ODA(政府開発援助)

令和6年9月19日

評価年月日:令和6年3月29日
評価責任者:国別開発協力第一課長 鴨志田 尚昭

1 案件名

1-1 供与国名

 フィジー共和国(以下、「フィジー」という。)

1-2 案件名

 主要空港航空安全設備整備計画

1-3 目的・事業内容

 本事業は、日本への直行便も就航する国内最大の国際空港であるナンディ空港を含む5空港において、航空管制・安全機材等を整備することにより、航空機運航の安全性の向上を図り、もって同国の交通インフラのキャパシティ向上及び経済発展に向けた基盤整備に寄与するもの。
 供与限度額は12.90億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本事業は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)フィジー(一人当たり国民総所得5,390ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、高中所得国に分類される。
  • (2)我が国はフィジーの主要ドナー国として、1979年の同国に対する経済協力の開始以来、同国の開発に大きく寄与してきており、また、同国は国際場裏における我が国の立場を基本的に支持しており、我が国との関係は良好である。フィジーには、太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務局など多くの国際・地域機関が所在するとともに、同国を拠点に太平洋島嶼国を中心に多くの直行便が運航されるなど、地域の経済活動において中心的な役割を担っており、我が国にとって同国との協力は、二国間のみならず同地域全体との関係強化のために重要である。
  • (3)フィジーは、大小合わせて約330の諸島から構成される島嶼国であり、空路は海外との貿易や国内での商業活動等を行う上で重要な移動・流通手段となっており、GDPの約4割を占める基幹産業である観光業にとっても不可欠なものである。コロナ禍以前の2015年から2019年にかけては、同国の国際線の旅客数は出入国合計で約190万人から約220万人に、国内線の旅客数は約66万人から約90万人へと順調に増加しており、今後一層の拡大が予想される。
  • (4)フィジーの「国家開発計画2017-2036」は、国際及び国内空港において国際基準に合わせた機材・設備の近代化及び更新を実施する旨を掲げている。しかしながら、フィジーのみならず地域のハブ空港であるナンディ国際空港には、航空機を進入経路へ誘導するための標準的な施設である超短波全方向無線標識/距離測定装置(VOR/DME)が設置されておらず、VOR/DMEよりも旧式で精度の低い無指向性無線標識(NDB)が離着陸支援のために運用されている。NDBは利用可能な航空機が限られ、空港進入時には有視界飛行となることから、天候や時刻により着陸が制限されるという課題がある。また、最大の国内線専用空港であるランバサ空港では、VOR/DME及びNDBのいずれも運用されていないため、多くの航空機が有視界方式で離着陸を行わざるを得ない状況である。さらに、ナンディ国際空港、ナウソリ国際空港及び3地方空港(ランバサ、サブサブ、マテイ)は、空港用消防車や救難機材(救命ボート等)を保有しているものの、多くは購入後20~35年が経過して老朽化していることに加え、一部は消防車のタンク水量等、国際民間航空機関(ICAO)が定める基準を満たしていないため、有事に際し消火・救出活動に支障を来たしかねず、主要空港の安全機材整備は航空機運航上の安全性確保の観点から喫緊の課題となっている。
  • (5)本計画は、国内最大の国際空港であるナンディ空港を含む5空港において、航空管制・安全機材等を整備することにより、航空機運航の安全性の向上に寄与するものであり、大洋州地域のハブであるフィジーの空港の安全性を強化することは、同国と周辺国のみならず、我が国とを結ぶ航空便の安定運航にも貢献する。
  • (6)本計画は、フィジー国家開発計画における「国際及び国内空港において国際基準に合わせた機材・設備の近代化及び更新の実施推進」に寄与する。また、2021年7月の第9回太平洋・島サミット(PALM9)の重点分野「持続可能で強靭な経済発展の基盤強化」における「デジタル及び物理的な連結性を含む質の高いインフラ開発」に合致し、さらにフィジー国内外の連結性の向上に寄与することから、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の新たなプランの柱の一つである「多層的な連結性」における「各種インフラの一体整備による脆弱性の克服」に合致するため、実施の意義は高い。
  • (7)フィジーの所得水準は相対的に高いことから、「所得水準が相対的に高い国に対する無償資金協力の効果的な活用について」に基づき、無償資金協力の供与の適否について精査が必要である。この点に関し、フィジーは統計上その所得水準が相対的に高いが、本事業で大洋州地域のハブである同国空港の安全性を強化することは、周辺国を結ぶ航空便の安定運航に貢献する(「広域性」)。フィジーは我が国のFOIPの実現に重要な地域に位置付けられ、本計画は、同国の多層的な連結性確保のために不可欠な航空セクターを支援するものである(「重要政策との関係」)。また、フィジーではGDPの約4割を観光業が占めるため、コロナ禍により打撃を受けた同産業の振興が必要である(「経済的脆弱性」)ことから、ウィズ/ポストコロナを見据え、同産業回復のためにも航空セクターに対する協力を実施する意義は高い。さらに、SDGsゴール8(経済成長)及びゴール9(強靭なインフラ構築)にも貢献する。
    以上を踏まえ、無償資金協力として本事業の実施を支援する必要性は高い。

2-2 効率性

 フィジー政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。VOR/DMEに関し、フィジーの降雨量は雨季と乾季で大きく異なり、雨季にはスコールがあるため、VOR/DMEの屋外に設置する付帯設備は防水対策及び落雷対策を施し、設計対象風力は最大60メートル/秒とした。また、空港消防車に関しては、フィジー国側の維持管理能力、財務負担能力等を総合的に勘案し、空港消防体制に合致した機材内容とし、ICAO基準及び世界的な趨勢に照らして、必要かつ最小限の機材を整備することで効率性を担保している。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2022年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア ナンディ空港において、到着・進入において常時計器飛行方式を利用できる航空機の割合が、86%から100%に増加する。
    • イ ランバサ空港において、到着・進入において常時計器飛行方式を利用できる航空機の割合が、58%から100%に増加する。
    • ウ サブサブ空港において、消火救難体制が整備された状態で着陸を行うことができる航空機の割合が、0%から100%に増加する。
    • エ マテイ空港において、消火救難体制が整備された状態で着陸を行うことができる航空機の割合が、0%から100%に増加する。
  • (2)定性的効果
    • ア 航空安全設備の導入・充実により、本事業の対象5空港における航空機運航の安全性及び信頼性が向上する。
    • イ 航空機の安定運航を通じ、コロナ禍からの旅客・物流双方の輸送量回復による産業促進等が図られる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)フィジー政府からの要請書
  • (2)JICA案件計画調書
  • (3)太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価(2015年度・第三者評価)
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