めた。しかしミャンマー国軍は有権者名簿の重複などの選挙不正を主張し、政府がこれを受け入れなかったとして、2021年2月1日未明、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含むNLD政権幹部を拘束した。同日、大統領代行が緊急事態を宣言し全権をミン・アウン・フライン国軍司令官に委譲した。国軍のクーデターに国民は反発し、全国で不服従運動が拡大し、連日数万人規模のデモが実施され、公的機関職員のボイコットも行われた。これを受け国軍や警察はデモ隊に対し発砲などによる鎮圧を行った。

日本は、ミャンマーでの事態に重大な懸念を有しており、クーデター発生当日に外務大臣談話を発出したほか、事態発生以降、民間人に対する暴力の即時停止、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含む被拘束者の解放、民主的な政体の早期回復を国軍に対して強く求めている。また、8月の日・メコン外相会議においても、茂木外務大臣からミャンマー側に、拘束された関係者の解放や民主的な政治体制への早期回復を強く求めている。日本は、ミャンマー情勢の打開に向けてASEANの取組を後押しし、4月のASEANリーダーズ・ミーティングで合意した「5つのコンセンサス」を具体的成果につなげることが重要との考えの下、ASEAN特使の派遣や民主化勢力を含む全ての当事者との対話などの実現に向け、ASEANと緊密に連携している。

また、国際場裡(り)においては、G7として、クーデター発生直後の2度のG7外相声明においてクーデターや暴力への非難を表明するとともに、G7外務・開発大臣会合のコミュニケG7カービス・ベイ首脳コミュニケにおいても、ミャンマーについてG7の立場を明確にした。また、国連の場では、ミャンマー情勢などに関する人権理事会決議(2月、3月、7月)でコンセンサス(全理事国の一致で採択すること)に参加し、2月の決議では共同提案国に参加したほか、6月のミャンマーに関する国連総会決議では共同提案国に参加した上で賛成票を投じ、11月の国連総会第3委員会決議でも共同提案国入りするなど、国際社会と連携した対応をとってきている。さらに、3月の各国参謀長などによる共同声明でミャンマー国軍による暴力行為を非難した。

2月1日以降、国際機関を経由し、ミャンマー国民に直接裨(ひ)益する人道支援も積極的に実施しており、3月にICRC・WFP経由で900万ドルのラカイン州からの国内避難民支援及びUNICEF経由で209万ドルのコールド・チェーン支援を、5月にWFP経由で400万ドルの食料支援を7月にUNHCR・WFP・UNICEF経由で580万ドルの緊急無償資金協力を決定し、クーデターにより困窮しているミャンマー国民に、合計2,089万ドルの支援を実施したほか、酸素濃縮器の供与など新型コロナ対策関連の支援も行っている。日本としては、事態を注視しながら、必要な対応を行っていく。

(11)ラオス

ラオスは、メコン地域の全ての国と国境を有し、メコン連結性の鍵を握る内陸国である。2021年、内政面では、1月に第11回人民革命党大会が開催され、トンルン首相が党書記長に選出された。2月には第9回国民議会議員選挙が実施され、3月末に行われた国民議会初回会合においてトンルン首相兼党書記長が国家主席兼党書記長に、パンカム国家副主席が首相に選任され、今後5年間の党・政府の新体制が固まった。経済面では、8月に、これまでの国家社会経済開発5か年計画に加え、新たに経済・財政問題に関する国家アジェンダが国民議会で承認され、経済成長率の4%への回復を始め、具体的な数値目標が設定された。また、11月には、国連総会でラオスの後発開発途上国(LDC)の地位からの卒業が承認され、5年間の移行期間を経てLDCからの完全な脱却が見込まれる。

日・ラオス間では、4月に日・ラオス首脳電話会談を行い、事後に今後5年間の協力指針となる「日・ラオス戦略的パートナーシップの前進に向けた行動計画」を発表した。同計画にもある新型コロナに係る協力として、日本はこれまでに新型コロナワクチン約94万回分(2022年2月時点)を供与した。また、ラストワンマイル支援の一環としてワクチン保管用冷凍庫の供与、緊急無償資金協力として酸素濃縮器を始め医療機器の供与など、現地のニーズに沿った様々な支援を実施した。文化交流では、9月にオンライン・ラオス・フェスティバルが開催されるなど、新型コロナ流行下においても両国間の戦略的パートナーシップに進展が見られた。また、2022年1月には、林外務大臣がサルムサイ外相と電話会談を行い、両外相は、「日・ラオス戦略的パートナーシップの前進に向けた行動計画」の実施を通じて、両国関係の拡大・深化を図っていくことを確認した。

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