ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和8年3月6日
評価年月日:令和7年7月14日
評価責任者:国別開発協力第三課長 東 邦彦
1 案件名
1-1 供与国名
マダガスカル共和国(以下、「マダガスカル」という。)
1-2 案件名
トアマシナ市における電力アクセス改善計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、トアマシナ都市圏において、老朽化により稼働に支障が生じている変電所2か所(タマタベ1及びタマタベ2)の改善及び関連する配電線の整備を行うことにより、安定的な電力供給の実現を図り、もって同地域のインフラ整備を通じたマダガスカルにおける経済社会開発に寄与するもの。
供与限度額は、25.36億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、環境や社会への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- マダガスカル(一人当たり国民総所得(GNI)530ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
- マダガスカルは、広大で降雨に恵まれた国土を有し、鉱物・石油資源や水産資源にも恵まれており、一層の開発が期待されている。また、地政学的にアジアとアフリカとの間の主要な海洋航路上にあり、戦略的要衝に位置することから、我が国が提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現する上で重要な役割を担っている。同国は、レアメタルを含む鉱物資源が豊富であり、特にニッケルについては、日系企業が大規模な精錬事業を行っており、同国は我が国にとってニッケルの最大の輸入相手国となっている。
- 内陸に位置する首都アンタナナリボ(人口約300万人)と、同国の国際貨物の90%を取り扱う港を擁する第2の都市トアマシナ(人口約50万人)は国道二号線で結ばれ、両都市間のアンタナナリボ・トアマシナ経済都市軸(TaTom)は同国の経済を牽引している。トアマシナは、今後、産業・観光都市としての成長が期待され、2033年には人口が現在の約1.5倍の約76万人に増加することが予想されているが、市内の電化率については、現在、約50%に留まっており、関連設備の改修・強化が喫緊の課題となっている。市内への電力供給は、市西部のボロベ1水力発電所及び水・電力公社(JIRAMA)等が市内に保有するディーゼル発電設備から、タマタベ1変電所又はその上流に位置するタマタベ2変電所のいずれかを介して行われているが、両変電所の老朽化により機器トラブルが頻発し、停電が日常化している。加えて、両変電所の送電可能容量不足のため、新規接続申請にも対応できていない。
- マダガスカル政府は施策方針(la Politique Générale de l'Etat:PGE)における重点分野として、平和と安全保障、エネルギーと水、汚職対策(ガバナンス等)、教育、保健、工業化、食料の自給自足、居住促進と近代化等を挙げているが、本計画はトアマシナ都市圏において安全かつ安定的な電力供給の実現を図るものであり、同国の施策方針に合致し、同国の開発課題の解決に資するものである。
- 我が国の対マダガスカル国別開発協力方針(2021年5月)では、重点分野として「経済インフラ開発」を掲げ、経済成長に深刻な影響を与えている低い電化率を解消するため、電力分野への支援を実施するとしている。また本計画は、我が国が円借款で整備を進めるトアマシナ港の安定した運営に貢献し、近隣工業団地等への安定的な電力供給が見込まれることから、経済強靱化や産業基盤整備の観点でFOIPの理念に合致する。また、トアマシナ港は、上記(2)のとおり日系企業が大規模な精錬事業を行っているニッケルの積出し・輸出を行う港となっているため、同港の安定的な操業を促進することは、我が国の安定的な鉱物資源確保、ひいては経済安全保障にも寄与する。さらに、SDGsゴール7「エネルギー」及びゴール9「インフラ、産業化、イノベーション」の達成にも寄与することからも、本計画を実施する必要性は高い。
2-2 効率性
マダガスカル政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。具体的には、先方から変電所の新設を要請されていたタマタベ1について、系統解析を実施し、トアマシナ都市圏への電力供給が十分可能となることを確認した上で、開閉所に代えることとし、これにより変圧器や35kv配電盤をスコープカットした。また、調達機材については第三国製を含め、適切な内容でできるだけ安価となるよう検討した。以上により、約4.5億円の事業費を抑制した。
2-3 有効性
本計画の実施により、2023年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2030年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。
- 定量的効果
- 配電用変圧器設備容量が22メガボルトアンペアから70メガボルトアンペアに増加する(318%増)。
- 変電所停電件数が542回から55回に減少する(90%減)。
- トアマシナ都市圏の電化率が54%から64%に増加する(10%増)。
- タマタベ1-2間の送電容量が18メガボルトアンペアから45メガボルトアンペアに増加する(150%増)。
- 定性的効果
- トアマシナ都市圏における電力供給の安定化、同都市圏における保健・医療等の行政サービスの改善、経済活動の活性及び住民の生活環境改善が期待できる。
- トアマシナ市の産業都市としての投資環境の向上並びに観光都市としての利便性及び魅力の向上が期待できる。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- マダガスカル政府からの要請書
- JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)

