ODA(政府開発援助)

令和6年10月16日

評価年月日:令和6年8月26日
評価責任者:国別開発協力第一課 榎下 健司

1 案件名

1-1 供与国名

 ラオス人民民主共和国(以下、「ラオス」という。)

1-2 案件名

 ビエンチャン国際空港整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、ビエンチャン国際空港において、旅客ターミナルビルの拡張、誘導路、エプロン(駐機場)及び関連設備(航空灯火システム及び電気設備等)の補修等を行うことにより、同空港の効率性及び安全性の向上を図り、もってラオスの周辺国とのハード・ソフト面での連結性強化に寄与するもの。
 供与限度額は28.36億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ラオス(一人当たり国民総所得(GNI)2,120米ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
  • (2)ASEAN唯一の内陸国、かつ国土の8割が山岳部であるラオスにとって、航空交通は人やモノの円滑な移動及び周辺国との連結性の観点から最重要インフラの一つである。特に、首都ビエンチャンに位置するビエンチャン国際空港は、同国の玄関口及び経済活動の拠点として、重要な役割を担っている。
  • (3)日本はこれまで、同空港の整備に関し、無償資金協力「ビエンチャン国際空港拡張計画(2011年)」でエプロンの拡張や保安設備の整備等に協力するとともに、円借款「ビエンチャン国際空港ターミナル拡張事業(2013年)」で国際線旅客ターミナルビルの拡張や国内線ターミナルビルの新設等に協力したほか、本空港の改善計画の策定支援を行う技術協力「ビエンチャン国際空港の継続的改善に係る技術支援プロジェクト(2021年~2022年)」を実施している。
  • (4)2010年から2019年にかけて、同国の着実な経済発展(年平均実質GDP成長率7%程度)に支えられ、同空港を利用する旅客数は年平均約16%増加し、2019年には約234万人に達した。同様に、航空機の発着回数も年平均約16%増加し、2019年には、28,433回に達している。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2020年及び2021年の旅客数と航空機発着回数は減少したものの、2022年以降、国境を越えた移動の活発化に伴い航空需要は再増加し、2022年は約91万人まで回復している。
  • (5)2035年には、ピーク時の国際線出発旅客数が831人/時になることが見込まれ、現在の処理能力では需要を満たせなくなることが想定される。これに伴い、一部旅客ターミナル施設(国際線出発搭乗待合室、国内線バゲージクレームエリア等)での処理能力不足による本空港の利便性・効率性の低下が懸念されている。また、本空港の滑走路とエプロンを結ぶ誘導路は経年劣化による損傷が確認されている。今後、航空機の発着回数の増加が見込まれる中、損傷の範囲が拡がるとともに損傷の程度も重度化することが予想され、舗装劣化が進むことにより、その修復に時間や費用を要するだけでなく、航空機の安全な運航に重大な支障が生じるおそれがある。さらに、エプロンにはひび割れ、航空灯火システムの老朽化等が生じており、航空機の運行における安全上の課題となっている。
  • (6)本計画は、かかる状況にある同空港において、早期に対応が必要となる旅客ターミナルビルの拡張並びに誘導路及びエプロンの舗装改修等を行うことで、本空港の利便性・効率性・安全性の向上を図り、同国と周辺国の連結性強化に貢献することが期待される。なお、現状ラオスの債務状況を鑑み新たな債務負担を課すことは適当ではないと判断される状況であることから、必要性を鑑み緊急的な対応が必要な協力対象に絞った無償資金協力の計画としている。
  • (7)ラオス政府は「第9次社会経済開発5ヵ年計画(2021~2025)」で「強靭なインフラ整備、地域ポテンシャルの活用、地域間・国際間協力の活用」を重点施策の一つとし、ASEAN諸国の中心に位置する地理的強みを活かして、人・モノの移動における交通ハブになることを目指している。その実現方策として、同国と各国を接続する航空交通の利便性向上を挙げており、本計画は同国政府が定める開発計画の実現に不可欠な優先度の高い事業に位置づけられる。
  • (8)上記のとおり、本計画はラオスの開発課題・政策に合致するものであり、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の第三の柱「多層的な連結性」にも合致する。また、我が国の対ラオス国別開発協力方針(2019年4月)においても、「周辺国とのハード・ソフト面での連結性強化」を重点分野としており、「ASEAN連結性強化に資するハード・ソフトの両面からインフラ(ビエンチャン国際空港含む)の整備及び維持管理を支援する」としている。さらに、産業基盤強化に資するものであることから、SDGsゴール8(包摂的で持続可能な経済成長)及びゴール9(強靭なインフラ構築)にも貢献すると考えられる。加えて、我が国と同国は、2015年に二国間関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げし、2025年には外交樹立70周年を迎えるなど今後更なる二国間関係の強化が想定されるところ、我が国が継続的に協力し、二国間の友好関係の象徴と言える本空港に対し、無償資金協力として本事業の実施を支援する必要性は高い。

2-2 効率性

 ラオス政府の要請を踏まえつつ、現地調査を通じて支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。また、旅客ターミナルビルの拡張部分については既存設備のサービスレベルを基準として設計し、誘導路及びエプロンについては、舗装状態や使用頻度を精査し、劣化状態に応じた適切な改修方法を策定するとともに、優先的に改修・補修すべき箇所を確認して対象範囲の絞り込みを行った。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2019年の実績値(注1)を基準値として、事業完成3年後の2030年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 国際線旅客ターミナル出発搭乗待合室の旅客処理能力が、488人/時から831人/時に増加する。
    • イ 国内線旅客ターミナルビル手荷物受取り所におけるピーク時の待ち時間が、20分から10分に減少する。
    • ウ 対象誘導路(A誘導路及びT誘導路)のPCIポイント(注2)が、39から95以上に増加する。
    • エ 対象エプロン(1Aエプロン全体)のPCIポイントが、55から70以上に増加する。
    • 注1:新型コロナウイルス感染症による減便等の影響を避けるため、2019年の実績値を基準値とする。
    • 注2:PCIポイント:舗装状態指数(Pavement Condition Index)。最も良い状態が100ポイント、悪い状態が0ポイントを示し、70ポイント以上が満足するレベル。
  • (2)定性的効果
    • ア 空港の利便性・効率性向上。
    • イ 航空機運航の安全性担保。
    • ウ 当該空港に係る人流・物流の活性化。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ラオス政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)ラオス国別評価報告書(2022年度・第三者評価)
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