ODA(政府開発援助)

令和7年12月23日

評価年月日:令和7年11月17日
評価責任者:国別開発協力第二課 廣瀬 愛子

1 案件名

1-1 供与国名

 キルギス共和国(以下、「キルギス」という。)

1-2 案件名

 カスピ海ルートとの連結性向上のためのビシュケクーオシュ道路ナリン川橋梁架け替え計画

1-3 目的・事業内容

 キルギスの南北を結ぶ国際幹線道路であるビシュケク-オシュ道路のうちジャララバード州に位置するナリン橋を架け替えることにより、物流網のボトルネックの解消を通じた運輸・交通の円滑化と活性化を図り、もってカスピ海ルートをはじめとする国際物流回廊との連結性向上の増進に寄与する。供与限度額は31.90億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本事業は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、橋梁セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  1. キルギス共和国(一人当たり国民総所得(GNI)2,150ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
  2. 同国は、アジアと欧州、ロシアと中東を結ぶ地政学的に重要な地域に位置しており、同国の安定と発展は、地域の安定に寄与する。また、日本と同国は、1991年の同国独立以来、友好的な関係を築いており、同国は国際場裏での日本との協力にも前向きである。我が国は、同国を含む中央アジア諸国の「開かれ、安定し、持続可能な」発展を支えることを「中央アジア+日本」対話・外相会合等で確認してきている。
  3. キルギスは内陸国であり、旅客輸送や貨物輸送の約97%を道路交通に依存している。特にキルギスの北部に位置する首都ビシュケク市と、南部に位置しキルギス第二の都市であるオシュ市を結ぶ主要幹線道路であるビシュケク-オシュ道路(延長672キロメートル)は、国土を縦断し、国民の80%以上(約540万人)が使用する幹線道路である。我が国も円借款「ビシュケク-オシュ道路改修事業(第1期1997年3月融資契約調印、第2期1998年10月融資契約調印)」や無償資金協力「ビシュケク-オシュ道路クガルト川橋梁架け替え計画(2013年7年贈与契約署名)」を通じて整備を支援してきた同道路は、オシュにおいて中央アジアと欧州を繋ぐ国際輸送回廊である。
  4. 同道路は、「カスピ海ルート」にも接続する戦略的な国際幹線道路として、地域連結性や国際物流の強化の面でも極めて重要である。カスピ海ルートは、現下の国際情勢を背景に、ユーラシア大陸の東西を結ぶ物流ルートとして国際的な注目や需要が高まり続けており、キルギスにおいてもこのルートへの接続性向上は、国際競争力の強化と物流ルートの多様化を通じた持続可能な経済成長に資するものである。
  5. 同道路の中でも、キルギス最大の河川であるナリン川を渡河するジャララバード州のナリン橋は最長の橋梁(207.2メートル)であり、さらに同川の上流に数多く設置されている水力発電所へのアクセスにとっても重要な交通の要衝となっている。しかし、同橋梁は1964年に架設されてから60年が経過して老朽化が進んでおり、また、旧ソ連時代の基準に基づき設計されているため、耐荷重の現行設計基準を満たしていない。一方、同橋梁は現在、新たに建設が計画されているカンバル・アタ第一水力発電所(1,860メガワット)を始め、カンバル・アタ第二水力発電所、クルプサイ水力発電所等の大型水力発電所の改修等のための建設資材の運搬に利用されることにより、現在の設計強度を大きく超える荷重の貨物トラックが頻繁に通行することが見込まれ、崩落リスクが高まる可能性が懸念されている。2020年に実施されたキルギスの運輸・通信省の道路維持管理局による橋梁点検の結果でも、コンクリートのひび割れや鉄筋露出が発生するなど本橋梁の損傷は激しく、改修の必要性や緊急性が高いと判断されている。
  6. キルギス政府は「2030年までの国家発展プログラム」において、同国の発展の4つの主要ベクトルの1つに「地域ハブ」を掲げ、国際輸送回廊へのアクセス向上と国内道路網の建設・修復を重点課題としている。また、道路セクターの開発計画「道路産業の発展にかかる主要方針 2023-2030」(The Main Directions of Development of the Road Industry for 2023-2030)においては、国際幹線道路の改修や維持管理、橋梁建設にかかる近代的技術の取得が優先課題として掲げられている。
  7. カスピ海ルートとの連結性向上のためのビシュケクーオシュ道路ナリン川橋梁架け替え計画」(以下、「本事業」という。)は、キルギスの南部と北部の主要都市をつなぎ、国際幹線道路でもあるビシュケク-オシュ道路のジャララバード州に位置しているナリン橋を架け替えることにより、上記円借款や無償資金協力により整備を行ってきた同道路の残るボトルネックの解消、国際貿易や社会・経済の発展の維持、ならびに国際物流回廊であるカスピ海ルートとの接続を通じた中央アジア最奥部の物流ネットワーク強化に資するものであり、上記国家戦略プログラム及び国家プロジェクトである大規模水力発電所建設の文脈においても優先事業として位置づけられている。
  8. また、我が国は、2022年12月、「中央アジア+日本」対話・第9回外相会合において、自由で開かれた中央アジアにおける持続可能な発展を達成するため、「人への投資」と「成長の質」を重視した新しいモデルに沿った協力を確立し発展させることを表明した。今回の協力は、この内、「成長の質」を具体化するもの。SDGsゴール3(すべての人に健康と福祉を)、ゴール8(働きがいも経済成長も)、9(産業と技術革新の基盤をつくろう)及び13(気候変動に具体的な対策を)にも貢献する。

2-2 効率性

 橋台位置を現橋よりも前に出して橋長を短くする設計により、コストを縮減したほか、新橋設置場所を現橋の上流側にすることで、現橋の撤去や仮設橋の設置を伴わない施工計画として、建設費を抑制した。建設資機材および労務について、本事業の品質・制度を満たす資材についてはコスト縮減の観点から可能な限り現地調達として計画を行った。

2-3 有効性

  1. 定量的効果:(2024年実績値)・目標値(2032年)
    1. 橋梁を通行可能な車両の最大重量(トン/車両) 30から80に増加する。
    2. 平均交通量(台/日)降雪期外(3月~10月) 5,480から7,494に増加する。
    3. 旅客数(人/年) 8,210,000から11,240,000に増加する。
    4. 貨物量(トン/年) 3,730,000から5,110,000に増加する。
    5. カスピ海ルートに接続する貨物量(トン/年) 750,000から1,020,000に増加する。
    6. カスピ海ルート全体貨物量に占める割合(%) 約18から(全体貨物量4.1百万トン) 約19(全体貨物量5.5百万トン)に増加する。
  2. 定性的効果
    1. 橋梁及び取付け道路の安全性の向上
    2. 交通安全施設や速度抑制施設を整備する事により、車両が安全に通行可能な状況となり、安全性が向上する。
    3. 車道と歩行者及び家畜の動線を分離することによる歩行者や家畜の安全性の確保
      既存ナリン橋を歩行者や家畜が通行する事により、車両との動線が分離される。また道路部に歩道を整備する事により、歩行者や家畜の安全性が確保される。
    4. 物流の促進と円滑化による経済成長
    5. 橋梁の耐荷重が増加する事で、大型車両が安全に通行可能な状況となり、物流の促進と円滑化により、経済成長が見込まれる。
    6. 橋梁の耐荷重が増加する事で、水力発電所建設事業の特殊な大型機材運搬が可能となり、水力発電所建設事業が促進される。
    7. カスピ海ルートにおいて複数の経路が確保されることにより冗長性が向上する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  1. キルギス政府からの要請書
  2. JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  3. キルギス国別評価報告書(2011年度・第三者評価)
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