ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和6年2月28日
評価年月日:令和4年7月26日
評価責任者:国別開発協力第一課長 竹端 昌宏
1 案件名
1-1 供与国名
サモア独立国(以下「サモア」という。)
1-2 案件名
サモア国立大学保健科学学部施設整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、首都アピアに位置するサモア国立大学保健科学学部において、医師及び看護師養成のプログラムを実施する保健科学学部教育実習棟の建設及び関連機材の整備を行うことにより、保健医療分野における教育の質の向上を図り、もって保健医療人材の育成強化に寄与するもの。
供与限度額は24.01億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)におけるカテゴリはCであり、環境への望ましくない影響は最小限である。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)サモアは、ウポル島とサバイイ島の主要2島及びその他7つの小島からなる島嶼国であり、面積は2,830平方キロメートル、人口は約19.8万人(2020年、世銀)、一人当たりの国民総所得(GNI)は4,050米ドル(2020年、世銀)である。保健セクターは、医療従事者不足、施設の老朽化、予算不足等の問題を常に抱えており、特に保健医療人材の育成に対するニーズが大きいとされている。世界保健機関(WHO)によるとSDGs達成のために必要な保健人材(医師、看護師、助産師)は人口千人当たり4.45人と推計されているが、同国は、2.83人(2016年)と著しく低いことが確認されている(2019年、WHO)。
- (2)同国では、2019年に麻疹が大流行した際、予防接種に係る資機材等はドナー支援により整備されていたものの、専門知識を十分に有している医療従事者の不足により十分な接種率を維持できなかったという背景があり、保健医療分野における教育の充実の必要性が指摘されている。また、サモア保健省は、「サモア保健セクター計画2020-2030(Health Sector Plan)」において、保健医療人材の育成強化を重点課題として掲げており、保健医療人材育成のための教育を管轄するサモア教育省の「サモア教育セクター計画2019-2023(Education Sector Plan」を受けたサモア国立大学の中期計画においても同大学キャンパスの整備を掲げている。このような状況の下、同国政府は我が国政府に対して支援を要請した。
- (3) 我が国は、同国を始めとした太平洋島嶼国との関係強化を図るため、3年に1度太平洋・島サミットを開催しており、2021年7月に開催された第9回太平洋・島サミット(以下、PALM9)で「新型コロナへの対応と回復」を重点分野の1つとして表明している。我が国は対サモア国別開発協力方針において、「自立的かつ持続的経済成長の達成と環境に配慮した国民の生活水準の向上」を基本方針として掲げ、「脆弱性の克服」を重点分野として定めている。本計画は、重点分野「脆弱性の克服」にて言及されている、「保健医療水準の向上のため、フィラリア等感染症対策、非感染症疾患予防強化、保健衛生指導等を担う人材育成を含む保健医療サービスへの支援に重点を置く。」に合致するものである。
- (4)同国は、ポリネシアで最も人口が多く、複数の国際機関の地域事務所が所在し、ポリネシア地域において大きな影響力を有する国である。また、同国は独立から一貫して親日的であり、これまで国際社会における我が国の立場や国際機関の選挙で我が国の立候補者を支持するなど、我が国と良好な二国間関係を築いている。本計画は、保健・医療体制が脆弱な同国の保健人材の育成強化に資する協力であり、二国間関係の強化に大きく貢献することが期待できるとともに、PALM9で掲げられた協力の柱にも合致することから外交的意義は高い。さらに、本計画は、同国の開発課題・開発政策及び我が国の協力方針にも合致し、保健科学学部教育実習棟の整備を通じて保健医療人材の育成強化に資するものであり、SDGsゴール3「健康的な生活の確保、福祉の促進」及びゴール4「質の高い教育の提供、生涯学習の機会の促進」にも貢献することから、本計画の実施を支援する必要性も高い。
2-2 効率性
整備機材の運用が適切に行われるよう、サモア国立大学の計画・安全・維持管理部、エンドユーザーとなる同大学保健科学学部講師、トゥプア・タマセセ・メアオレ国立病院のバイオメディカル・テクニシャンを対象としたソフトコンポーネント(整備機材の保守管理能力強化)を本計画で行うほか、維持管理費に関する必要な予算措置について先方実施機関と事前の合意を得るなど、効果発現に対する効率性を確保している。
2-3 有効性
本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2028年の目標値と比較すると、主に以下の成果が期待される。
- (1)学生一人当たりの実験室・実習室の面積(平方メートル/人)が、約1.6倍(1.00から1.64)に増加する。
- (2)通常運営時間(8時~17時)内に実施される実験・模擬実習の年間時間数(時間)が、医学科は約1.40倍(462から630)、看護科は約1.30倍(448から588)に増加する。
- (3)看護学科の看護師・准看護師コースの合同講座(100人規模)のうち、大教室で実施される年間時間数(時間)が、約3倍(126から378)に増加する。
- (4)カリキュラム実施に必要な医療シミュレーター、検査機器等の機材が整備されることにより、保健科学学部の教育の質が向上する。
- (5)図書館を整備することにより、保健科学学部学生の最新の学術文献へのアクセスが容易となるなど、学習環境が改善する。
- (6)実習を含めた教育の質の向上により、保健科学学部の保健医療人材の育成が強化される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)サモア政府からの要請書
- (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)太平洋島嶼国の ODA 案件に関わる日本の取組の評価報告書(2015年度・第三者評価)