ODA(政府開発援助)

令和7年1月21日

評価年月日 令和6年10月4日
評価責任者 国別開発協力第二課長 廣瀬 愛子

1 案件概要

(1)供与国名

 ウズベキスタン共和国(以下、「ウズベキスタン」という。)

(2)案件名

 保健医療サービス改善計画

(3)目的・事業内容

 本事業は、タシケント市における脳神経センター建設及び医療機材整備並びにサマルカンド市及びブハラ市の地方三次医療施設における医療機材整備を行うことにより、脳神経疾患等の非感染性疾患(NCDs)を主とする高度医療サービス提供体制の向上及び医療人材育成の拠点機能強化を図り、もって国民の健康向上に寄与するもの。

主要事業内容
  • (ア)建設工事(脳神経センター建設)
  • (イ)医療機材整備(MRI、CT、X線装置、内視鏡、手術用機器、血管造影検査装置、リハビリテーション機器、シミュレーション機器等)
  • (ウ)コンサルティング・サービス
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
229.53億円 0.50%
(STEP)
40(10)年
  • タイド(脳神経センター建設以外)
  • 二国間タイド(脳神経センター建設)
  • (注)コンサルティング・サービス部分は、金利0.40%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月改訂)上の、環境や社会への望ましくない影響が最小限かあるいはほとんどないと判断されるため、カテゴリーCに分類される。
用地取得及び住民移転
 該当なし。
外部要因リスク
 脳神経センター建設着工前に、建設地内にある医科大学の既存建物の解体撤去が完了する必要がある。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
  • (ア)ウズベキスタンでは、経済的な発展を背景とした食生活や運動量の低下等の生活スタイルの変化等を受け、死因上位10位のうちNCDsの占める割合が、2000年には75.8%であったが2019年には87.4%に増加(虚血性心疾患54%、脳卒中17%、肝硬変7%、糖尿病5%等)する等、疾病構造の変化が進んでいる。これに対し、同国政府は、開発戦略「ウズベキスタン2030戦略」において、第1の柱として「一人一人の可能性を引き出すための適切な環境づくり」を挙げ、国民の健康のための改革を推進している。また、大統領令においても、NCDs等に対する質の高い医療サービスを広く提供するための保健システムの改善、保健人材の育成、専門性の強化に取り組んでいる。
  • (イ)ウズベキスタンでは、医療のリファラル体制が整備されつつあるものの、地方の三次病院においてはNCDsに対応する医療機材が老朽化又は不足しており、十分な医療サービスを行えない状況にある。また、タシケントにおいては、2つの病院において脳神経疾患に対応しているが、人口増に伴い診察・治療を適時に行えない状況にある。さらに、同国では、脳神経疾患において必要な早期ケアから治療・リハビリに至る一連の医療体制が整備されておらず、脳神経疾患の「治療」を専門に行う医療機関が存在しないところ、これに対応できる医療機関の創設及び医療機材の整備が喫緊の課題となっている。
我が国の基本政策との関係
 我が国は、対ウズベキスタン国別開発協力方針において、「持続可能な経済成長の促進と格差の是正」をODAの基本方針とし、(ア)持続可能な経済成長と産業の多角化・高度化、(イ)公平かつ持続可能な社会の構築(環境、保健・医療、教育等)、(ウ)ガバナンスの強化(人材育成、法執行能力向上等)を重点分野として支援を行ってきている。本計画は、同国の医療セクターの強化を図ることで、同国が進める「一人一人の可能性を引き出すための適切な環境づくり」に向けた改革を後押しするものであることから、上記方針の(イ)に合致し、我が国の外交政策と整合的である。
 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を構築する上で重要な戦略的パートナーとして、同国が抱える保健・医療分野での課題解決に向けて本計画を実施することは、ミルジヨーエフ大統領が推進する医療・保健分野を含む各種改革や同国が定める開発戦略「ウズベキスタン2030戦略」の実施を後押しすることにつながり、二国間関係の一層の強化に資するものである。また、本件は本邦技術活用条件(STEP)案件であり、日本製の医療機材が導入されるものであることから、我が国企業の同国への進出や同国で活動する日本企業の事業拡大に一層の弾みをつける契機となることが期待される。
 さらに、本事業は、高度専門医療機関の新設及び医療機材の整備により、質の高い医療サービスへのアクセスの機会不足に対応し、当国政府の開発課題・政策並びに我が国及びJICAの協力方針・分析に合致するものであり、SDGsゴール3(健康と福祉)にも貢献すると考えられることから、事業の実施を支援する必要性は高い。

(2)効率性

 2023年~2026年、技術協力「中央アジア脳卒中リハビリテーション」(国別研修)にて、脳卒中のリハビリテーションに関する政策立案能力及び現場レベルの対応能力強化を目標とした知識・技術等習得を行っているところ、本計画の目標とする脳神経疾患のリハビリテーションに関する人材育成の強化において相乗効果が期待される。
 また、2021年~2026年、技術協力プロジェクト「非感染性疾患予防対策プロジェクト」において、タシケント州及びナボイ州を対象とした一次医療施設における非感染性疾患対策の能力強化を図るべく、医療サービス提供体制や地区/市レベルのマネジメント能力の強化に取り組んでいるところ、本計画による三次医療機能との連携強化等が期待される。

(3)有効性

 本計画の実施により、事業完成3年後(2033年)には、2023年比で以下のような効果が期待される。

定量的効果
  • (ア)CT診断の年間件数が、脳神経センターでは、0件から5,040件となり、サマルカンド国立医科大学付属小児外科病院では、1,800件から3,600件になる。
  • (イ)MRI診断の年間件数が、脳神経センター、サマルカンド国立医科大学付属小児外科病院において、それぞれ0件から3,360件、1,200件になる。
  • (ウ)脳卒中リハビリテーションを受けた年間患者数が、脳神経センターでは0人から1,000人になる。
定性的効果
 非感染性疾患の第三次医療サービスが改善するほか、住民の健康状態が改善する。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本案件関する事後評価は実施機関であるJICAが行う予定。

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