ODA(政府開発援助)

令和8年3月23日

評価年月日:令和7年10月17日
評価責任者:国別開発協力第一課長 加藤 要太

1 案件概要

(1)供与国名

 ベトナム社会主義共和国(以下、「ベトナム」という。)

(2)案件名

 北部山岳・丘陵地帯における地域コミュニティの生産支援のための気候変動適応インフラ整備計画

(3)目的・事業内容

 本計画は、貧困層の多い北部山岳地域の5省を対象に、小規模基礎インフラを整備することにより、アクセス改善、農業生産性向上及び衛生的な給水能力向上を図り、もって同地域の生活環境の改善、格差是正及び気候変動へのレジリエンス強化に寄与するもの。

  1. 主要事業内容
    1. 土木工事
       小規模基礎インフラ整備(道路、灌漑、給水)の実施
    2. コンサルティング・サービス
  2. 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    176.66億円 2.30% 30(10)年 一般アンタイド
    (注)コンサルティング・サービス費用も本体と同様。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  1. 環境影響評価(EIA):本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICA環境ガイドライン」という。)に掲げる道路・農業セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに分類される。なお、各サブプロジェクトについてカテゴリ分類を行い、該当するカテゴリに必要な対応策がとられることとなっている。また、サブプロジェクトにカテゴリA案件は含まないことを実施機関と合意済みであり、実施決定前に環境影響評価報告書の要否を実施機関が確認し、同国の国内法上作成が義務付けられる場合は、サブプロジェクト実施決定前に環境許認可を取得する。
  2. 各サブプロジェクトの実施決定前に、実施機関が、工事中は大気質、水質、騒音等について、散水やフィルターフェンスの設置及び作業時間の制限等の対策を取る等の環境管理計画を策定し、同国国内の排出基準及び環境基準を遵守する。また、実施決定前に同国国内手続き及びJICA環境ガイドラインに沿って住民移転計画を作成し、ステークホルダー協議等を通じて、社会的合意を予め確認の上で実施する。
  3. 住民移転計画については、各サブプロジェクトの実施決定前に同国国内手続き及びJICA環境ガイドラインに沿って作成し、ステークホルダー協議等を通じて、社会的合意を予め確認の上で実施する。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  1. 開発ニーズ
     ベトナムは、1986年のドイモイ(刷新)政策導入以降、高い経済成長が続き、1998年から2022年の間で、多次元貧困指数に基づく貧困率は37.4%から3.4%に低下した。その一方で、都市部と農村部の経済格差は依然として存在し、都市部の貧困率は1.2%であるのに対し、農村部、特に北部山岳地域は最も高い12.8%となっている。さらに、本計画の対象地域である5省(トゥエンクアン省、タイグエン省、ランソン省、カオバン省、バッカン省)の貧困率は13.3%と同国の中でも特に貧困率が高い。
     この要因として、事業対象地域が遠隔地かつ山岳地域にあり、道路、灌漑施設等の基礎インフラの不足・老朽化により社会サービスへのアクセスが制限され、農業生産活動が制約されると同時に、気候変動による自然災害の影響を受けやすく、同国の経済成長からの裨益が限定的であったことが考えられる。このため、同地域におけるインフラ整備による市場や公共サービスへのアクセス改善、並びに農業生産性の向上等による生活環境の改善を行うことが喫緊の課題となっている。
  2. 我が国の基本政策との関係
     上記2(1)アのとおり、同国は1986年以降、市場経済化を進め、積極的な国際経済への統合を掲げており、2000年代には平均7%を超える経済成長を達成し、メコン地域の発展のけん引役として同国の重要性は高まっている。一方で、急速な成長に伴い、インフラ整備の不足、産業人材の不足等、開発の制約要因が顕在化してきており、これらの課題の解決を我が国が積極的に支援することは、二国間関係の更なる強化の観点から重要である。
     また同国は、1995年のASEAN加盟後、ASEAN内における相対的な地位を高めつつあり、同国との関係の緊密化は、我が国の対ASEAN外交にとっても極めて重要である。ASEANの中の後発加盟国である同国の生計向上に資する支援は、ASEANにとっても重要な課題となっている域内の格差是正にも資するものである。
     我が国の対ベトナム社会主義共和国国別開発協力方針(2017年12月)では重点分野として、「脆弱性への対応」を掲げ、貧困削減、格差是正、気候変動・災害・環境破壊等への対応を挙げている。
     さらに、本計画は同国の基礎インフラ整備を通じて、アクセス改善等の生活環境の改善、農業生産性向上、格差是正及び気候変動適応に資するものであり、SDGsゴール1(貧困削減)、2(持続可能な農業)、3(健康と福祉)、10(格差是正)、13(気候変動対策)に貢献すると考えられることから、事業の実施を支援する必要性は高い。

(2)効率性

 我が国は、ベトナムにおいて、緊急性の高い地方道路、電力、上水整備を対象とした「リハビリテーション借款(I)、(II)」、及び「地方開発・生活環境改善計画(I)、(II)、(III)」を通じて地方開発を支援してきた。また「貧困地域小規模インフラ整備計画(I)、(II)、(III)」を通じて、より貧困地域に焦点を当てたインフラ整備支援を実施してきた。本計画は、貧困層の多い北部山岳地域の5省を対象に、小規模基礎インフラ(道路、灌漑、給水)を整備することにより、生活環境の改善や農業生産性の向上を図り、もって当該地域の社会経済発展と格差是正に寄与し、貧困対策に資するものである。また、本計画のサブプロジェクトの選定は設定された選定基準と共に、地域住民の意見を十分に取り入れた上で決定するものであり、参加型開発に資する。さらに本計画を実施することによって、農業給水の安定化と効率化、貯水池等の改修による水災害防止、道路整備による通行・移動時間の改善による温室効果ガス削減、並びに雨季に冠水しやすいと予想される省道・郡道の整備を通じ、気候変動への緩和策及び適応が期待される。

(3)有効性

 本計画によって、事業完成2年後(2031年)には道路の新設や舗装・改修面、年平均交通量、事業実施地における灌漑面積及び作付面積、米等の主要生産物の収量及び作付け率、給水人口及び給水容量等の向上に寄与することが期待される。なお、定量的効果を把握するための各指標に係る基準値及び目標値については、サブプロジェクトが確定した際に設定する予定。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

  1. ベトナム政府からの要請書、ベトナム国別評価報告書(第三者評価・2015年度)、JICA環境ガイドライン、その他JICAから提出された資料。
  2. 本計画に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース、事業事前評価表を参照。
  3. なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。
ODA(政府開発援助)
ODAとは?
広報・イベント
国別・地域別の取組
SDGs・分野別の取組
ODAの政策を知りたい
ODA関連資料
皆様の御意見
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る