ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和7年12月23日
評価年月日:令和7年11月5日
評価責任者:国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子
1 案件名
1-1 供与国名
ベリーズ
1-2 案件名
ベリーズ・シティ旋回橋架け替え計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、ベリーズ・シティにおいて、南北を隔てるホールオーバー川に架かる河口部に位置する現旋回橋を十分な幅員及び強度が確保されるものに架け替えることにより、大型車の通行を可能とし市内交通の円滑化を図り、もってベリーズ国内最大都市のベリーズ・シティ及び周辺地域の強靭な生活基盤構築に寄与するもの。
供与限度額は21.71億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- ベリーズ(一人当たり国民総所得(GNI)7,190ドル(世界銀行、2023))は、OECD開発援助委員会(DAC)援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
- ベリーズは、ハリケーン、洪水等の災害による大きな影響を受けやすい国であり、気候変動リスクの観点から世界で167か国中8番目に脆弱な国として位置づけられている(世銀、2022年)。直近では2022年11月のハリケーン「リサ」により総額約40百万米ドル(2022年GDPの約15%)の被害を受け、広く停電・断水の被害が見られた。また、同国ではカリブ海に面した地理的条件を背景に物流や観光において多くの船舶が活用されているが、自然災害に対する脆弱性を軽減し、船舶による日常的な交通・物流ルートを確保することは喫緊の課題である。
- ベリーズ・シティ中心部の旋回橋は、当初は上部工が旋回することにより船舶の遡上ができたものの、2005年頃より老朽化により橋の開閉ができていない。そのため、一部の小型船舶の通行が困難な状況となっている。加えて、同橋梁は鋼桁の腐食や脆弱化が著しく、橋上の通行車輛には重量制限が課せられており、現在は2.2トン以上の車両通行が禁止され、大型車は迂回を余儀なくされている。この大型車の迂回により幅員の狭い生活道路が大型車で混雑し、また迂回に際して上流側に位置する別の橋を通行することになり結果10分程度の時間を要している。さらに旋回橋が建設された1923年時点では、旋回橋は馬車での利用を想定していたこともあり車両幅員が2.5メートル及び歩道幅員が1.5メートルと狭く対面通行が困難となっている。このように、船舶、車両及び人の移動に制限が発生していることや災害時の崩落、浸水危険性からも早急な架け替えが必要である。
- ベリーズを含むカリブ共同体(カリコム)加盟諸国は、民主主義及び法の支配等の共通の価値観を日本と共有している。ベリーズは、カリコム及び中米統合機構(SICA)の両地域機関に属する唯一の国であり、カリコム及び中米諸国の橋渡し役として、我が国が対中米・カリブ外交を展開するに際し重要な役割を果たしている。
2014年7月の日・カリコム首脳会合以来、日本は対カリコム政策の三本柱のうちの第一の柱として、「小島嶼国特有の脆弱性克服を含む持続的発展に向けた協力」を掲げ、ベリーズを含むカリブ地域での協力を推進している。
本事業で整備される新橋は、公共交通機関の整備を促すとともに、高潮被害等の発災時にも活用される可能性があり、社会強靱性が高まることが期待される。この点、2015年3月の第3回国連防災世界会議において我が国が策定を主導した国際防災指針「仙台防災枠組2015-2030」における優先行動「強靱化にむけた防災への投資」とも合致する。
2025年の日・中米交流年に当たり、同国の市民生活における交通の要衝において我が国がプレゼンスを示すことで、二国間関係の強化に資することが期待されることからも、外交的意義は高い。 - 本計画を実施することは、ベリーズ国内最大都市の強靭な生活基盤構築に寄与することから、我が国の対ベリーズ国別開発協力方針(2022年4月)重点分野「強靭な社会の構築」にて掲げられている気候変動対策も含めた災害に対する脆弱性の克服、及び同事業展開計画における「自然災害等に強靭な社会経済インフラの構築に貢献する」と合致する。また、SDGsのゴール9(産業と技術革新の基盤をつくろう)とゴール11(住み続けられる街づくりを)にも貢献する。
上記を踏まえ、無償資金協力として本計画を実施する意義は高い。
2-2 効率性
JICA技術協力プロジェクト「カリブ災害管理プロジェクトフェーズ2」(2009~2012年)及び個別専門家「カリブ地域防災管理」(2015~2017年)の成果の活用、「カリブ地域総合防災アドバイザー」(2021~2025年)との相乗効果が期待される。
2-3 有効性
本計画の実施により、2024年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2031年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。
- 定量的効果
- 市民が公共交通機関(バス)で市内移動に要する時間が45分から22分に短縮する。
- 橋梁を通行するバスの運行本数が1日0台から164台に増える。
- 一日当たりの自動車の交通量が8,627台から10,760台に増える。
- 小型船舶の一日当たりの橋梁下通行数が238隻から285隻に増える。
- 災害発生時の離島住民の避難に要する時間が20分から14分に短縮する。
- 定性的効果
- 公共交通機関の路線バス、消防車等の緊急車両、大型ダンプトラック等が通行できるようになる(注:大型車両(重量2.2トン以上)の車両通行は現橋梁では禁止)。
- 災害発生時における陸上避難路の代替性が強化される。特に、離島(サンペドロやキーカーカー)住民の避難路として新橋が利用される(その場合、裨益人口(18,185人)はベリーズ・シティ全体(82,184人)の約22%に相当)。
- 傷病者搬送・火災発生・被災地復旧等の緊急時に、円滑な救命・復旧活動が可能になる。
- 交通安全性が強化される。
- 市内の南北交通アクセスの改善により、周辺地域での商業活動が活性化される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- ベリーズ政府からの要請書
- JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)

