ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和7年12月1日
評価責任者:国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子
1 案件概要
供与国名
ウズベキスタン共和国(The Republic of Uzbekistan)
案件名、実施機関、供与限度額、供与条件
| 案件名 | 実施機関 | 供与限度額 | 金利(注) | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| 畜産振興・家畜衛生強化計画 (Livestock Promotion and Animal Health Enhancement Project) |
ウズベキスタン共和国農業省傘下獣医学・畜産発展国家委員会 (The Committee of Veterinary and Livestock Development under the Ministry of Agriculture of the Republic of Uzbekistan) |
213.68億円 | 2.30% | 20(6)年 | アンタイド |
- (注)一般条件(固定・オプション2)を適用。
- (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.80%とし、償還期間及び据置期間並びに調達条件は本体部分と同様とする。
目的・事業概要
本事業は、畜産農家及び畜産関連企業を対象としたツーステップローンの供与、動物疾病診断・食品安全性センターへの機材供与及び畜産農家・関連企業、研究機関、仲介金融機関等に対する能力強化を行うことにより、畜産農家・関連企業の資金アクセスの改善、家畜衛生の強化及びグリーン技術の導入を図り、もって畜産業の振興及び食料安全保障に寄与するもの。
2 実施意義/資金協力案件の評価
(1)外交的意義
- ウズベキスタンを含む中央アジアは、東アジアとコーカサス、欧州を結ぶ回廊として地政学的な要衝である。また、近年、欧米、中国、中東を含む各国がウズベキスタンを含む中央アジア地域との関係強化や、同地域への進出を強める傾向がみられる。
- 我が国は、この地域の安定的な発展が地域のみならず国際の平和と安定にとり重要であるとの認識の下、2004年、中央アジアの域内協力を後押しする枠組みとして中央アジア5か国との間で「中央アジア+日本」対話を他国に先駆けて立ち上げた。それ以降、中央アジアの持続可能な発展の達成に向け、特に、「人への投資」、「成長の質」に重点を置いた新たな発展モデルを推進すべく関係強化を図ってきている。
- 日・ウズベキスタン関係は良好であり、要人往来も活発である。例えば、2025年2月に長島総理大臣補佐官が、同年4~5月に鈴木法務大臣が、同年8月に岩屋外務大臣(当時)がウズベキスタンを訪問したほか、2019年12月にミルジヨーエフ大統領が、2024年3月にはサイードフ外務大臣が、2025年5月にはイスマイーロフ下院議長が、8月には大阪・関西万博にあわせてウメロヴァ大統領府創造経済・観光局長及びクドラートフ投資・産業・貿易大臣が訪日するなど、上記以外にも活発な往来が行われて、経済協力を含む様々な分野で両国の関係が強化されてきている。
- また、2022年、ミルジヨーエフ大統領は「新ウズベキスタン開発戦略2022~2026」を策定し、畜産を含む農業生産の拡大・所得向上・雇用創出・貧困削減等を達成すべき目標に掲げているほか、「畜産開発戦略2021~2030」において食料安全保障の確保を重視している。
- このように、地政学的な要衝に位置し、地域と国際の平和と安定にとって重要な役割を果たす友好国であるウズベキスタン政府の取組を後押しする本支援は高い外交的意義が認められ、両国関係の一層の強化に極めて有効である。さらに、SDGsゴール2(食料安全保障)、13(気候変動)に貢献すると考えられることから、本計画を実施する必要性は高い。
(2)開発ニーズ/有効性
- ウズベキスタンは、畜産品の純輸入国であり、2019年時点の品目別の自給率は、牛肉95%、羊肉95%、鶏肉80%、酪農100%であるが、近年の人口増加に伴い、2035年には食肉52%、酪農59%まで低下すると予測されている(世界銀行、2022年)。これに対処するには、輸入または国内生産量を増大させる必要があるが、牛や羊はロシアから、乳製品や牛肉はベラルーシからの輸入量が大きいところ、昨今のロシアによる穀物輸出規制の状況に鑑み、基本的な食料については食料安全保障の観点から自国で生産することが望ましい。また、畜産は同国GDPの約13%を占める主要産業であり労働者も多いことから、雇用維持の観点からも同産業を支援していくことが肝要である。
- また、生産量増大のためには、設備投資(飼育施設等)、栄養価の高い飼料へのアクセス、改良種の導入、新たな畜産技術の導入(畜産農家や畜産関連企業の生産及び加工技術)等が必要であるが、畜産農家、特に小規模農家は銀行が要求する十分な担保を有さないことから、資金アクセスが極めて限定的である。また、2019年以降、大規模農家の比率が拡大しており、大規模農家への投資はトリクルダウン効果(大企業や富裕層に対する支援政策により経済活動が活性化され、富が低所得層に向かって徐々に流れおち、国民全体の利益となるという効果)による小規模農家の雇用創出も期待されることから、畜産業の産業振興の観点からも大規模農家への支援が求められている。
- さらに、畜産分野は同国の温室効果ガス(GHG)排出量の13.1%を占めることから(世界銀行、2022年)GHG排出対策として、グリーン技術(省エネ技術、堆肥からの再生可能エネルギー生産、効率的水利用など)を導入することが求められているが、畜産農家はこの対策を講じるための資金を有していない。
- こうした状況を踏まえ、仲介金融機関経由のツーステップローンを実施することにより、畜産農家の資金アクセスを高めることは、同国の食料安全保障の強化や畜産農家の雇用維持・創出につながることから、高い開発効果が見込まれる。
(ア)定量的評価(計画実施前の基準値(2025年実績値)と2033年(事業完成2年後)の目標値の比較)
- サブローン融資件数(件)
0から320 - 動物疾病診断・食品安全性センターにおける年間検査数(ELISA法、PCR法)(回)
0から20,000 - 新規に導入した検査機器の使い方の指導を受けた検査ラボ職員数(人)
0から110 - 上記のうち女性職員数(人)
0から50 - エンドユーザーのうち肉牛農家の飼育する肉牛1頭あたり平均体重の増加率(%)
サブローン供与時に確認から4 - エンドユーザーによる新規雇用者数(人)
サブローン供与時に確認から1,000 - 上記のうち女性雇用者数(人)
サブローン供与時に確認から320
(イ)定性的評価
仲介金融機関の畜産セクター向け融資能力の向上、食品安全の改善、畜産農家の生計向上、畜産物の食料安全保障の改善
(3)我が国の基本政策との関係等
我が国の対ウズベキスタン共和国国別開発協力方針(2022年)では「持続可能な経済成長の促進と格差の是正」を基本方針としている。JICAは対ウズベキスタン共和国JICA国別分析ペーパー(2023年3月)において、取り組むべき協力プログラムとして「産業競争力強化・雇用創出プログラム」を掲げ、その中でも園芸・畜産など高い生産性が期待される分野への支援を協力分野の一つとしており、本事業はこれら方針・分析に合致する。また、JICA課題別事業戦略(グローバルアジェンダ)「農業・農村開発(持続可能な食料システム)」のクラスター事業戦略「持続可能な畜産振興 ワンヘルスの推進に向けて」に合致する。加えて「気候変動」の中の「GHGの排出削減・吸収増進【緩和策】」及び「気候変動に強靭な社会づくり【適応策】」に該当する。なお、獣医師教育及び衛生管理に関し、行政官・獣医師向けの国別研修を実施済(2023年度)。
3 環境社会配慮、外部要因リスク等留意すべき点
本事業は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月公布)上、JICAの融資承諾前にサブプロジェクトが特定できず、かつ、そのようなサブプロジェクトが環境への影響を持つことが想定されるため、カテゴリFIに該当する。
なお、本事業では、仲介金融機関/実施機関が、本事業で雇用されるコンサルタントの支援を受けつつ、ウズベキスタン国内法制度及び「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」に基づき、各サブプロジェクトについてカテゴリ分類を行い、該当するカテゴリに必要な対応策が取られることとなっている。なお、サブプロジェクトにカテゴリA案件は含まれない。
4 事前評価作成に用いた資料、有識者の知見等
要請書、JICAから提出された資料等。

