ODA(政府開発援助)

令和7年8月15日

評価年月日:令和7年6月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子

1 案件概要

供与国名

 パナマ共和国(Republic of Panama)(以下、「パナマ」という。)

案件名、実施機関、供与限度額、供与条件

案件名 実施機関 供与限度額 金利(注) 償還(うち据置)期間 調達条件
パナマ首都圏都市交通3号線整備計画(フェーズ2)(第一期)
(Panama Metropolitan Area Urban Transportation Line-3 Development Project (Phase 2) (I))
メトロ公社(Metro de Panamá, S.A (MPSA) 3,828.44億円 TORF+90bp 20(6)年 アンタイド

 (注)一般条件(変動金利)のオプション2を適用。

 (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.55%とし、償還期間及び据置期間並びに調達条件は本体部分と同様とする。

目的・事業概要

 パナマ首都圏西部地域と中心部をつなぐ都市交通3号線(約25キロメートル)を、十分に安全かつ信頼性のある都市交通システムとしての商業運行実績を有する質の高いモノレールの車輌及びシステムの導入を通じて整備することにより、都市の交通機能の改善及び二酸化炭素排出削減を図り、もって同国の持続可能な経済成長に寄与するもの。

2 資金協力案件の評価

(1)外交的意義

  • ア 我が国とパナマは、民主主義、人権、法の支配といった価値や原則を共有する重要なパートナーであり、外交関係の樹立から120年を超える伝統的な友好関係を有する。我が国は2024年にパナマ国民への査証免除措置を開始し、2025年には日・中米交流年を迎えるなど、両国の人的交流の活性化や様々な記念行事を通じた一層の関係深化が期待されている。
  • イ 我が国はパナマ運河の世界第3位の利用国であり、パナマにとり我が国は輸出相手国第2位であるほか、我が国はパナマで便宜置籍船登録を活用する(日本船舶の約5割がパナマ船籍)等、両国の経済関係は非常に深い。
  • ウ パナマは南北米大陸及び太平洋・大西洋を結ぶ世界海運の要衝であり、パナマの交通インフラを整備することは、我が国が自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のための新たなプランで掲げた柱3「多層的な連結性」に資する。
  • エ 本計画は、2013年に岸田外務大臣(当時)がパナマを訪問した際に要請を受けて以降、累次にわたり、ハイレベルで協力要請がなされてきたものである。パナマは本計画を国家の最重要案件の一つに位置づけており、2024年2月、上川外務大臣(当時)がコルティソ前大統領を表敬した際、同大統領から本計画の協力に対する期待が寄せられたほか、2024年9月、ムリーノ現大統領は、本計画のトンネル掘削開始式典に出席する等、パナマ側は一貫して最高レベルで本計画に高い関心を示している。

(2)開発ニーズ/有効性

  • ア パナマでは首都圏中心部の地価高騰により居住地域が東部・北部・西部の辺縁部に拡大しており、高い経済成長を背景とした自動車保有比率の高まりとともに首都圏中心部と辺縁居住地域との間で交通渋滞が深刻化している。都市交通システムの整備は立ち後れており、現在の主要公共交通手段である都市バスや中距離バスのみでは、増加する交通需要に十分に対応出来ていない。
  • イ 東部地域では、2014年にメトロ1号線が南北を、2019年には2号線が東西を結ぶ路線として開業したが、西部地域は中心部から運河を越える必要があり、都市交通システムの整備が立ち後れている。西部地域には2017年時点で首都圏総人口の約27%が居住しており、近年の住宅開発もあって人口は急増している。西部地域と中心部を結ぶ幹線道路は片道2車線の一本道であり、パナマ運河を隔てて西部と首都圏中心部を結ぶアメリカ橋を中心に朝夕の交通渋滞が著しく、また自動車が排出する二酸化炭素による温暖化や排出ガスによる大気汚染が問題化しており、従来の公共交通手段である都市バスや中距離バスを代替する公共交通システムの導入が求められている。
  • ウ このような状況下、2016年1月、首都圏西部地域と中心部をつなぐパナマ首都圏都市交通3号線整備計画の実施に関して、日・パナマ間でモノレール車輌及びシステムの導入が重要との見解が示され、パナマの国家開発計画「パナマ戦略計画2019-2024」で本計画が優先度の高い事業として位置づけられた。
  • エ 本計画の実施により、事業完成2年後(2030年)には、以下のような成果が期待される。
    • (ア)定量的評価
      • 旅客輸送人員が17万9千人/日となる。(新規路線のため初期値なし。)
      • CO2排出削減量が32,482トン/年となる(JICAガイドラインに基づいて算出)。(新規路線のため初期値なし。)
      • アルブルック~シウダ・デル・フトゥーロ間の移動に係る所要時間が104分から35分に短縮される。
    • (イ)定性的評価
      • 都市のモビリティ改善による生活環境の改善・都市機能の改善

(3)我が国の基本政策との関係等

 我が国は、2018年9月に策定された対パナマ共和国国別開発協力方針において、「環境に配慮した経済基盤整備」を重点分野に掲げ、円借款「パナマ首都圏都市交通3号線整備計画」の着実な進展による都市交通機能の改善等、経済基盤整備への支援を実施するとしている。また、本計画は、SDGsゴール8(持続可能な経済成長と雇用)、9(強靱なインフラ構築)、11(強靭なインフラ構築)及び13(気候変動対策)に貢献するものである。

3 環境社会配慮、外部要因リスク等留意すべき点

 本計画は、「国際協力機構(JICA)環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる道路、鉄道及び橋梁セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。本計画による環境影響評価報告書は協力準備調査を通じメトロ公社により作成され、2016年1月に環境省により承認済みである。トンネル部分の環境影響評価報告書の付帯条件となっていたEMP(Environmental Management Plan)は環境省による承認後に実施段階に入っており、四半期のモニタリングレポートが提出されている。その他、事業進捗に伴い計7本の環境影響評価報告書が作成され、うち6本が環境省により承認済みであり、残りの1本(地下鉄部分の一部駐留地と沿線部分の小規模な変更に係る報告書)は、2025年3月に環境省から承認される見込みである。
 本計画は、約35ヘクタールの用地取得、183人及び72軒の経済的移転が想定されるほか、都市交通3号線の路線付近に位置する商店へのアクセスが工事により遮断されることが想定され、JICAガイドラインに沿って作成される簡易住民移転計画(MINI RAP:Mini Resettlement Action Plan)に基づいて補償及び住民移転手続きが実施されることになっており、本計画に対する特段の反対意見は表明されていない。なお、実施機関が中心となり、大気、騒音及び振動並びに用地取得及び住民移転の進捗状況等についてモニタリングが行われる。外部要因リスクは特段想定されていない。

4 事前評価の作成に用いた資料・有識者の知見等

 要請書、JICA環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く、JICAから提出された資料等。

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