ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和6年10月21日
評価責任者:国別開発協力第三課長 氏名 東 邦彦
1 案件名
1-1 供与国名
アンゴラ共和国(以下、「アンゴラ」という。)
1-2 案件名
地上デジタルテレビ放送網整備計画
1-3 目的・事業内容
本事業は、ルアンダ州のヴィアナ送信所及びパレス・オブ・ジャスティス送信所並びにベンゲラ市内ソンブレイロ送信所において、地上デジタル放送網関連施設・機材の整備を行うことにより、地上デジタル放送の拡充を通じたアンゴラ国民の情報へのアクセス向上を図り、もって同国における情報格差の是正に寄与する。
供与限度額は、15.95億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
事業サイトに地雷・不発弾等の埋設がないことについては、アンゴラ国地雷対策庁(ANAM)より、ヴィアナ送信所は2023年12月26日付、ベンゲラ送信所は2024年1月18日付で証明書の発行を受けている。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)アンゴラ(一人当たり国民総所得(GNI)2,130ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。地上アナログ放送のデジタル化は、限られた資源である電波の有効利用のため国際電気通信連合(ITU)主導で全世界的に進められており、同国政府は「国家開発計画2023-2027」において、国家優先課題の一つに地上波デジタル放送網の導入を掲げている。
- (2)アンゴラにおいては、携帯電話での4G回線普及率及びインターネット普及率が約39%に留まっているため、テレビ放送は市民にとって貴重な情報源となっている。同国では、国営及び民間の放送局計4社によりテレビ放送が行われており、全国の約6割のエリアがカバーされ(通信・情報技術省、2019年)、市民の情報源となっている。他方、複数の送信所において増幅器モジュールの故障により減力運転を余儀なくされていることにより、人口カバー率は当初の設計時想定より約7%低減しているほか、民放は一部地域がカバーされていない等、テレビ放送による情報アクセスの格差是正が課題となっている。
- (3)また、現在のアンゴラにおけるテレビ放送はアナログで行われており、公用語であるポルトガル語のみとなっているが、国民の約7割が様々な現地語(民族語)を使用していることから、地上デジタル放送日本方式の特徴である字幕や多言語放送への潜在ニーズは高い。加えて、気象情報や災害情報を入手する手段が限られており、緊急警報放送の実装を通じた自然災害時の効果的・効率的な情報伝達の点でも、地上デジタル放送の早期導入が必要となっている。
- (4)本事業は、我が国の対アンゴラ国別開発協力方針(2024年3月)の重点分野の1つである「産業多角化」に向けた経済・社会インフラの整備に合致する。また、第8回アフリカ開発会議(TICAD8)において、通信インフラ整備を含め、データに基づく開発やデジタル・ソリューション利用を推進していくと表明しており、本事業は同コミットメントを具体化するものであり、我が国外交政策上も重要である。さらに、SDGsゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」及びゴール16「平和と公正をすべての人に」にも貢献することから、その実施の意義は大きい。
2-2 効率性
我が国は、アンゴラに対して、開発計画調査型技術協力「地上デジタルテレビ放送移行プロジェクト」(2021年~2025年)を通じて、新サービス(データ放送、多言語放送、緊急警報放送)の計画策定支援、多言語放送・データ放送の運用規定策定支援、受信機普及計画の立案、並びに試験放送システムの準備及び運用支援等のソフト面の協力など、地上デジタル放送導入のためのマスタープランの見直しと更新を行っている。本事業は、前述の技術協力と連携し、地上デジタル送信設備のハード面の整備を支援することで、アンゴラにおける地上デジタル放送移行をより円滑に進める。
2-3 有効性
本計画の実施により、2024年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値と比較すると、主に以下の成果が期待される。
- (1)定量的効果
- ア 対象地域における地上波テレビ放送人口カバー率が、ルアンダ州にて92.12%から98.22%、ベンゲラ州にて0%から60.05%に増加する。
- イ 対象地域における視聴可能な地上波放送番組系統数が、ルアンダ州にて2から3系統、ベンゲラ州にて0から3系統に増加する。
- (2)定性的効果
複数言語で視聴できる番組が増加するとともに、データ放送提供による気象情報・災害情報へのアクセスが向上し、首都と地方の地域間情報格差の是正に資する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)アンゴラ政府からの要請書
- (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)アンゴラ国別評価報告書(2018年度・第三者評価)
- (4)モルディブ国 地上デジタル放送に係る情報収集・確認調査報告書