ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和6年2月27日
評価年月日:令和6年2月19日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士
1 案件概要
(1)供与国名
インド
(2)案件名
ウッタラカンド州における都市上水道整備計画
(3)目的・事業内容
ウッタラカンド州において、山岳地・遠隔地を含む十分な飲料水にアクセスができない地域の上水道施設の整備を行うことにより、同地域への安定的な上水道サービスの提供を図り、もって同地域住民の生活環境の改善や気候変動への適応に寄与する。
- ア
- 主要事業内容
- (ア)動力配水整備(取水施設、導水管、浄水場、中継ポンプ場、送水管、配水池、配水管、IoTシステム、受電設備、給水管、戸別接続(メーター設置含む)等及びその運営維持・管理(2年間))
- (イ)重力配水整備(取水施設、導水管、浄水場、送水管、配水池、配水管、IoTシステム、受電設備、給水管、戸別接続(メーター設置含む)等及びその運営維持・管理(2年間))
- (ウ)井戸取水整備(取水施設(井戸)、高架水槽、送水管、配水管、IoTシステム、受電設備、給水管、戸別接続(メーター設置含む)等及びその運営維持・管理(2年間))
- (エ)コンサルティング・サービス1(ベースライン調査(サブプロジェクト選定に係るデータ収集等)の実施)
- (オ)コンサルティング・サービス2(ベースライン調査結果のレビュー、基本設計、入札図書作成・入札補助、施工監理・モニタリング、工事安全管理、環境社会配慮に係る手続き・モニタリング補助、実施機関及び運営維持管理組織の職員能力強化・組織体制強化、住民啓発活動(戸別接続促進)、ジェンダー主流化に係る活動支援(成果モニタリング、啓発活動等)
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 162.11億円 1.80% 30(10)年 一般アンタイド - (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.20%を適用。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA)
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月公布)上、JICAの融資承諾前にサブプロジェクトが特定できず、且つそのようなサブプロジェクトが環境への影響を持つことが想定されるため、カテゴリFIに該当する。 - イ
- 用地取得及び住民移転
特になし。 - ウ
- 外部要因リスク
特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
インドでは、2023年に人口が世界一位となり、今後も人口増加や高い経済成長に伴う水需要は高まり、水供給量の増加や効率的な給水システムの整備が求められる。インド政府は2024年度までに全世帯への管路給水実現に向け上水道整備を進めているが、上水道接続世帯数は全体の約71%に留まり、取組の加速化が課題となっている。
ウッタラカンド州は、気候に影響を受け、通年での十分な農業用水・飲料水の確保が困難な地域も多く、安定した水源の確保が課題となっている。さらに上水道整備の遅れにより、女性・子供が水汲みを行う地域もあり、身体的な負担や就業・就学の機会損失も懸念されている。この状況を踏まえ、同州政府はこのような状況を踏まえ、「Uttarakhand Vision 2030」や「Improving Drinking Water Policy for Peri Urban Areas」を策定し、同州の中でも開発の遅れる山岳地・遠隔地での安全で安定的な飲料水の提供や効率的な水資源管理等を重点課題として、上水道整備を推進している。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
インドにおいて、依然として多くの貧困層を抱え、電力、運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては、今後の対インドODAの重点目標として、連結性の強化、産業競争力の強化及び持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。本計画は、ウッタラカンド州において、山岳地・遠隔地を含む十分な飲料水にアクセスができない地域の上水道施設の整備を行うことにより、同地域への安定的な上水道サービスの提供を図り、もって同地域住民の生活環境の改善や気候変動への適応に寄与することから、上記重点目標のうち、持続的で包摂的な成長への支援に合致する。
また、本計画は、インド北部ウッタラカンド州において、十分な飲料水にアクセスができない山岳地・遠隔地を含む地域の上水道施設の整備を行うことにより、同地域への安定的な上水道サービスの提供を図り、もって同地域住民の生活環境の改善や気候変動への適応に寄与するものであり、インド政府の開発課題・開発政策並びに我が国及びJICAの協力方針・分析に合致する。また、SDGsのゴール3(健康な生活の確保、万人の福祉の促進)、ゴール6(万人の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理の確保)、ゴール13(気候変動とその影響への緊急の対処)にも資するものである。
さらに、2023年3月の岸田総理の訪印時には、両首脳は、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」としての両国関係を更に発展させることで一致するなど、両国の関係強化は着実に進んでいる中、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める世界最大の民主主義国であるインドの発展を支援することは、こうした二国間関係の更なる強化につながり、外交政策上の意義も高い。
(2)効率性
実施機関及び運営維持管理組織の職員能力強化・組織体制強化、住民啓発活動(戸別接続促進)等を通じて、本計画の効率的な実施を図る予定。
(3)有効性
本計画の実施により、事業完成2年後(2033年)には、以下のような成果が期待される。
- ア
- 定量的効果
基準値および目標値を、事業開始後に実施されるベースライン調査の結果に基づき、円借款で雇用されるコンサルタントの支援を受けつつ実施機関及びJICAにて協議して設定し、効果を測定する。 - イ
- 定性的効果
安定的な水供給、住民の健康状態と生活環境の改善、女性の社会参画の促進、気候変動への適応等。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
なお、本案件に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。