ODA(政府開発援助)

令和7年7月30日

評価年月日:令和7年6月16日
評価責任者:国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子

1 案件名

1-1 供与国名

 モルディブ共和国(以下、「モルディブ」という。)

1-2 案件名

 マレ島における災害に対する強靱性向上計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、モルディブの首都マレ島において、海岸防災施設(護岸)の改良及び雨水排水能力向上に係る機材整備等を行うことにより、マレ島の高波・高潮及び豪雨災害の被害軽減を図り、もってマレ島の水災害への脆弱性の克服及び生活・経済社会活動基盤の安定を通じたモルディブの環境・気候変動対策・防災に寄与するもの。
 供与限度額は15.75億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  1. モルディブ(一人当たり国民総所得(GNI)10,880ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、中進国に分類される。
  2. モルディブは、国土の80%が海抜1メートル以下の低平かつ狭隘な約1,190の島々からなり、高波・高潮への脆弱性が高く、気候変動の影響を受けやすいとされる小島嶼国である。我が国は、1987年から2002年にかけて首都マレ島の高波・高潮対策として護岸整備を支援し、海岸防災機能の強化を図ってきた。近年、既設護岸の一部区間において越波・飛砂等により周辺道路や施設に被害が及んでおり、今後、気候変動の影響により海面上昇が見込まれるため護岸の強化が必要である。また、マレ島では、堆積物による排水施設における通水断面の縮小や排水ポンプの非効率的な運用等により排水能力が低下しているため、集中豪雨時には道路の冠水が頻繁に発生し、経済社会活動の継続が阻害されている。今後、気候変動の影響により降雨強度の更なる増大が予測され、雨水排水能力の向上が課題となっている。
  3. モルディブ政府は、気候変動に起因する災害に対するレジリエンスの向上を重要な開発課題と認識しており、戦略的行動計画(2019-2023年)において「現在および将来の脆弱性に対処するための適応策の強化と気候変動に強靱なインフラ及びコミュニティの構築」を掲げているほか、「国が決定する貢献(NDC)」の更新版(2020年)の中では沿岸強靱化のための防災投資を優先課題として挙げている。また、我が国の対モルディブ共和国国別開発協力方針(2020年4月)では、「環境・気候変動対策・防災」が重点分野の一つに位置付けられている。
  4. 本計画はモルディブの開発課題・政策及び我が国協力方針に合致する。また、本計画は護岸の改良及び雨水排水能力向上を通じて災害リスクの低減に資するものであり、SDGsのゴール11「包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市と人間住居の構築」及びゴール13「気候変動とその影響への緊急の対処」に貢献する。
  5. モルディブの所得水準は相対的に高いが、次の観点から本計画は適当である。ア 気候変動による海面上昇が想定される中、高波被害からモルディブ国民の生命・財産を保護するものである(人道上のニーズ)。イ モルディブは、小島嶼開発途上国(SIDS)であり、気候変動に起因する自然災害に対する脆弱性を有している(環境的脆弱性)。ウ モルディブは、観光業が主な産業となっており経済構造が脆弱である(経済的脆弱性)。エ モルディブは、インド洋シーレーンの要衝に位置しており、その持続的発展と安定は我が国海上輸送路の安定にも貢献する(外交的観点)。

2-2 効率性

 緑の気候基金からの受託事業「気候変動に強靭で安全な島づくりプロジェクト」のコンポーネントとして本計画と同名の技術協力(2021-2025年度)を実施中。同事業では、主に地方の住民島を対象に海岸侵食対策に係る支援を行っているほか、統合沿岸域管理計画の基本方針を策定する予定としていることから、本計画では、同基本方針等に係る議論も踏まえ計画を行う。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2022年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2030年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。

  1. 定量的効果
    1. 護岸(防御できる護岸前の波高)
      基準値:
      1.55メートル~1.70メートル
      目標値:
      1.77メートル~1.92メートル
    2. 排水(マンホールポンプ周辺の冠水発見までの時間短縮)
      基準値:
      5分~45分(現在、冠水発生地点まで確認しに行く必要あり)
      目標値:
      0分(センサーで冠水を認知することが可能になる)
  2. 定性的効果:水災害に係る浸水・越波・飛砂被害の減少及び浸水解消までの所要時間の減少により、周辺住民の生活環境や生活の質の改善及び衛生環境の改善が見込まれる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  1. モルディブ政府からの要請書
  2. JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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