ODA(政府開発援助)

令和7年8月6日

評価年月日:令和6年7月29日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志

1 案件概要

(1)供与国名

 アンゴラ共和国(以下、「アンゴラ」という。)

(2)案件名

 南部地域における送電系統増強計画

(3)目的・事業内容

 本計画は、アンゴラ南部において、220キロボルト送電線及び変電所等の新設を行うことにより、送電容量の増加及び電力供給の安定化を図り、もって地域住民の生活環境の改善及び産業活動の活性化に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
  • 220キロボルト送電線約200キロメートルの新設
  • 220/60キロボルト変電所2か所の新設
  • 60キロボルト配電線の新設
  • 60/15キロボルト変電所1か所の新設
  • 地雷・不発弾の調査及び探査・除去に必要な資機材の調達
  • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
供与限度額 金利(注) 償還(うち据置)期間 調達条件
391.05億円 1.20% 30(10)年 アンタイド

 (注)コンサルティング・サービス部分の金利は0.2%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア 環境影響評価(EIA)
    本計画は、国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる影響を及ぼしやすい特性に該当するため、カテゴリAに分類される。本計画のEIAは、アンゴラ環境省にて環境許認可承認を取得済み(送変電公社(RNT)分2023年5月、配電公社(ENDE)分は同年3月)。
  • イ 用地取得及び住民移転
    本計画による送配電線の整備に際し、約313ヘクタールが土地利用制限を受け、整地に伴う樹木伐採や農業その他の生産活動への影響が想定される。また、工事中は、およそ355世帯(1,701人)に、生活への影響や一時的な移転の発生が予測されるが、同国国内法手続き及びJICAガイドラインに沿って作成された簡易住民移転計画に沿って対応が進められる。
  • ウ 外部要因リスク
    特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
    • (ア)アンゴラは、中期開発計画「国家開発計画(PDN)2022」(対象期間2018~2022年)において、六つの重点セクターを設定し、電力セクターについては、「都市部での電力アクセス向上」及び「電力セクターの統合と最適化に向けた取り組み」を目標に掲げている。
    • (イ)アンゴラは、中北部を中心とした電源開発を進めており、中北部にある水力及び火力の大電源、並びに同電源から中西部の都市フアンボを繋ぐ基幹送電線は2020年に完成し、フアンボから中南部の都市ルバンゴ間については、アフリカ開発銀行(AfDB)融資による送電線(400キロボルト)開発が進められている。他方、ルバンゴ市からナミベ港のある南部のモサメデス市(旧ナミベ市)への送電線は60キロボルトの送電線で連系されているのみであり、将来の需要に対応できない状況となっている。
    • (ウ)アンゴラ南部は鉄鉱石等の鉱物資源に富み、物流拠点整備を通じた物流効率化及び鉱物資源輸出の促進が重要課題となっている。同国の主要港の一つであるナミベ港は、2013~2017年のPDNにおいて、同国南部からナミビア北部をカバーする物流の起点として位置付けられている。JICAの無償資金協力によるナミベ港改修事業及び日本企業による同地域港湾開発を始めとした経済開発が進められてきたことから、同地域への安定的な電力供給の必要性が益々高くなることが見込まれているものの、ナミベ地域では、現在高価なディーゼル発電への依存度が高い状況にある。
    • (エ)本計画は、アンゴラ南部(ルバンゴ市・モサメデス市間)において、送電線及び関連変電所等を新設することで、同地域への送電容量の増加及び電力供給の安定化を図るものであり、同国電力マスタープランにおいても、モサメデス都市圏の経済成長に不可欠な優先度の高い事業として位置付けられている。なお、南部アフリカパワープール(SAPP)において、本計画で整備される送電線を含め、アンゴラの電力系統を将来的に隣国ナミビアとの国際連系線にも接続することが計画されていることから、実施する意義は高い。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     我が国は、対アンゴラ国別開発協力方針において、「産業多角化を目的とした経済開発支援」を重点分野とし、持続可能な経済成長を支える経済・社会インフラ整備を推進するための支援を行うとしている。
     我が国は2022年8月のTICAD8にて、アフリカ自身が主導する発展を後押しし、グリーン成長を実現するため、多様なパートナーと連携していくという「アフリカ・グリーン成長イニシアティブ」を表明しており、本計画の実施により、ナミベ地域の電源を同地所在の小規模なディーゼル発電から、より環境負荷の低い中北部の大規模発電(主に水力)に置き換えることが可能になることから、同イニシアティブを具体化するものである。
     また、TICAD8においては、「強靭なアフリカを支援し人々の生活を向上させるために、新たに特別枠10億ドルを含む、最大50億ドルのアフリカ開発銀行との協調融資を実施していく」旨発表しており、本計画は、アフリカ開発銀行(AfDB)との協調融資促進ファシリティ(ACFA)に基づき、パラレル協調融資案件として実施する予定である。
     さらに、本計画はSDGsゴール7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスの確保)に貢献すると考えられる。
     以上のことから、本計画の実施は、外交上の戦略的意義が認められる。

(2)効率性

 本計画は、2つの実施機関の下、地雷探査・除去と電力設備建設を並行して円滑に進める必要があり、また配電公社は独自に配電設備を整備し、本事業の変電設備に接続しなければならないため、各機関が連携し、包括的に事業の進捗を管理する必要がある。そのため、各機関が柔軟に調整・連携する機能を持つSteering Committee(SC)を設置することにより、案件の効率性を確保する。

(3)有効性

 本計画の実施により、計画完成3年後の2031年には、新設220キロボルト送電線によるルバンゴからナミベへの年間送電電力量が692ギガワットアワーに達することが見込まれる。また、ナミベ地域では、現在高価なディーゼル発電へ電源を依存しているものの、本計画の実施により、電源をより環境負荷の低い中北部からの発電(主に水力)に置き換えることが可能となるため、ナミベ地区のディーゼル発電による年間発電量(2021年時点では305ギガワットアワー)を90%以上減らすことができる見込み。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、アンゴラ国別評価報告書(2018年度・第三者評価)、ODA評価年次報告書2020(2018年度国別評価報告書からの提言とフォローアップ状況を掲載)、JICAガイドライン(2010年4月制定)、その他JICAより提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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