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アジアにおける平和と繁栄のための
戦略的パートナーシップに関する日本ベトナム共同声明

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1.はじめに

 ノン・ドゥック・マイン・ベトナム共産党中央執行委員会書記長は、麻生太郎日本国内閣総理大臣の招待を受け、2009年4月19日から同22日までの間、日本国を公式訪問した。ノン・ドゥック・マイン書記長は、訪問中、天皇陛下が御引見になり、麻生太郎内閣総理大臣と会談したほか、政界・経済界のリーダーを含む各界要人と面会した。麻生太郎内閣総理大臣との会談の中で、ノン・ドゥック・マイン書記長は、天皇皇后両陛下及びその他の皇族の都合の良い機会でのベトナムへの御訪問を再度謹んで招待した。また、ノン・ドゥック・マイン書記長は麻生太郎内閣総理大臣に対し、都合の良い時期にベトナムを訪問するよう謹んで招待し、麻生太郎内閣総理大臣は喜んでこれを受け入れた。

 4月20日に行われた麻生太郎内閣総理大臣とノン・ドゥック・マイン書記長との会談の中で、双方は、近年の日本・ベトナム両国関係の良好な発展に対し喜びの意を表明するとともに、日本国とベトナムとの間で構築されたアジアにおける平和と繁栄のための戦略的パートナーシップを発展させていくことで一致した。

 また、双方は、今後、共通の信頼と利益に基づき、アジアの平和と安定、協力と繁栄のため、二国間関係のみならず、アジア地域、ひいては国際社会の直面する諸課題についても緊密に協力していくことで一致した。

2.発展してきた日本・ベトナム関係

 双方は、2006年10月19日付で発表した共同声明「アジアの平和と繁栄のための戦略的なパートナーシップに向けて」を再確認するとともに、2007年11月27日付で発表した「日本・ベトナム間の戦略的パートナーシップに向けたアジェンダ」が、その後、着実に実施されていることを歓迎した。

 これらの共同文書の発出以降、両国の多面的な協力関係は、政治、経済、文化、人的交流などの幅広い分野で、また、すべての階層において、飛躍的に進展を遂げてきた。

 両国の間では、2006年10月のグエン・タン・ズン首相の日本国訪問、2006年11月の安倍晋三総理のベトナム訪問、2007年11月のグエン・ミン・チエット国家主席の日本国訪問、2008年3月のグエン・フー・チョン国会議長の日本国訪問及び2009年2月の皇太子殿下のベトナム御訪問といった要人往来が実施された。2008年は日本・ベトナム外交関係樹立35周年に当たり、これを記念して様々な行事が開催された。さらに、2009年4月には在福岡ベトナム総領事館が開設された。経済分野では、2006年の共同声明で掲げた、2010年までに二国間貿易総額を150億ドルにするとの目標を2年早く2008年には達成し、また、両国は同年12月には経済上の連携に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の協定(JVEPA)(以下、日・ベトナム経済連携協定という。)に署名した。さらに、文化交流や国民間の交流が拡大され、科学技術、教育・訓練、観光、労働等の分野における両国間の協力が強化された。

 ベトナム側は、ベトナム経済社会開発及び貧困撲滅のための日本国の政府開発援助(ODA)による効果的な支援を高く評価し、これに深甚なる感謝の意を表明し、更に、日本国からベトナムに対する民間直接投資が拡充していることを高く評価した。日本側は、ベトナムによる経済社会開発及びインフレ抑制、経済成長維持等に向けた種々の取組を高く評価し、ベトナムが引き続き発展し、刷新(ドイモイ)事業並びに国土の工業化及び近代化事業において一層の新たな成果を達成し、域内及び世界において積極的な役割を発揮することへの信頼を表明した。

 双方は、メコン地域開発の各協力プロジェクトや2009年の日メコン交流年を含む日本国のメコン地域諸国への協力が、メコン地域の発展に大いに貢献しており、これが東南アジア諸国連合(ASEAN)内の発展格差の是正に資するとともに、地域の平和、協力及び発展に寄与していることを高く評価した。

 双方は、二国間関係のみならず、地域及び国際場裡においても日本国とベトナムの間の協力が拡大していることを確認した。

3.今後の日本・ベトナム関係の展望

 双方は、アジアの平和と繁栄のための戦略的パートナーとして以下を含む様々な分野での協力を深化・拡大し、両国関係を一層発展させていく決意を共有することを確認した。

 双方は、今後、首脳レベルでの訪問を毎年実施することを確認するとともに、政府の関係省庁間の閣僚級及び高級事務レベル級の協議及び協力をより一層強化し、また、両国間の国会、政党、地方自治体、国民等様々なレベルでの交流を更に推進させる。

 双方は、日越協力委員会を毎年開催し、外務次官級政治対話を強化する。また、安全保障・防衛に関するハイレベルの交流を促進し、局長級協議を強化する。さらに、両国関係の緊密化に伴い、今後、法的分野における協力推進を図る。

 双方は、日・ベトナム経済連携協定が今後の両国経済関係の発展に大きな役割を果たすことを信じ、日・ベトナム経済連携協定の早期の効力発生及び円滑な実施に向けた協力を行う。さらに、競争力強化のための投資環境整備に関する日越共同イニシアティブの活動等を通じ、双方は日本企業による対ベトナム投資の更なる促進及びベトナムにおける投資環境の改善を行う。また、双方は、インフラ整備、エネルギー、製造業、裾野産業、物流、情報通信技術(IT)、防災、環境保全などの分野での従来からの協力に加え、原子力の平和的利用、宇宙開発、環境に配慮した航空機といった新たな分野における協力を推進する。

 日本側は、ベトナムによる、日本国のODAに関する腐敗防止の決意を評価した。双方は、ベトナムに対する日本国のODAを効果的に実施していくため、緊密に協力し、日越ODA腐敗防止合同委員会が取りまとめた汚職防止に向けた措置を厳格に実施する。また、双方は、南北高速道路、南北高速鉄道、ホアラック・ハイテクパーク等のプロジェクトの実現に向け、引き続き協力を行う。

 双方は、文化、科学技術、教育・訓練及び青少年交流における協力を重視し推進するとともに、お互いの伝統文化を尊重し文化財保護に関する協力を推進する。

 ベトナム側は、世界金融危機に対する日本国の貢献を歓迎し、アジア地域及び世界の経済が低迷状態を克服するために日本国が一層積極的に貢献することへの信頼を表明する。

 国際社会の諸課題に関し、双方は、国際連合、世界貿易機関(WTO)、アジア太平洋経済協力(APEC)、アジア欧州会合(ASEM)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジア首脳会議(EAS)等、双方が構成員となっている国際機関や会合の場において更に緊密に協力する。また、日本国とASEAN、又は日本国とメコン地域諸国との間の協力に際しても、双方は一層緊密な協力を行う。双方は、自由、公正かつ無差別の多角的貿易体制の強化に向けて協力し、保護主義の動きを抑止するとともに、ドーハ・ラウンド交渉が、現在の交渉の枠組みを維持しつつ、野心的かつバランスのとれた妥結に早期に達するよう推進する。さらに、環境・気候変動、防災及び感染症等の地球規模の諸課題に対し、双方は人間の安全保障を推進する観点から協力を推進する。また、双方は、気候変動問題に関し、すべての主要経済国が責任ある形で参加する公平で実効的な2013年以降の国際的枠組みにつき合意できるよう、協力していく。双方は、核兵器不拡散条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)の関連分野を含む軍縮・不拡散分野における協力を推進する。

2009年4月20日、東京にて

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