ODA(政府開発援助)

令和7年10月3日

評価年月日:令和7年7月18日
評価責任者:国別開発協力第三課長 東 邦彦

1 案件名

1-1 供与国名

 ガーナ共和国(以下、「ガーナ」という。)

1-2 案件名

 クマシ市における内環状道路改良計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、クマシ市の内環状道路において、主要環状交差点の平面交差点への転換、スマート信号機の設置、同交差点間の車道拡幅を行うことにより、市内道路交通の円滑化及び安全性向上並びに主要輸送回廊の物流網の改善を図り、もってガーナ及び西アフリカ地域の回廊整備に寄与するもの。
 供与限度額は、29.60億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)上、セクター特性、事業特性および地域特性に鑑みて、環境への望ましくない影響が重大でないと判断されるため、カテゴリBに該当する。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  1. ガーナ(一人当たり国民総所得(GNI)2,340ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
  2. ガーナは、情勢が不安定な国が多い西アフリカ地域において政治的・社会的安定を保ち、同地域における民主主義の牽引役を担っていることから、地域全体の安定と繁栄に重要な役割を果たしている。加えて、アフリカ連合(AU)及び西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の主要国であり、日本との貿易額が西アフリカ諸国の中でも高い水準にある。
  3. ガーナ政府は、西アフリカ地域の交通・物流の中心地としての地位を確立すべく、国際幹線道路の拡充・交通円滑化を進めている。同国の主要な開発計画の一つである「ガーナインフラ計画2018-2047年」(2019年)では、道路インフラ整備の重点項目として、国内道路ネットワーク整備や舗装路拡充などに加え、タコラディ港から同国第2の都市クマシ市を経由してブルキナファソを繋ぐ中央回廊の連結性向上を挙げている。我が国が推進する西アフリカ成長の環上の都市である同市は、国道6号線、8号線、10号線の3つを内環状道路で連結している。
  4. クマシ市は、カカオを含む農業や農産加工業、木材、鉱物業の集積地として同国経済において重要な役割を果たしており、加えて本邦自動車関連企業の販売代理店が市内南部に所在している。同市近郊では国内最大の内陸物流拠点となるボアンクラ内陸貨物ターミナル(2026年開業予定)の整備が進んでおり、同施設には同国カカオ公社(COCOBOD)の特別ターミナルの設置も予定されている。また、同市は、発展の進む同国南部・沿岸部と、相対的に開発の遅れている同国北部との物流を繋ぐ要所でもある。更には、同市の人口は急速に増加しており、今後も人口増加が見込まれている(2010年に201万人であった同市の人口は、2021年349万人となり、2045年には548万人に達する見込み)。かかる状況下において、同市では道路インフラの整備不足や交通安全施設の未整備を原因とした交通渋滞の慢性化、交通事故発生のリスクが増大するなど、インフラ整備が喫緊の課題となっており、本計画を通じたインフラ整備は、同国の経済活性化、ひいては同国の経済成長に寄与する。
  5. 日ガーナ二国間では、2016年、2018年にガーナから大統領が訪日し、2023年には岸田総理(当時)がガーナを訪問して首脳会談を行うなど、良好な関係を築いており、開発協力の継続による協力関係の強化は重要である。同首脳会談では、アクフォ=アド大統領(当時)よりインフラ分野に関する日本の支援に謝意が表明され、岸田総理からは今後もインフラ支援を進めていく旨応答していることから、本事業を実施することは外交的観点からも意義が高い。我が国は、対ガーナ国別開発協力方針(2019年9月)において、「インフラ開発」を重点分野の1つとして定めており、本計画は同方針に合致するとともに、SDGsゴール3(人々の健康)、ゴール9(強靭なインフラの構築)、ゴール11(包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市)にも貢献するものである。また、我が国は、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を踏まえた質の高いインフラ投資を推進するとともに、2022年8月に開催した第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)において、「連結性・質の高いインフラ投資」に取り組むことを表明しており、本計画はこうした我が国の重要政策を具体化するものである。

2-2 効率性

 道路の勾配や路面排水施設の構造等を工夫し、土工量を削減することで、コスト縮減を図った。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2024年の実績値を基準値として、事業完成4年後の2031年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。

  1. 定量的効果
    1. 日交通量が、19,741台/日から7,550台/日増えて、27,291台/日となる。
    2. 旅客数が、66,265人/日から36,660人/日増えて、102,925人/日となる。
    3. 貨物量が、14,940トン/日から7,080トン/日増えて、22,020トン/日となる。
    4. 車両の平均速度が、13.3キロメートル毎時から29.8キロメートル毎時増えて、43.1キロメートル毎時となる。
    5. 平均所要時間が、14.4分から9.9分減って、4.5分となる。
    6. 走行時間短縮による経済的な便益が、2.361百万米ドル/年となる。
  2. 定性的効果
    1. ガーナ主要産品(カカオ等)に関連する物流が改善する。
    2. 周辺地域の交通渋滞が解消する。幹線道路間の連結性が向上する。
    3. 周辺地域から病院や学校などの都市施設へのアクセスが改善する。
    4. 交通事故が減少する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  1. ガーナ政府からの要請書
  2. JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  3. TICADプロセスをふまえた最近10年間の日本の対アフリカ支援評価(2017年度・第三者評価)
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