ODA(政府開発援助)

令和7年10月15日

評価年月日:令和7年8月4日
評価責任者:国別開発協力第三課長 東 邦彦

1 案件名

1-1 供与国名

 セネガル共和国(以下、「セネガル」という。)

1-2 案件名

 セネガル日本職業訓練センター・ジャムニャージョ分校建設計画

1-3 目的・事業内容

 行政・社会・経済の新たな中心地となるジャムニャージョにおいて、セネガル日本職業訓練センター(以下、「CFPT-SJ」という。)の分校の建設及び機材の整備を行うことにより、セネガル及び周辺国の再生可能エネルギー及び産業機械メンテナンス分野の産業人材育成を図り、もってセネガルと周辺国の産業開発の基盤整備に寄与するもの。
 供与限度額は34.64億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月公布)におけるカテゴリーCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)セネガル(一人当たり国民総所得(GNI)1,680ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国は、独立以降安定した民政が行われている西アフリカの代表的な民主主義国家であり、アフリカ連合(AU)や西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)にも積極的に関与し、域内で中心的な役割を担っている。また、西アフリカ内陸国への玄関口として、流通、経済活動等の地域拠点となっており、日本企業の西アフリカへの進出ポイントとしても重要である。
  • (3)同国では、生産年齢人口が増加しており、2024年4月に発足した新政権による国家開発計画「セネガル開発戦略(2025-2029)」では、4つの柱の1つとして「質の高い人的資本と社会的公平性」を掲げ、その中で「職業訓練分野の質の向上」を重点分野としている。また、「教育・訓練の質、公平性及び透明性改善プログラム(2018-2030)」では、基礎教育課程修了者の職業訓練・技術教育課程への進学割合を7%(2016年)から30%(2030年)へ向上させることを目指している。他方、当該進学割合は、現状約10%(2021年)に留まる。
     また、2035年までの長期戦略である「産業化政策・戦略」では、主要産業である一次産業に加えて、石油・天然ガス産業やICT・デジタル産業等の新産業を優先セクターとして掲げている。特に、2024年6月から生産が開始された石油・天然ガス産業においては、外国企業参入時に現地人材雇用や現地企業との連携を義務付けるローカルコンテンツ法を適用しつつ、当該産業を含む産業機械メンテナンスの技術者育成を進めようとしている。また、同国は、2030年までに発電源の40%を再生可能エネルギーとする目標を掲げており、同分野の技術者の育成も喫緊の課題である。
     さらに、「国家ジェンダー公平・平等戦略(2016-2026)」では、職業訓練分野におけるジェンダー主流化を推進し、男女が平等に質の高い職業訓練を受け、社会経済活動に参画できる環境を整備することを掲げている。
  • (4)CFPT-SJは、無償資金協力により1984年に首都ダカールに建設され、以来、日本は無償資金協力及び技術協力を通じて累次にわたり長年同センターへの協力を行ってきた。現在は学生のみならず、企業の在職者並びにセネガル及び周辺国の職業訓練講師を対象とした研修も実施しており、西アフリカ地域における職業訓練分野の中核的な教育機関となっている。
  • (5)CFPT-SJは、産業機械メンテナンス及び再生可能エネルギーに関連する技術者育成の計画を有しているが、既存校では講義室及び敷地面積が限られており、同計画を履行するには新たな施設が必要となっている。この点、経済特区が設置され、多様な産業の企業の進出が見込まれる新興都市ジャムニャージョ市に分校を設置することにより、機械メンテナンス及び再生可能エネルギーに関連する技術者育成を行うことが可能となるとともに、企業との連携等により研修の充実化を図ることができるようになる。
  • (6)本計画は、上述の同国の課題解決に資するとともに、我が国が対セネガル国別開発協力方針(2020年9月)の重点分野「産業開発の基盤整備」で定める「人材に焦点を当て、産業開発に要する基盤整備を支援する」との方針に合致するほか、SDGsゴール4「質の高い教育をみんなに」及び8「働きがいも経済成長も」にも貢献するものである。
  • (7)2024年に行われたCFPT-SJの設立40周年記念式典にソンコ首相が出席し、同首相から、日本の開発モデルはセネガルにとって模範となる旨の発言があった。さらに、本年4月の岩屋外務大臣のセネガル訪問においても、大統領、首相及び外相から、CFPT-SJを念頭に日本のこれまでの人材育成に謝意が述べられた。こうしたセネガル政府からのCFPT-SJに対する評価や期待の高さを踏まえれば、本計画の実施は、二国間関係強化の観点から外交的意義は極めて大きい。また、CFPT-SJがアフリカの第三国からも研修員を受け入れていることに鑑みれば、本計画により同センターの職業訓練実施能力の強化を図ることは、周辺諸国を含む地域の発展にも資することが期待される。さらに、セネガルの石油・天然ガス産業、再生エネルギー産業では日本企業の参入が進んでおり、特に前者についてはセネガル人の雇用等も義務付けられているところ、本計画により当該分野で適切な技術を有する現地技術者を育成することは、日本企業への裨益にもつながる。

2-2 効率性

 セネガル政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。
 建設については、当初は2階建て学科棟2棟及び平屋建て管理棟1棟を建設予定であったが4階建て1棟に統合すること等により、コストを縮減に努めた。
 機材については、CFPT-SJと協議の上、要請機材の優先順位付け、数量確認、仕様確認を行い、機材アイテム数と機材数量の絞り込みを行った。また、据付け工事の期間短縮により工事費用の削減に努めた。

2-3 有効性

 本計画の実施により、計画実施前の基準値(2020-2024年の平均値)と事業完成3年後の2031年の目標値を比べると、主に以下のような効果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア CFPT-SJ分校の訓練コース修了生数(人/述べ)が、0から81に増加する。
    • イ CFPT-SJ全体の訓練生数(在籍生数)(人/年)が、1,314から1,602に増加する。
    • ウ CFPT-SJ全体の在職者研修修了者数(人/年)が、146から246に増加する。
    • エ CFPT-SJ分校を利用する既存校の訓練生数(人/年)が、0から166に増加する。
    • オ CFPT-SJ全体の女性訓練生の割合(%)が、18から22に増加する。
  • (2)定性的効果
    • ア 再生可能エネルギー及び産業機械メンテナンス分野の人材育成能力が強化される。
    • イ 当該分野の企業からのCFPT-SJに対する評価が向上する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)セネガル政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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