ODA(政府開発援助)

令和6年2月27日

評価年月日:令和6年2月19日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士

1 案件概要

(1)供与国名

 インド

(2)案件名

 貨物専用鉄道建設計画(フェーズ1)(第五期)

(3)目的・事業内容

 貨物専用鉄道(西回廊)の計画区間であるデリー~ムンバイ間のうち、グジャラート州、ラジャスタン州及びハリヤナ州にわたる優先整備区間であるレワリ市~ヴァダドラ市間の約915キロメートルにおいて、貨物専用鉄道の建設、全自動信号・通信システムの整備及び高出力かつ高速の機関車等を導入することを通じて、今後高い成長率が見込まれる貨物輸送需要への対応及び物流ネットワークの効率化を図り、もってインド国内の広範な経済発展に資することを通じて、連結性の強化及び産業競争力の強化に寄与するもの。今次借款は輪切りの5期目として、2024年度から2025年度までの資金需要に対応する。

主要事業内容
  • (ア)土木・建築工事:路盤整備、橋梁、貨物駅・分岐駅等の構築物建設等
  • (イ)軌道工事:レール敷設等
  • (ウ)電気・機械工事:架線・変電所等の整備
  • (エ)信号・通信工事:信号・通信システム整備、自動踏切システムの建設
  • (オ)車両調達1:電気機関車(6,000馬力/6軸)
  • (カ)車両調達2:保守・点検車輌等
  • (キ)コンサルティング・サービス:施工監理、品質・安全管理、試運転テスト補助、運営・維持管理に係るマニュアルのレビュー、運営・維持管理に係る計画策定・実施支援(研修プログラムの実施を含む)、環境管理計画及び住民移転のモニタリング計画の実施管理、社会開発(広報・住民啓発活動、HIV予防活動)等
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
400.00億円 0.30% 40(10)年 STEPタイド
  • (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.20%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「環境社会配慮のための国際協力銀行ガイドライン」(2002年4月公布)に掲げるカテゴリAに該当する。本計画に係るEIA報告書は、2009年8月に承認済み。なお、インド国内法上は、EIA作成義務対象外である。
用地取得及び住民移転
 本計画では、約3,716ヘクタールの用地取得と1,514世帯の住民移転を伴う。用地取得・住民移転の手続きは2021年4月に完了済み。
外部要因リスク
 特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは、貨物輸送量が年率約10%台で伸びる一方で、貨物鉄道の輸送能力は限界に近づいている。輸送貨物における貨物鉄道のシェアも低下傾向であり、道路輸送に比べ、大量輸送かつ環境配慮型である鉄道の整備・強化は同国の経済成長においても不可欠な課題となっている。とりわけ、同国屈指の消費地・生産拠点である首都デリーと大陸東西の玄関港であるムンバイ、コルカタ、そして南東部のチェンナイを結ぶ「黄金の四角形」と呼ばれる路線の貨物輸送量は全国の約60%を占めており、今後もコンテナ貨物の増加や農産物・鉱工業資源の輸送量の増加が見込まれることから、高容量化かつ高速化と他の交通機関との連携による輸送能力の強化が求められている。
 また、インド政府は、3年行動計画(2017年度~2019年度)及び第12次5か年計画(2012年年度~2016年度)において、幹線鉄道における大量輸送を可能とするための路線拡充及び高速貨物車両の導入、港湾施設へのアクセス改善等の必要性について言及するとともに、特に、デリー~ムンバイ間及びルディアナ~デリー~コルカタ間の貨物専用鉄道の早期整備と旅客・貨物車輌拡充の必要性を強調している。また、直近の国家インフラパイプライン計画(2019年度~2025年度)においても、鉄道を含む交通インフラ整備の重要性が強調されている。
 また、本計画は日印協力の旗艦プロジェクトであり、2009年10月にフェーズ1の第一期供与(26.06億円)、2010年3月にフェーズ1の第二期供与(902.62億円)、2010年7月にフェーズ2の第一期供与(16.16億円)、2013年3月にフェーズ2の第二期供与(1,361.19億円)、2016年3月にフェーズ1の第三期供与(1,036.64億円)2020年3月にフェーズ1の第四期供与(1,300.00億円)を行ってきている。
我が国の基本政策との関係
 インドにおいて、依然として多くの貧困層を抱え、電力、運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては、今後の対インドODAの重点目標として、連結性の強化、産業競争力の強化及び持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。本計画は、貨物専用鉄道の計画区間であるデリー~ムンバイ間及びルディアナ~デリー~ソンナガル間のうち、特に整備優先度が高いとされるグジャラート州、ラジャスタン州及びハリヤナ州の主要都市を結ぶ新線を建設し、全自動信号・通信システム及び高出力かつ高速の機関車等を導入することにより、今後高い成長率が見込まれる貨物輸送需要への対応及び物流ネットワークの効率化を図り、もってインド国内の広範な経済発展に寄与することから、上記重点目標のうち、連結性の強化、産業競争力の強化に合致する。
 また、本計画は、貨物専用新線の建設、全自動信号・通信システム及び高出力かつ高速の電気機関車導入による貨物輸送能力の増強を通じた効率的な貨物輸送の実現を図るものであり、インドの課題、開発政策、我が国及びJICAの支援方針に合致するもの。また、SDGsのゴール8(持続的、包摂的で持続可能な経済成長と、万人の生産的な雇用と働きがいのある仕事の促進)、ゴール9(強靭なインフラの構築、包摂的で持続可能な工業化の促進とイノベーションの育成)、及びゴール13(気候変動とその影響への緊急の対処)にも資するものである。
 さらに、2023年3月の岸田総理の訪印時に両首脳は、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」としての両国関係を更に発展させることで一致するなど、両国の関係強化は着実に進んでいる中、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める世界最大の民主主義国であるインドの発展を支援することは、こうした二国間関係の更なる強化につながり、外交政策上の意義も高い。

(2)効率性

 総合的な支援の必要性が指摘されていることを受け、本計画では、DFCCIL(インド鉄道省、貨物専用鉄道公社)が策定予定の財務戦略を含め、運営・維持管理体制の包括的な強化を支援しているほか、円借款附帯プロジェクト「貨物専用鉄道運営・維持管理支援プロジェクト」の中で、鉄道省、DFCCILによる貨物鉄道事業の運営・維持管理体制の強化案策定等を通じて能力強化を実施。
 以上を通じて、本計画の効率的な実施を図る。

(3)有効性

 本計画の実施により、事業完成2年後(2029年)には、2007年比で以下のような成果が期待される。

定量的効果
  • (ア)車両走行距離(双方向)が37.9千キロメートル/日から250.8千キロメートル/日に延長。
  • (イ)輸送列車数(双方向)が33/日から222/日に増加。
  • (ウ)輸送量が55.6百万トン・キロ/日から336.9百万トン・キロ/日に増加。
定性的効果
 貨物輸送需要への対応、物流ネットワークの効率化、広範な経済開発の促進等

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお、本案件に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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