ODA(政府開発援助)

令和7年6月3日

評価年月日:令和7年5月28日
評価責任者:国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子

1 案件概要

供与国名

 バングラデシュ人民共和国(以下、「バングラデシュ」という。)(The People’s Republic of Bangladesh

案件名、実施機関、供与限度額、供与条件

案件名 実施機関 供与限度額 金利(注) 償還(うち据置)期間 調達条件
ジョイデプール-イシュルディ間鉄道複線化計画(第一期)(Construction of Dual Gauge Double Line Between Joydebpur-Ishurdi Section Project (I) バングラデシュ国鉄(Bangladesh Railway 920.77億円 2.00% 30(10)年 アンタイド
  • (注)コンサルタントサービスは0.65%
  • (注)一般条件(固定・基準)を適用。

目的・事業概要

 本計画は、バングラデシュの首都であるダッカ近郊のジョイデプール駅から同国西部のイシュルディ駅間の鉄道複線化を行うことにより、鉄道輸送能力の強化を図り、もって国内及び近隣諸国との連結性を向上し地域の社会経済発展に寄与するもの。

2 資金協力案件の評価

(1)外交的意義

 伝統的な親日国であるバングラデシュは、我が国が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を推進する上での重要なパートナーでもあり、2023年の首脳会談において、両国の関係は「戦略的パートナーシップ」に格上げされた。
 インドとASEANをつなぐ要衝に位置し、南西アジア地域のみならずアジアの平和と安定にとっても重要なバングラデシュの経済成長と安定のために、運輸インフラ等の質の高いインフラ整備を通じた連結性強化を図り、同国の経済活動の活性化並びに社会脆弱性の克服への取組を支援することは、二国間関係の一層の強化に繋がり、「ベンガル湾産業成長地帯」(BIG-B)構想やFOIPを推進する観点からも、高い外交的重要性を有している。

(2)開発ニーズ/有効性

 バングラデシュでは、近年の旅客・貨物の急激な需要拡大に伴い、鉄道輸送量の増加、全鉄道路線の広軌・複線化へのアップグレード等による輸送システムの効率化、鉄道網の近隣諸国との接続等が課題となっている。特にジョイデプール-イシュルディ間は、同国北部及び西部の各都市並びにインドのコルカタを結ぶアジア横断鉄道(Trans Asian Railway)の主要区間でありながら、単線であることから、路線容量を超過した本数の列車運行が常態化し、遅延が頻発することで円滑な交通・流通に支障が出ている。
 本計画では、当該区間のうち、まずジョイデプールからジャムナ鉄道専用橋までの東側区間について、鉄道複線化及び三線軌条化(軌間が異なる鉄道車両を同じ路線で走行可能とするために3本のレールを設置するもの)を通じ、鉄道輸送能力を強化するもの。これによって、国内及び近隣諸国との人流及び物流ネットワークが円滑化することが期待されている。また、本計画により、我が国が円借款で支援し、2025年3月に開通したジャムナ鉄道専用橋による輸送量増大及び交通円滑化の効果が更に高まるほか、円借款にて建設中のマタバリ港から国内北西部への貨物輸送路が構築され、地方経済を含む国全体の経済発展にも寄与する。

定量的評価
 本計画の実施により、事業完成2年後の2032年には以下のような成果が期待される。
  • (ア)乗客運送量が、8.82億人・キロメートル/日(2024年基準値)から、26.3億人・キロメートル/日となる。
  • (イ)列車運行数が、23本/日(2024年基準値)から、56本/日となる。
定性的評価
 本計画の実施により、鉄道輸送量の強化が図られ、バングラデシュ国内及び周辺国との輸送の円滑化、道路の混雑の緩和、地域格差の改善等に貢献することが期待される。

(3)我が国の基本政策との関係等

 我が国は、対バングラデシュ国別開発協力方針(2018年2月)おいて、同国の経済成長の加速化を重要分野に定め、質の高い運輸・交通インフラの整備を通じ、人とモノの効率的な移動の促進及び地域の連結性向上に貢献することとしている。
 また、我が国が推進する「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)」のための新たなプラン(2023年3月)の取組の柱3では「多層的な連結性」が掲げられ、「ベンガル湾からインド北東部を繋ぐ産業バリューチェーン構築」が例示されている。
 本計画はインドにも繋がるアジア横断鉄道の一部を成す鉄道区間の複線化を通じ、輸送ネットワークの効率化や物流及び人流の促進を図るものであり、上記方針に合致する。また、SDGsのゴール9(強靭なインフラ構築)及びゴール13(気候変動への対処)にも貢献する。

3 環境社会配慮、外部要因リスク等留意すべき点

  • (1)本計画は「国際協力機構(JICA)環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる鉄道・橋梁セクターに該当するため、カテゴリAに該当する。
  • (2)環境影響評価(EIA)報告書:バングラデシュ環境森林省環境局により承認済み(2020年6月)。環境許認可は2024年6月に更新(同年8月再承認)済み。
  • (3)工事中は、散水、フェンスの設置、低騒音・低振動型機械の導入、施工時間の調整、工事現場の沈殿池と排水処理システムの設置等により大気質、騒音・振動、水質等にかかる汚染対策を行う。供用時は水質悪化の対策として、各駅に排水処理設備等を設置する。
  • (4)対象地域は湿地帯を通過するほか、伐採対象樹木(75,279本)や鳥類及び哺乳類において絶滅危惧II類(VU)種等が複数種確認されている。VU種の樹木は森林局の指示に基づき移植し、その他は代替地への補償植林を実施予定。加えて絶滅危惧種の魚類の繁殖期に工事を禁止し、繁殖地を囲うなどの対策を講じる。
  • (5)実施機関はバングラデシュ国内手続き及びJICA環境社会配慮ガイドラインに基づき、住民移転計画(約2,991世帯)に沿って用地取得(約718ha)を進める意向。被影響住民から事業に係る特段の反対意見は出ていない。

4 事前評価作成に用いた資料・有識者の知見等

 要請書、バングラデシュ国別評価報告書(2023年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料等。

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