ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和8年3月5日
評価年月日:令和7年11月7日
評価責任者:国別開発協力第三課長 氏名 東 邦彦
1 案件名
1-1 供与国名
モザンビーク共和国(以下、「モザンビーク」という。)
1-2 案件名
ナカラ市における砂防・排水施設建設計画
1-3 目的・事業内容
ナカラ市内2地区(モコニ流域、トリアングロ流域)において、砂防堰堤、床固、貯砂池、排水路等を建設することにより、市街地、幹線道路、港等の経済インフラに対する土砂災害及び水害の低減を図り、もって持続可能な経済開発に寄与する。
供与限度額は、33.63億円
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- モザンビーク(一人当たり国民総所得(GNI)550ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- モザンビークは、サイクロンが高頻度で上陸する地域にあり、自然災害の中で洪水が最も発生頻度が多い。2000年から2018年の間での洪水による死者は1,403人にのぼり、これは全災害による死者の87%を占める(国際災害データベース(EM-DAT)、2023年)。また、インド洋沿岸部に位置するナンプラ州ナカラ市は特にサイクロン被害が多く、時間あたり降雨量の増加も顕著である。さらに、同市は、粘性の低い風化砂質土からなる斜面に市街地が形成されている一方、2015年以降、斜面への居住者が増加し、斜面の保水力が低下傾向にある。こうした中で、砂防及び排水設備の整備が進まないことに起因し、一定度以上の降雨時にモコニ流域とトリアングロ流域からの土砂がナカラ市街地とナカラ港に流出している。また、両流域の河川側岸の更なる侵食により、土砂流出による被害が増大している。ナカラ市住民の安全な居住環境及び経済活動を維持するために、土砂流出の抑制や防止のための砂防堰堤、貯砂池及び排水施設の建設など土砂災害対策の強化が喫緊の課題となっている。
- モザンビーク政府は災害リスク削減の必要性を認識し、2012年に「気候変動適応及び緩和国家戦略(2013-2025)」、2017年に「災害リスク削減マスタープラン(2017-2030)」を策定している。また、「政府5カ年計画(2025-2029)」においても災害対策を優先事項とし、災害による人的・経済的損害の削減に向けてインフラの強靭化に取り組んできている。かかる状況を踏まえ、砂防堰堤、床固、貯砂池、排水路等を建設する本事業は、これら戦略や計画で定められた対策を具現化する取組みとして優先度の高い事業に位置付けられている。
- ナカラ市において、土壌浸食の被害を軽減するためのインフラを強化する本件は、こうしたモザンビーク政府の方針に沿うものである。また、我が国は対モザンビーク国別開発協力方針(2020年9月)において「天然資源・自然環境の持続可能な利用」を重点分野とし、自然災害に脆弱な同国への防災・復興支援を優先事項としており、本件はこうした我が国の方針にも沿うものである。
- 本件は、本年8月のTICAD 9にて我が国が立ち上げを表明した広域オファー型協力「ナカラ回廊開発によるグローバル・サプライチェーンの強靭化」の一環として実施するものである。ナカラ市の防災能力の強化は、ナカラ港の安定的な利活用に資するものであり、本件はこのオファー型協力の目的の観点からも重要である。また、インド洋に面するナカラ港は自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現においても重要な要衝であり、本件は外交的観点からもその意義は大きい。SDGsゴール11「包摂的で安全かつ強靭で持続可能な都市及び人間居住を実現する」及びゴール13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献する。
2-2 効率性
ナカラ市に対しては、我が国からの有償資金協力「ナカラ港開発事業(I)(II)」(2013年、2015年交換公文署名)を通じて、同港の施設改修(泊地浚渫、アクセス道路の建設、ヤードの舗装など)、荷役効率改善に資する機材調達を支援したが、特に、2015年以降は土砂災害の頻度が増加し土砂がナカラ港に流入することにより港湾機能が停止する事態も発生しており、対策が必要となっている。本事業は、ナカラ市の基幹的な経済インフラであるナカラ港の運用に、「ナカラ港開発事業」と相互補完的に寄与するものである。
2-3 有効性
本計画の実施により、2024年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2031年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。
- 定量的効果
- 計画降雨時(20年確率)の市街地における流出土砂の堆積範囲がモコニ流域で12,500平方メートルから0平方メートルに、トリアングロ流域で9,300平方メートルから0平方メートルになる(注:ウォッシュロード(浮遊砂)は除く)。
- 計画降雨時(10年確率)のモコニ流域の排水路からの溢水量が0.6立方メートル/秒から0立方メートル/秒になる。
- 道路再開に向けた土砂撤去にかかる緊急活動日数が年間3日から0日になる。
- 流入土砂によるナカラ港の機能中断日数が年間2日から0.2日になる。
- 定性的効果:モコニ流域、トリアングロ流域における土砂災害における被害軽減、ナカラ市民の生活環境の改善、同市及びナカラ回廊地域の経済活性化。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- モザンビーク政府からの要請書
- JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)

