ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和8年3月3日
評価責任者:国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子
1 案件概要
供与国名
インド
案件名、実施機関、供与限度額、供与条件
| 案件名 | 実施機関 | 供与限度額 | 金利(注) | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| ムンバイメトロ11号線建設計画(第一期) (Mumbai Metro Line 11 Project (I)) |
ムンバイ都市鉄道公社(Mumbai Metro Rail Corporation Limited) | 924.00億円 | TORF+80bp | 30(10)年 | アンタイド |
- (注)一般条件(変動・基準)を適用。
- (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.8%とし、償還期間及び据置期間並びに調達条件は本体部分と同様とする。
目的・事業概要
マハラシュトラ州の州都ムンバイ都市圏において、大量高速輸送システムを建設することにより、増加する輸送需要への対応を図り、もって交通渋滞の緩和と交通公害減少を通じた地域経済の発展及び都市環境の改善ひいては気候変動の緩和等に寄与することを目的とする。
2 実施意義/資金協力案件の評価
(1)外交的意義
- インドは基本的価値を共有する戦略的に重要なパートナーであり、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現のため、今後とも日印関係を更に発展させていくことが重要である。2025年8月のモディ首相訪日時には、2014年に日印関係を「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」へ格上げ後10年間の日印関係を総括した上で、基本的価値を共有する両国が互いの強みを活かし合い、相互補完的な関係を構築していくという今後10年の協力の方向性を「今後10年に向けた日印共同ビジョン」において発表するなど、我が国にとってのインドの重要性は着実に高まっている。
- インドは国全体の経済規模において今後日本を上回ると予測されている一方、世界の貧困人口の約2割を抱えるなど、引き続き支援を必要としている状況にある。同国に対する開発協力は上記の「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の重要な構成要素であるところ、ODAを通じて、インドの経済社会開発を支援して同国の安定的な成長を後押しすることは、日印関係強化に貢献するものであり、外交的意義が大きい。
- 本計画はムンバイ都市圏において、大量高速輸送システムを建設することにより、増加する輸送需要への対応を図るものであり、インドの開発課題・開発政策、並びに我が国及びJICAの協力方針・分析と合致する。またSDGsのゴール8「包括的、包摂的で持続可能な経済成長と、万人の生産的な雇用と働きがいのある仕事の促進」、ゴール9「強靭なインフラの構築、包摂的で持続可能な工業化の促進とイノベーションの育成」、ゴール11「包括的、安全、強靭で、持続可能な都市と人間住居の構築」、及びゴール13「気候変動とその影響への緊急の対処」に貢献すると考えられることから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
(2)開発ニーズ/有効性
ムンバイ都市圏はインドの金融・経済の中心地として発展を遂げてきた世界有数の大都市圏であり、日本企業の進出もインドで最も活発となっている。自動車登録数の増加が著しく、交通渋滞が深刻化していることから、マハラシュトラ州がムンバイ都市圏における道路交通事情の改善や大気汚染の緩和等を目的として策定した「ムンバイメトロマスタープラン」に沿って都市鉄道整備が進められている。
本計画により建設予定のムンバイメトロ11号線は市内中心部からムンバイ南端を結ぶものであるが、この建設予定地の付近には円借款により建設された海上道路や再開発が予定されている人口密集地帯があり、交通渋滞の緩和や経済成長の促進に資する重点事業として位置付けられている。
- 定量的評価
指標名 基準値
(2026年実績値)目標値(2034年)
【事業完成2年後】車両稼働率(%/年)(注) - 89 車両キロ(千キロメートル/日) - 31.50 女性専用車両 車両キロ(千キロメートル/日) - 5.25 運行数(本/日・一方向) - 158 乗客輸送量(百万人・キロメートル/日) - 5.04 運賃収入(百万ルピー/日) - 15.1 - (注)(調達車両の年間延べ稼働日数)/調達車両数×(営業日数―検査による平均不稼働日数)×100%にて算出
- 定性的評価
ムンバイ都市圏における自動車公害の緩和、交通渋滞の緩和、気候変動の緩和、移動の定時性確保による利便性の向上、ムンバイ都市圏の経済発展、女性・障がい者の社会進出促進。
(3)我が国の基本政策との関係等
我が国は、対インド国別開発協力方針(2023年11月)において、「多層的な連結性の強化」を重点分野に位置づけており、その具体的な取組例として、インド国内の主要都市・経済圏内及び地域間の連結性の強化を図るべく、鉄道、道路、電力等の分野について、輸送ハブ及び流通網となる運輸や電力インフラ等の整備を環境面での影響にも配慮した形で支援するとしていることから、当該方針に合致するものである。
3 環境社会配慮、外部要因リスク等留意すべき点
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月公布)に掲げる鉄道セクター及び影響を及ぼしやすい特性(大規模非自発的住民移転)に該当するため、カテゴリAに該当する。
692世帯2,362人の非自発的住民移転及び102世帯の経済的移転を伴うが、被影響住民から事業に係る特段の反対意見は出ておらず、JICAガイドラインに沿った形で2027年9月に用地取得・住民移転の手続きを完了する予定。
4 事前評価作成に用いた資料・有識者の知見等
要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料等。

