ODA(政府開発援助)

令和8年3月30日

評価年月日:令和8年2月9日
評価責任者:国別開発協力第一課長 加藤 要太

1 案件概要

供与国名

 フィリピン共和国(Republic of the Philippines

案件名、実施機関、供与限度額、供与条件

案件名 実施機関 供与限度額 金利(注) 償還(うち据置)期間 調達条件
マニラ首都圏地下鉄計画(フェーズ1)(第四期)
Metro Manila Subway Project (Phase 1) (IV)
運輸省(Department of Transportation 2,200億円 0.80% 40(10)年 タイド
  • (注)STEPを適用。
  • (注)コンサルティング・サービス部分も金利0.80%とし、償還期間及び据置期間並びに調達条件も本体部分と同様とする。

目的・事業概要

 本計画は、マニラ首都圏において地下鉄を整備することにより、増加する輸送需要への対応を図り、もってマニラ首都圏の深刻な交通渋滞の緩和と大気汚染及び気候変動緩和に寄与することを目的とする。なお、今次借款は輪切り四期目として2027年4月から2028年12月までの資金需要に対応するもの。

2 資金協力案件の評価

(1)外交的意義

  1. フィリピンはASEAN域内第二の人口(約1億1,556万人)を擁し、東南アジアにおいて中核的な役割を担う国である。また、自由・民主主義・市場経済等の価値観を同じくする近隣国であり、我が国とは第二次大戦を経て長年にわたり、親密な関係を培ってきた。
  2. フィリピンは、我が国の海上交通路上に位置し地政学上重要な国であることに加え、我が国と戦略的利益を共有しており、近年両国は極めて緊密な関係を築いてきている。国際環境が一層複雑化する中、二国間の戦略的パートナーシップを強化し、両国の強じん性を推進するため、経済、安全保障、人的交流、地域・国際問題等といった現代的なニーズに応え、実践的な成功を収め続ける、変革的で前向きなパートナーシップに向けて取り組むことで一致している(2023年2月、日・フィリピン共同声明)。また、2025年4月の日フィリピン首脳会談においても、フィリピンにおけるインフラ整備に官民連携して取り組んでいくことを確認している。
  3. フィリピン国内のインフラ整備に対し日本の資金及び技術力を最大限に活用した支援を行うことは、マルコス政権の「ビルド・ベター・モア」政策を踏まえた、フィリピン国内における質の高い交通インフラ整備に貢献する方針を明示している日本国政府の方針を着実に履行するものであり、両国間の関係を一層強固にし、我が国のシーレーンの安全確保を含め、種々の分野での更なる協力促進の礎となることが期待される。さらに、マニラ首都圏の深刻な交通渋滞、大気汚染や気候変動の緩和に資するものであり、SDGsのゴール9(強靭なインフラの構築)、ゴール11(包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市と人間住居の構築)、ゴール13(気候変動対策)に貢献する。

(2)開発ニーズ/有効性

ア 開発ニーズ
  1. マニラ首都圏は620平方キロメートルと比較的小さな都市地域であるに関わらず、人口が2000年の993万人から2025年には約2.5倍の約2,470万人に達した。人口の過密化にもかかわらず、首都圏内の高架鉄道三路線の総延長は50キロメートルにとどまるなど、大量輸送手段としての軌道系公共交通の整備状況は遅れており、交通渋滞は深刻化している。道路利用者の交通経済費用(車両運行費用と移動時間費用)は、1日当たり49億ペソ(約127億円)と試算されたほか(メトロマニラ総合交通管理計画策定プロジェクト、2022年)、平均移動時間と渋滞レベルに関する民間統計においてマニラ首都圏は東南アジアで第3位の深刻さとされている(TomTom Traffic Index、2024年)。こうした交通渋滞は、円滑な物流や移動のボトルネックとなり、フィリピンの国際競争力を低下させる要因となっている。
  2. かかる状況に対して、JICAが策定を支援しフィリピン政府が承認した「マニラ首都圏の持続的発展に向けた運輸交通ロードマップ」(2014年)では、マニラ首都圏中心部の人口過密化解消と交通渋滞緩和のため、マニラ首都圏の南北軸となる大規模公共交通の整備を通じて、首都圏中心部と郊外とを結ぶ公共交通網を強化し、同南北軸に沿った計画的な市街地の拡大と公共交通機関へのシフトを促すことが提案されている。これにより、投資の増加や産業の拡大による経済成長の加速、大気汚染や騒音等の健康被害の低減、通勤時間等の短縮等による人々の生活の質向上が期待できる。
  3. フィリピンの中期開発計画である「フィリピン開発計画(2023~2028年)」では、「インフラ網の拡大・質的向上」が重要課題とされ、「シームレスで包摂性のある連結性の実現」が交通インフラ分野の戦略の一つとして掲げられている。「マニラ首都圏地下鉄計画(フェーズ1)」(以下、「本計画」という。)は、マニラ首都圏において増加する輸送需要への対応を図り、深刻な交通渋滞緩和へ寄与するもので、現政権の掲げるインフラ整備計画「ビルド・ベター・モア」の旗艦事業の一つに位置付けられている。
イ 有効性
  1. 定量的評価
     本計画の実施により、フィリピン首都圏の運輸・交通網の整備が進展することが期待される。現計画の最北端駅から最南端駅(イーストバレンズエラ駅からNAIAターミナル3駅)までの所要時間は、現在、自動車では約2時間であるが、本計画完成2年後の2033年には、本地下鉄により約41分に短縮される見込みである。
  2. 定性的評価
     地下鉄沿線における公共交通指向型(TOD)開発の促進、交通渋滞の緩和、大気汚染及び気候変動の緩和

(3)我が国の基本政策との関係等

 我が国は、対フィリピン国別開発協力方針(2023年9月)において「持続的経済成長のための基盤の強化」を重点分野として、大首都圏及び地方都市を中心とした交通ネットワークを始めとした質の高いインフラの整備及び運営・維持管理等に対する協力を実施するとしており、本計画は当該方針に合致するものである。

3 環境社会配慮、外部要因リスク等留意すべき点

 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(以下、「JICAガイドライン」という。)」(2010年4月制定)に掲げる鉄道セクター及び影響を及ぼしやすい特性(大規模非自発的住民移転)に該当するため、カテゴリAに分類される。
 本計画に係る環境適合証明書(Environmental Compliance Certificate: ECC)は、2017年10月に取得済み。また、環境影響評価報告書(EIS)の修正を行っており、2019年12月に修正版ECCを取得済み。
 工事中は大気質、水質、廃棄物、土壌汚染、騒音・振動の影響が想定されるが、散水、シルトスクリーン、排水路、腐敗槽の設置、重金属濃度の定期的な測定や再利用、燃料やオイルの適切な保管、シールド工法の採用等の緩和策が取られる。供用時の振動について、地表面の振動レベルは東京都夜間規制基準を下回る見込み。
 本計画対象地域は、国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当せず、自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。
 本計画全体で約1,037千平方メートル(面積ベース)/約2,071件(ロットベース)の用地取得を伴い、234世帯の非自発的住民移転が発生。住民移転及び用地取得はフィリピン国内手続き及びJICAガイドラインを満たす住民移転計画(RAP)に沿って手続きが進められており、2025年10月末までに、約831千平方メートル(面積ベース)/約1,332件(ロットベース)の用地取得及び全234世帯の住民移転が完了している。
 環境管理計画及び環境モニタリング計画に基づき、工事中は実施機関(運輸省)の責任の下、コントラクターが事業サイトの大気質、水質、廃棄物、騒音・振動等のモニタリングを行う。供用時は運輸省の監督の下、運営維持管理主体が鉄道からの騒音・振動等のモニタリングを行う。用地取得、住民移転の実施状況及び生計回復状況は運輸省がモニタリングを行う。

4 事前評価作成に用いた資料、有識者の知見等

 要請書、フィリピン国別評価報告書(2019年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料等。

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