ODA(政府開発援助)

令和8年2月4日

評価年月日:令和7年12月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 加藤 要太

1 案件概要

供与国名

 フィリピン共和国(Republic of the Philippines

案件名、実施機関、供与限度額、供与条件

案件名 実施機関 供与限度額 金利(注) 償還(うち据置)期間 調達条件
首都圏鉄道三号線改修計画(第三期)
Metro Rail Transit Line 3 Rehabilitation Project (III)
運輸省(Department of Transportation:DOTr) 216.3483億円 0.80% 40(10)年 タイド
  • (注)STEPを適用。
  • (注)コンサルティング・サービス部分も金利0.80%とし、償還期間及び据置期間並びに調達条件も本体部分と同様とする。

目的・事業概要

 本計画は、運行中断等のトラブルが相次ぐマニラ首都圏鉄道三号線(MRT3号線)を改修することにより、鉄道の安全性、快適性を向上させ、同線の利用促進を図り、もってマニラ首都圏の深刻な交通渋滞の緩和に資するとともに、大気汚染や気候変動の緩和に寄与するもの。我が国は本件事業に対し、2018年11月に381.01億円、2023年5月に173.999億円の円借款を供与しており、第三期となる今次借款は、同線の運営・維持管理の民間委託の開始が延期されたことにより、同線運行状況を維持するための改修等に必要な経費の追加需要に対応するもの。

2 実施意義/資金協力案件の評価

(1)外交的意義

  1. フィリピンはASEAN域内第二の人口(約1億1,556万人)を擁し、東南アジアにおいて中核的な役割を担う国である。また、自由・民主主義・市場経済等の価値観を同じくする近隣国であり、我が国とは第二次大戦を経て長年にわたり、親密な関係を培ってきた。
  2. フィリピンは、我が国の海上交通路上に位置し地政学上重要な国であることに加え、我が国と戦略的利益を共有することから、近年両国は極めて緊密な関係を築いてきている。両国は、国際環境が一層複雑化する中、二国間の戦略的パートナーシップを強化し、両国の強じん性を推進するため、経済、安全保障、人的交流、地域・国際問題等といった現代的なニーズに応え、実践的な成功を収め続ける、変革的で前向きなパートナーシップに向けて取り組むことで一致している(2023年2月9日、日・フィリピン共同声明)。
  3. 日本の資金及び技術力を最大限に活用しマニラ首都圏における旗艦インフラであるMRT3号線の改修等を支援することは、フィリピン国内における質の高い交通インフラ整備に貢献する方針を明示している日本国政府の方針を着実に履行するものであり、両国間の関係を一層強固にし、我が国のシーレーンの安全確保を含め、種々の分野での更なる協力促進の礎となることが期待される。さらに、マニラ首都圏の深刻な交通渋滞、大気汚染や気候変動の緩和に資するものであり、SDGsのゴール9(強靭なインフラの構築)、ゴール11(包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市と人間住居の構築)、ゴール13(気候変動対策)に貢献する。

(2)開発ニーズ/有効性

ア 開発ニーズ
  1. マニラ首都圏内の高架鉄道三路線のうちの一つであるMRT3号線(全長約17キロメートル、総駅数14駅)は、市内で最も交通量が多い道路の一つである環状4号線(EDSA通り)上を通る幹線路線である。2000年の開業後12年間は、日本企業により維持管理業務が実施され安定した運行がなされていたが、他国企業が維持管理を担った2012年以降は予算不足等もあり、適切な維持管理業務が実施されず、線路や車両が劣化し、運行トラブルが頻発する事態となっていた。
  2. このため、フィリピン政府からの要望を受け、我が国は2018年11月、日本の技術を活用してMRT3号線を質の高いインフラとし、鉄道の安全性及び快適性を向上させ、同線の利用促進を図るべく円借款を供与した。2019年5月から日本企業が改修業務を開始し、安定した運行がなされている。
  3. こうした中、フィリピン政府は、「フィリピン開発計画(2023-2028年)」において、インフラ網の拡大・質的向上を重要課題の一つとして掲げ、優先度の高い戦略的インフラ整備を推進するインフラ旗艦事業(Infrastructure Flagship Projects)にMRT3号線の運営・維持管理事業を含めるなど、本計画はフィリピン政府の最重要事業の一つとして位置づけられている。また、2022年6月に就任したマルコス政権の要人は、インフラ整備に係る我が国による協力に対する期待を伝えてきており、マルコス大統領自ら、同年7月の一般教書演説において、本計画に言及しつつインフラ整備を継続・拡大する方針を示した。
  4. また、近年同線への需要は高まっており、2025年3月には一日の運行時間を1時間延長したことに加え、運輸省は、同線沿いに走るEDSA道路の改修により交通量が制限されることを受け、運行車両数増加(現在の18編成/時から19乃至は20編成/時への増加)も検討するなど、マニラ首都圏における基幹インフラとしての能力維持・増強が強く求められている状況である。
イ 有効性
  1. 定量的評価
    • 乗客輸送量が812,882,534人・キロから1,131,005,567.84人・キロとなる。
    • 年平均一日あたり列車運行数が142本/日から237本/日となる。
  2. 定性的評価
     マニラ首都圏の深刻な交通渋滞の緩和、大気汚染及び気候変動の緩和

(3)我が国の基本政策との関係等

 「対フィリピン国別開発協力方針」(2023年9月)では、「持続的経済成長のための基盤の強化」を重点分野として、大首都圏及び地方都市を中心とした交通ネットワークを始めとした質の高いインフラの整備及び運営・維持管理等に対する協力を実施するとしており、我が国が鉄道セクターにおいて実施してきた円借款、技術協力等を踏まえ実施されるものであり、我が国の基本政策に合致するものである。

3 環境社会配慮、外部要因リスク等留意すべき点

 環境影響評価(EIA):本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(以下「JICAガイドライン」という。)」(2010年4月制定)に掲げる鉄道セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。
 既存鉄道は1997年の建設時に、環境天然資源省(DENR)からEIA法の適用を免除するCertificate of Exemptionが発行されており、EIA及び初期環境調査(IEE)の作成が免除されている。また、今次事業によるコモンステーションへの延伸部分については、2008年に環境許認可(ECC)が発行済み。
 工事中は、車両の洗浄過程等に汚水が発生するが、デポの排水処理施設を改修しラグナ湖開発庁から排出許可を取得した上で、排水基準を遵守して排水される。また、ポリ塩化ビフェニル(PCB)や鉛等の有害廃棄物を含め、産業廃棄物が発生するが、多くは金属等再利用が可能なもので、それらは認定された業者に処分を依頼し、再利用を図ると共に、有害廃棄物は国内法規制に従い、認定された業者に処分を委託する。さらに、車両基地内における労働環境の維持のため、粉塵や臭気を排出する作業を実施する際には、仮設のダクトを設けつつ、供与時は、労働環境の改善のために、排出口を備えた換気システムを設置する予定。なお、工事中は実施機関(運輸省)の責任の下、コントラクターが水質、廃棄物、労働環境、事故のモニタリングを行う。供与時は運輸省の責任の下、O&M主体が水質、廃棄物、労働環境(排出口を備えた換気システムの設置を含む)のモニタリングを行う。
 本計画の対象地域は、国立公園等の影響を受けやすい地域またはその周辺に該当せず、自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。また本計画は、既存鉄道の改修であり、既存鉄道の敷地内で実施されるため、用地取得及び住民移転は発生しない。

4 事前評価作成に用いた資料、有識者の知見等

 要請書、フィリピン国別評価報告書(2019年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料等。

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