ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和7年12月10日
評価年月日:令和6年8月26日
評価責任者:国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子
1 案件概要
(1)供与国名
ネパール
(2)案件名
コテショール交差点改良計画
(3)目的・事業内容
ネパールの首都カトマンズにおいて、ティンクネ、コテショール及びジャディブティ交差点の3交差点を立体化することにより、交通の円滑化及び交通渋滞の緩和を図り、もってカトマンズ首都圏の経済成長と都市環境の改善に寄与するもの。
- ア
- 主要事業内容
- ティンクネ、コテショール及びジャディブティ交差点の立体化(フライオーバー及びアンダーパスの建設)及び既往道路の拡幅。
- コンサルティング・サービス(詳細設計、入札補助、施工監理等)
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 344.9億円 0.2% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA)
本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月)(以下、「JICAガイドライン」という。)上、 道路セクターのうち大規模なものには該当せず、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され、また、右ガイドライン上の影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。なお、ネパール国内法上、EIA報告書の作成は義務付けられていないが、同国国内法上、Initial Environmental Examination(IEE)の作成及び監督官庁であるインフラ交通省によるIEEの承認が必要であるため、2023年12月に承認を取り付け済みである。 - イ
- 社会環境面
隣接する空港用地の取得(0.25ヘクタール)及びジャディブティ交差点付近における非自発的住民移転(18世帯)を伴うため、同国国内手続き及びJICAガイドラインに沿って作成された簡易住民移転計画に基づき用地取得及び補償支払いが進められる予定である。 - ウ
- 外部要因リスク
特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ネパールは、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響を受け、2019/2020年度の実質GDP成長率はマイナスとなったものの、2020/2021年度は4.8%まで回復し、今後2024/2025年度にかけて5%程度の成長軌道に戻ることが見込まれている(IMF、2023)。この堅調な経済成長を背景にカトマンズ首都圏の社会経済活動は活発であり、カトマンズ首都圏の人口も2011年の約252万人(ネパール中央統計局、2011)から2021年には約300万人(同、2021)に増加し、右に伴いカトマンズ首都圏の交通量も著しく増加している。
一方、カトマンズ首都圏は5世紀から続く古都を含み、その成り立ちから道路幅が狭く、既に都心部の人口密集(約27,000人/平方キロメートル)が著しい(JICA、2022)ことから道路網の拡充は容易でない。また、公共交通機関も民間業者主体のバス輸送のみであり、路線の重複などから首都圏内の交通量を十分に吸収できず、渋滞は悪化の一途を辿っており、移動時間・費用の増加による経済的損失並びに排気ガスによる大気汚染を引き起こしている。カトマンズ首都圏の道路網は、唯一の環状道路と中心部から放射状に延びる幹線道路を中心に構成され、環状道路と放射状の幹線道路が交わる交差点では朝夕を中心に交通渋滞が発生している。中でもカトマンズ市中心部と首都圏の東部に位置し、新都市開発地域のバクタプール市を結ぶ唯一の幹線道路であるアラニコハイウェイと環状道路が交わるコテショール交差点は最も交通量が多く、交通渋滞が深刻であり、ピーク時には同交差点及び前後の交差点を通行するのに50分程度を要している。また、東部の人口増などの影響を受け、コテショール交差点の交通量は2020~2030年の10年間で約1.64倍になると見込まれており(JICA、2022)、当該交差点の交通渋滞の解消及び交通の円滑化が急務となっている。さらに、同国の第15次5か年計画(2019/20~2023/24年度)においても、運輸交通セクターを重点セクターとして位置づけ、「都市部における立体構造を含む近代的な道路インフラ開発による人々の移動時間の縮減などを通じた経済的繁栄の実現」を目標に掲げている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国は、対ネパール国別開発協力方針(2021年9月)において「後発開発途上国からの脱却を目指した持続的かつ均衡のとれた経済成長への支援」を基本方針とし、(ア)経済成長及び貧困削減、(イ)防災及び気候変動対策、(ウ)ガバナンスと民主化の強化を重点分野としている。本計画は、対ネパールの重点分野(ア)の下の開発課題「運輸交通インフラ連携制プログラム」に合致するものである。
また、2024年5月に行われた日ネパール外相会談において、ネパールが後発開発途上国の卒業を目指す中、同国の持続可能な開発に向け、継続的に支援していく旨表明している。特に、同国経済の中心であるカトマンズ首都圏の交通渋滞の緩和を行うことは、同国の経済成長、都市環境の改善に寄与するものであり、両国関係の更なる強化に貢献するものである。
さらに、本計画は、SDGsのゴール9(強靱なインフラの構築)及びゴール11(安全かつ強靱で持続可能な都市の実現)にも貢献すると考えられる。
以上のことから、本計画を実施することは外交的意義が高い。
(2)効率性
2022年2月から、「カトマンズ盆地における都市交通マネジメントプロジェクト」として、カトマンズ盆地内の交差点における交通渋滞や交通事故の緩和を目的に、信号機の運用・管理改善及び交通安全啓発等に必要な能力強化の支援を行っている。
また、本計画の整備対象である交差点は、日本の無償資金協力「カトマンズ-バクタプール間道路改修計画」(2008年度贈与契約締結、供与額 26.89億円)で整備された道路に接続することから、本計画はカトマンズ-バクタプール間道路の利便性を高める。
本計画の実施については、これらの協力案件との相乗効果が期待される。
(3)有効性
本計画の実施により、2023年の実績値を基準値として、事業完成2年後(2034年)の目標値を比較すると、主に以下のような成果が期待される。
- ア 定量的効果
- (ア)ティンクネ交差点とコテショール交差点間の平均日交通量が、149,460 PCU/日から271,396 PCU/日に増加する。
- (イ)ジャディブティ交差点とティンクネ交差点間の渋滞ピーク時の所要通行時間が、50分から2.2分に減少する。また、同区間における平均走行速度が、20キロメートル/毎時から50キロメートル/毎時に上昇する。
- (注)PCU(passenger car unit):様々な車種が混在した現実の交通量を乗用車のみの交通量に換算した際に用いられる台数の単位。
- イ 定性的効果
対象地区の移動快適性向上、走行時間短縮による大気汚染の緩和、地域経済の成長への寄与が期待される。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
ネパール政府からの要請書、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

