ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和7年8月21日
作成年月日:令和7年8月12日
評価責任者:国別開発協力第一課長 榎下健司
1 案件名
1-1 供与国名
トンガ王国(以下「トンガ」という。)
1-2 案件名
ファアモツ国際空港整備計画
1-3 目的・事業内容
首都ヌクアロファのファアモツ国際空港において、既存国際線旅客ターミナルビルの拡張・改修及びその付帯施設等を整備することにより、同空港の利便性の向上を図り、もってトンガの産業基盤強化に寄与するもの。供与限度額は25.49億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、環境や社会への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- トンガ(一人当たり国民総所得(GNI)5,260米ドル)は、OECD開発援助委員(DAC)の援助受取国リスト上、高中所得国に分類されている。
- トンガは、南北約800キロメートルに点在する約170の島々で構成されるポリネシアの島嶼国である。国土を構成する島々が地理的に散在するため、空路は重要な移動・輸送手段であり、観光や貿易に加え、様々な社会サービスの提供にも重要な役割を担っている。ファアモツ国際空港(主滑走路2,071メートル)は、同国に二つある主要空港のうち、首都のあるトンガタプ島に位置する同国の玄関口であり、我が国の無償資金協力「ファアモツ国際空港ターミナル施設建設計画」にて国際線の旅客ターミナルビル(以下「PTB」という。)、エプロン・誘導路、アクセス道路・駐車場、地上支援機材等の整備が1989年に行われた。その後、2016年に世界銀行の支援を受けて、滑走路、誘導路、エプロン舗装の改修、エプロン拡張、国際線PTB到着部分の改修、新管制塔の建設等が行われた。その後も利用者数が増加し続け、チェックインカウンターや保安検査場、待合室、入出国審査場等の施設において混雑が発生しており、国際航空運送協会(IATA)が発刊する空港整備マニュアルに照らし、各施設の拡張が望まれる状況となっている。さらに、PTBの共用エリアや展望デッキの屋外に面する鉄骨構造に著しい腐食が確認され、国際線PTBの拡張に加えて早急な改修が必要となっている。また現在、国際線エプロンは大型機2機の同時駐機ができないため、不測の事態における対応にリスクがある。
- トンガ政府は「国家戦略計画2020-2030」の中で、重点戦略分野の一つに「社会経済開発を促進する効率的な運輸交通インフラ整備」を位置付けている。本事業は、国際線PTBの拡張・改修により旅客の利便性・快適性を向上させるとともに、国際線エプロンの拡張により運用の冗長性を確保するものであり、「国家戦略計画2020-2030」の実現に不可欠な優先度の高い事業として位置付けられる。
- 我が国は対トンガ国別開発協力方針(2019年4月)重点分野「脆弱性の克服」にて「社会インフラの整備と維持管理、産業を担う人材育成についての支援」を掲げ、同事業展開計画において「運輸・通信網の整備・強化をはじめとした公共インフラ整備への支援を進める」としている。
- 本事業は、2024年7月PALM10首脳会談でも加速化の要望が出されており、産業発展を下支えする同空港施設の整備拡張は、トンガの開発課題・政策並びに我が国の協力方針に合致する。また「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の柱「多層的な連結性」及びPALM10共同行動計画の重点分野「技術と連結性」に合致し、SDGsゴール8(包摂的で持続可能な経済成長)及び9(強靭なインフラ構築)にも貢献する。
上記を踏まえ、無償資金協力として本計画を実施する意義は高い。
2-2 効率性
トンガ政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、裨益者に対する効果の最大化を重視して適正な仕様・規模を検討した。具体的には、アクセス部分の改修は今次無償資金協力の対象外とするとともに、国際線エプロン拡張の計画に際し、拡張範囲が必要最小限の面積となるよう駐機態勢を工夫することで増額抑制に努めた。
2-3 有効性
本計画の実施により、2023年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2031年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。
- 定量的効果
- 国際線旅客取扱数(人/年)が、177,767人から244,330人となる。
- 年間国際線旅客便数(回/年)が、1,932便から2,368便となる。
- ボーディングブリッジの利用割合(%)が、ゼロから100%となる。
- 入国審査にかかる所要時間が30分から7分になる。
- 1時間当たりの国際線旅客ターミナル搭乗待合室での旅客処理能力(人)が231人から318人に増加する。
- 定性的効果
- 国際線エプロンの拡張により、機体故障等の不測の事態が起きても適切に修理され、同空港を発着する航空輸送の信頼性が向上する。
- インバウンド観光産業を中心とする経済活動が活発化する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- トンガ政府からの要請書
- JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- 太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価報告書(2015年度・第三者評価)