ODA(政府開発援助)

令和7年11月7日

評価年月日:令和7年8月27日
評価責任者:国別開発協力第一課 氏名 榎下 健司

1 案件名

1-1 供与国名

 モンゴル国(以下、「モンゴル」という。)

1-2 案件名

 日本型工学系高等教育による技術者育成環境整備計画

1-3 目的・事業内容

 工学系高度産業人材を育成するため日本の高等専門学校(以下、「高専」という。)と同様の高等教育を提供するウランバートル市内の3校(合計生徒数は約1,600名)において、実習用の機材整備と共用実習棟の建設を行うことにより、モンゴルにおける技術者の育成基盤の強化を図り、もって同国における産業多角化及び産業振興に寄与するもの。供与限度額は18.69億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境や社会への望ましくない影響が最小限であると判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  1. モンゴル(一人当たり国民総所得(GNI)5,350ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
  2. 同国の主要産業は鉱物資源であり、同国GDPのうち約29%、輸出額の約87%を占める(2023年同国統計局)。鉱物資源産業は国際資源価格変動の直接的な影響を受ける一方、国内製造業が発展しておらず、同国の経済構造は不安定で脆弱性が高い。農畜産業(GDPの10%、2023年同国統計局)も加工技術の低さにより競争力を発揮できていない。
  3. 国内製造業が未発達で日用品含め輸入比率はGDP比67%(2023年世界銀行)に上り、中露に挟まれた内陸国であり隣国からの陸路輸送に依存する中、世界的な物価高の影響を受け、自国産業の振興が大きな課題である。同国政府は単一産業依存型経済から脱却するため、「新再生政策」(2021年12月)の中で、製造業の高付加価値化と主力産業の創出、またそれらを担う高度技術者の育成を掲げている。
  4. 同国は両隣国とのバランスのとれた外交関係を展開しながら、両隣国に過度に依存することなく中露以外の「第3の隣国」との関係を発展させることを外交の基本方針としている。同国の自立した発展は、周辺地域の安定にも資するものであり、地政学的観点から我が国にとっても重要である。日本との関係では、2022年に日モンゴル外交関係樹立50周年を迎え、同年11月の首脳会談で、双方は両国関係をこれまでの「戦略的パートナーシップ」から「平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーシップ」に格上げすることで一致した。
  5. 2022年11月の共同声明及び行動計画において、経済・経済協力の分野では、「モンゴル経済の発展に向け、国内産業の多角化」を掲げ、人材育成に関する協力を継続していくことを確認した。
  6. 本計画を実施する高専3校は、国費留学生として日本の高専に留学したモンゴル人有志が中心となり、2014年に実践的高度技術者育成を目的に設立され、2016年に正式に高等教育機関と位置づけられた。
  7. 高専3校は、我が国の独立行政法人国立高等専門学校機構との間で、学校運営や教員能力強化に関する技術支援を受けたり、教員交流等を行ったりしているものの、本邦高専各校のような実習機材が整備されておらず、一部実習科目を提供できない状況にある。
  8. 本計画は高専3校の実習環境整備を行い、実践的な実習を積み重ねた即戦力となる工学系人材を育成することにより、製造業従事者を増加させ、産業の多角化へ繋げることで、同国の更なる経済発展に寄与するもの。
  9. また、本事業では、実習棟の凍上対策を講じて耐久性向上を図るとともに、省エネを図るため、自然換気、通風確保、採光、LED照明、人感センサー照明等の設計上の工夫もなされていることから、気候変動緩和策及び適応策に資する可能性があり、SDGsゴール13「気候変動に具体的対策を」に貢献することが期待される。
     上記を踏まえ、無償資金協力として本計画を実施する意義は高い。

2-2 効率性

 モンゴル政府の要請を踏まえつつ、現地調査を経て、事業費の妥当性の検討及びコスト縮減を図った。

  1. 授業で日常的に使用する機材は各校に設置することを基本方針とし、新設する実習棟の規模を抑えた。
  2. 高専3校の教員や高専機構との協議を通じて、各学科のカリキュラムに準拠した適切な機材を選定した。
  3. 高専3校の機材の維持管理能力を鑑み、オーバースペックになることを防ぐため一部機材の仕様変更や不要な機材の絞り込みを行った。
  4. 維持管理が容易かつ安価な機材の選定に努めた。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2024年実績値と事業完成3年後である2031年の目標値を比較し、以下のような成果が期待される。

  1. 定量的効果
    1. 共用実習棟の整備により、良好な環境で実習を受けることができる学生が29人/年から260人/年に増える。
    2. 適切な高専教育に必要な高専3校で行う実験・実習のテーマ数が77項目から121項目(高専3校平均)に増える。
    3. 実習授業における代表的な実習機材1台あたりの利用学生数が25人から13人(高専3校平均)になり、利用機会が増える。
  2. 定性的効果
    1. これまで実施できなかった実験・実習環境が改善され、カリキュラムに沿った実習・学習が可能になる。
    2. 共同学習や卒業研究、各種コンテスト等の高度な応用技術を学ぶ機会が拡大する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  1. モンゴル政府からの要請書
  2. JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  3. モンゴル国別評価報告書(2020年度・第三者評価)
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