ODA(政府開発援助)

令和8年8月12日

評価年月日:令和8年7月8日
評価責任者:国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子

1 案件名

1-1 供与国名

 タジキスタン共和国(以下、「タジキスタン」という。)

1-2 案件名

 ドゥシャンベ市基幹電力系統変電所建設計画

1-3 目的・事業内容

 本事業は、首都ドゥシャンベ市において、220kVの送電用変電所の新設及び関連機材(変圧器、遮断器、断路器等)を供与することにより、電力流通システムの改善を図り、もってタジキスタン首都圏における電力の安定供給を通じた、同国における経済・産業開発基盤の整備に寄与するもの。供与限度額は32.55億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本事業は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、環境や社会への望ましくない影響がサイトそのものにしか及ばず、不可逆的影響は少なく、環境への望ましくない影響は、通常の方策で対応できると判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  1. タジキスタン共和国(一人当たり国民総所得(GNI)2,080ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
  2. 同国は、アジアと欧州、ロシアと中東を結ぶ地政学的に重要な地域に位置しており、同国の安定と発展は、地域の安定に寄与する。また、日本と同国は、1991年の同国独立以来、友好的な関係を築いており、同国は国際場裏でも日本と協力関係にある。我が国は、同国を含む中央アジア諸国の「開かれ、安定し、持続可能な」発展を支えることを「中央アジア+日本」対話や外相会合等で確認してきている。
  3. タジキスタンは、過去5年にわたり平均して年率8%超のGDP成長を続けており、それに伴い最大電力需要も13.16テラワット時(2016年)から18.46テラワット時(2022年)へ増加し、更に2040年までには31.77テラワット時に増加すると予想されている。とりわけタジキスタンの約21%の電力需要を占める首都ドゥシャンベ市は、政治・経済の中枢を担う国内最大の電力消費地である。人口流入や都市再開発計画に伴う商業、住居、公共設備拡充により、暖房使用量が増加する冬季を中心に、今後も電力需要の増加が予想されており、2023-2030年の電力需要伸び率は年間約3%と見込まれる(世界銀行:2022年)。
  4. かかる状況を踏まえ、タジキスタン政府は、2022年12月に電力整備及び電源運用の最適化を目指した「電力セクター発電拡充計画」を策定し、豊富な水力発電ポテンシャルの活用に向け、他ドナーの支援を得ながら中央アジア地域最大規模となるログン水力発電所(全て完成すれば3,600メガワット)をはじめとする新規電源開発を進めている。タジキスタンの豊富な水力ポテンシャルは国内のみならず、域内のエネルギートランジションを実現するうえで不可欠である。
  5. 一方で、電力系統設備の対策は遅れている。日本は、平成29年度無償資金協力「ドゥシャンベ変電所整備計画」の実施を通じ、市内の配電用変電所の整備を支援したが、それらの配電用変電所への電力を供給する送電用変電所を含むドゥシャンベ市近隣の電力系統においては、多くの設備が旧ソ連時代に整備されてから50年以上経過して老朽化が進んでおり、また恒常的に高い負荷率で稼働されている。かかる状況においては、単一設備事故時に残存設備が過負荷となることから、特に需要が高まる冬季においては、事故発生時の負荷切り替えが困難であり、電力供給信頼度に懸念が生じている。また、タジキスタンでは発電の9割以上を水力発電が占め、その大部分が山間部に位置していることから、山間部で発電された電力を首都圏へ安定的に送るには、送電の要となる送電用変電所の増強が喫緊の課題となっている。
  6. 本事業は、送電用変電所の新設及び関連機材を供与し、電力流通システムの改善を図ることにより、タジキスタン首都圏における電力の安定供給を目指すものである。本計画は、国有会社であるタジキスタン送電会社が策定する「電力セクターにおける優先的行動計画2022-2030」にも記載されており優先度の高い案件と位置付けられ、さらに、DX技術を活用した変電所の無人化に向けた条件整備を検討するパイロット事業としての役割も有している。また、本事業は水力発電による電力の安定供給に資するものであり、温室効果ガスを2030年までに1990年比で30~40%削減するという、タジキスタンのパリ協定に基づく「自国が決定する貢献(NDC)」における目標とも整合的である。
  7. 本案件は、2025年12月の「中央アジア+日本」首脳会合において重点協力分野として特定された「グリーン・強靱化」(エネルギートランジションに関する協力)を具現化するものである。対タジキスタン国別開発協力方針(2018年9月)において掲げられている、「経済・産業開発基盤の整備」にはエネルギー供給の安定化が含まれており、その方針にも合致する。さらに、SDGsゴール7(エネルギーをみんなに、そしてクリーンに)及びSDGsゴール13(気候変動に具体的な対策を)実現にも貢献する。

2-2 効率性

 調達機材については、協力準備調査の段階で、実運用上不要と判断される機器を省略するなど相手国と調整を図ることによってコスト縮減に努めた。

2-3 有効性

  1. 定量的効果:基準値:2022年実績値、目標値:2030年(事業完了3年後)
    1. 変圧器一台故障時最大利用率(既存の変電所)が158%から142%に減少する。
    2. 変圧器一台故障時最大利用率(新規の変電所)が120%となる。
    3. 送電線一回線事故時最大利用率が152%から72%に減少する。
    4. 需要地点での電圧降下率が3%から1%に減少する。
  2. 定性的効果
     ドゥシャンベ市内の電力品質(電圧・周波数)の改善、電力の安定供給を通じたドゥシャンベ市内の電力品質(電圧・周波数)の改善。電力系統における負荷の分散による停電の減少。1か所当たりの平均運転員数の削減に向けた検討がタジキスタン送電公社内で進む。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  1. タジキスタン政府からの要請書
  2. JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  3. タジキスタン国別評価報告書(2023年度・第三者評価)
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