ODA(政府開発援助)

令和7年3月31日

評価年月日:令和6年11月5日
評価責任者:国別開発協力第一課長 榎下 健司

1 案件名

1-1 供与国名

 フィジー共和国(以下、「フィジー」という。)

1-2 案件名

 太平洋諸島における気象業務向上及び災害リスク軽減のための地域拠点整備計画

1-3 目的・事業内容

 本事業は、フィジー気象局の敷地内において、太平洋島嶼地域の気象分野における中核拠点としての研修センター、測器センター及び防災啓発展示施設を整備することにより、同地域の気象分野における人材育成及び気象データの品質管理の強化を通じて気象関連業務サービスの向上及び早期警戒態勢の強化を図り、もって同地域における防災・気候変動対策の強化に寄与するもの。
供与限度額は17.39億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本事業は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)フィジー(一人当たり国民総所得5,580ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、高中所得国に分類される。
  • (2)我が国はフィジーの主要ドナー国として、1979年の同国に対する経済協力の開始以来、同国の開発に大きく寄与してきており、また、同国は国際場裏における我が国の立場を基本的に支持しており、我が国との関係は良好である。フィジーには、太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務局など多くの国際・地域機関が所在するとともに、地域の経済活動において中心的な役割を担っており、我が国にとって同国との協力は、二国間のみならず同地域全体との関係強化のために重要である。
  • (3)フィジーを含む太平洋島嶼国は、サイクロン等による洪水・土砂災害・高潮等の自然災害に対して脆弱であり、1950年から2010年代初頭にかけて地域全体で約1万人の死者と32億ドルの経済損失を被ったといわれている。各国の社会・経済活動の拡大や気候変動の影響によって災害リスクは年々深刻化しており、気象分野における人材育成や地域拠点を軸とした予警報サービスの改善や気象データの品質管理が急務となっている。
  • (4)フィジー気象局(Fiji Meteorological Service。以下、「FMS」という。)は、1995年に国連世界気象機関(WMO)第V地区(南西太平洋地域)の「熱帯低気圧プログラムに基づく地域特別気象中枢」に認定され、2015年からは気象衛星ひまわり8号から気象データを受信し、同地域におけるサイクロンの予報・警報サービスを域内各国に提供している。また、FMSは、JICAの技術協力等を通じて2001年から大洋州地域10か国に対する研修を継続的に実施しており、基礎的な気象業務の習得に係る人材育成や気象観測測器の校正サービスを実施する体制を強化してきた。しかしながら、太平洋島嶼国での気候変動・防災対策の更なる拡充の必要性に伴い、FMSによる研修や測器校正サービスの需要が拡大し、FMSの職員数は庁舎設立時から1.5倍以上に増加し、また、2017年に開催された第4回太平洋気象協議会(PMC)会合において、FMSが南西太平洋地域の地区測器センター(RIC)及び地区研修センター(RTC)として、WMOの認定を目指すことが合意された(大洋州地域初のWMO認定)。さらに、FMS庁舎はフィジー国内の政府関係者や民間セクター、研究機関等への気象・気候情報の提供や、一般市民や学生向けに、気象、防災、気候変動に関する学習機会の提供や啓発活動を実施しており、昨今の自然災害の激甚化や大洋州地域における気候変動への注目の高まりを受けて、啓発コンテンツの拡充や受入れキャパシティの増強に対応した施設の整備が求められている。
  • (5)本事業は、フィジー及び周辺国の脆弱性の克服に貢献するという観点から、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のための新たなプランにおける「インド太平洋流の課題対処」の防災・災害対処能力の強化に資するものである。また、2024年7月に開催された第10回太平洋・島サミット(PALM10)の首脳宣言及び共同行動計画における7つの重点協力分野のうち、「気候変動と災害」に合致し、同サミットのコミットメント達成に寄与するものである。さらに、SDGsゴール11「包摂的、安全、強靱な都市及び人間居住の構築」及びゴール13「気候変動とその影響への緊急の対処」にも貢献することから、実施する意義は高い。
  • (6)フィジーの所得水準は相対的に高いことから、「所得水準が相対的に高い国に対する無償資金協力の効果的な活用について」に基づき、無償資金協力の供与の適否について精査が必要である。この点に関し、フィジーを含む太平洋島嶼国は、気候変動に脆弱な島嶼国であり、毎年のように大雨による洪水やサイクロンによる暴風・高潮の被害が発生しており、人間の安全保障の観点から、本事業を通じた、個人の尊厳、生命、生活に対する脅威への対応が必要(「人道上のニーズ」)であるため、本事業は無償資金協力により実施することが適当である。

2-2 効率性

 フィジー政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。建設資材について、現地調達が困難な一部の資材は日本調達とするものの、一般的な資材は現地調達とする。また、機材に関しては、これまでに日本が整備してきた機材との互換性を重視し、気象測器校正機材は日本調達とするものの、IT機材に関しては、維持管理の観点から基本的に現地調達とする。事業効果を担保できる最小限の資材・機材を整備することで効率性を担保している。

2-3 有効性

 本事業の実施により、2023年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2030年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア フィジー気象局がWMOの地域拠点として認証される件数が1件から3件となる。
    • イ 国際基準とのトレーサビリティーが確保された観測データの数が、26件から97件に増加する。
    • ウ フィジー気象局で育成される気象衛星等を活用した極端気象の監視・予報を行う予報官数が、13人から36人となる。
    • エ 早期警戒態勢の強化に関し、1年当たりの防災啓発センター来館者数が、10,000人から13,000人に増加する。
    • オ FMSが発信する予報・警報情報のアクセス(FMSが運営するHP/SNSの閲覧者数)が、155,000件から200,000件に増加する。
  • (2)定性的効果
    • ア フィジーにおける防災・気候変動対策が強化される。
    • イ フィジー及び太平洋島嶼部において、住民の早期警戒に対する意識が向上する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)フィジー政府からの要請書
  • (2)JICA案件計画調書
  • (3)太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価(2015年度・第三者評価)
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