ODA(政府開発援助)

令和6年1月23日

評価年月日:令和5年10月19日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志

1 案件名

1-1 供与国名

 セネガル共和国(以下、「セネガル」という。)

1-2 案件名

 ジョアール・ファデュトゥにおける水産物付加価値向上のための改良型水揚場整備計画

1-3 目的・事業内容

 ンブール県ジョアール・ファデュトゥ市において、既存の水揚施設に対し、高度な衛生管理が可能な水揚施設を整備することにより、零細漁業者の漁獲物を付加価値の高い輸出向け水産物として安定的に流通させることを図り、もって零細漁業者、仲買人、小売業者等の水産業関係者の参画によるセネガル産水産物の輸出振興を通じて同国の格差是正・レジリエンス強化(安定的食料生産・供給能力の強化)に寄与するもの。
 供与限度額は11.18億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリーBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。

2 無償資金協力の必要性 

2-1 必要性

  • (1)セネガル(一人当たり国民総所得(GNI)1,640ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
  • (2)同国は、西アフリカ地域有数の水産国であり、水産セクターは同国の輸出総額の約12%(2021年、経済計画協力省)を占める重要なセクターである。このうち零細漁業は、年間総生産量が水産セクター全体の約76%(348,378トン)(2021年、漁業・海洋経済省水産局)を占め、金額では約1,394億FCFA(約279億円相当)(2021年、同省水産局)、全労働人口約500万人のうち約60万人が従事する重要な産業である。
  • (3)一方、水産関連の施設が十分に整備されていないこと等により、水産物の取扱いにおける鮮度・品質劣化が問題となっており、零細漁業者による漁獲物の価値が低下している。こうした状況を踏まえ、同国政府は国家開発計画である「セネガル新興計画(PSE、2015-2035)」及び水産政策「水産分野政策書簡(LPSDPA、2016-2023)」において、水産資源の持続的管理と水産物の付加価値向上を達成目標と位置付けている。さらに、PSEの「優先活動計画(2019-2023)」では、「水産物加工用の統合産業センター設立、インフラの近代化と改善、漁業バリューチェーン開発を通じた、漁業生産物の利用促進」が優先戦略に位置付けられている。
  • (4)対象サイトのジョアール水揚施設があるンブール県は、全国零細漁業生産量の約40%(139,351トン/年)(2021年、ンブール県水産支局)を担う同国で最も零細漁業が盛んな拠点である。輸出認証を受けた現在のジョアール水揚施設においては年間で80,469トンの国内外向け水産物を取り扱っており、そのうち約4,700トンが輸出されている(2021年、ンブール県水産支局)。一方、現在の施設は閉鎖型構造ではなく、雨風や鳥獣から保護されていないことや継続的な温度管理がされていないこと等、衛生・品質管理面の課題が多く、輸出認証が継続取得できない可能性が高いことから施設改善が喫緊の課題となっている。
  • (5)本計画は、同国の零細漁業者の漁獲物を付加価値の高い輸出向け水産物として安定的に流通させることを目的とするものであり、我が国が、対セネガル国別開発協力方針(2020年9月)の重点分野「格差是正・レジリエンス強化」で定めている、「持続可能な漁業振興のため、海洋資源の持続的な管理、バリューチェーンの強化に取り組む」との方針に合致する。また、SDGsゴール14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」にも貢献するものである。さらに、2022年のTICAD8において我が国が表明した「食料システム及びバリューチェーンの支援」及び「漁業分野におけるバリューチェーンの構築を含むブルーエコノミーを通じて協力的な方法で経済成長を加速」することを具体化するものである。
  • (6)セネガルは、安定した民政が行われている西アフリカの代表的な民主主義国家であり、アフリカ連合(AU)や西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)に積極的に関与し、地域の紛争終結に向けた仲介役を積極的に務めるなど、域内で中心的な役割を担っている。また、西アフリカ内陸国への玄関口として、流通、経済活動等の地域拠点となっており、日本企業の西アフリカへの進出ポイントとしても重要である。さらに、同国は、国際社会において基本的に我が国の立場を支持する友好国であり、同国の開発ニーズ及び我が国の支援方針に合致する本計画を実施することで、同国の持続的な発展に寄与するとともに、同国との更なる関係強化を図ることは重要である。

2-2 効率性

 セネガル政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。具体的には、付帯的施設の規模・規格検討において、「ODAコスト総合改善プログラム」の考え方に基づき無償資金協力としてよりインパクトの高い施設を優先し、家具、什器、一般備品などについては先方負担事項とすることによりコスト削減を図ったほか、安全上の配慮を行った上で可能な限り全体工期の短縮を図った。また、資機材は原則的に現地調達とし、一部は規格、仕上げ精度等の仕様及び価格比較によって本邦調達とすることで、調達コストの縮減を図った。

2-3 有効性

 本計画の実施により、計画実施前の基準値と事業完成3年後の2028年の目標値を比べると、主に以下のような効果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 高度な衛生管理がされた(注1)輸出向け水産物の年間取扱量が、0トンから4,722トン以上(注2)に増加する。
    • イ 高度な衛生管理が可能な水揚施設の利用登録者数が、0人から2,028人以上(注3)に増加する。
  • (2)定性的効果
    • ア 水揚浜において、国内向け水産物と輸出用水産物の水揚げ区画が明確に区分けされる(ゾーニングの徹底)ことにより、輸出用水産物の品質が改善する。
    • イ 整備された施設において、水産物取扱区画の衛生管理が改善する。
    • ウ 整備された施設が、EU及びその他の地域に向けた輸出用水産物を取り扱う施設としての衛生品質管理基準を満たすことにより、継続的して輸出認証が取得される。
    • エ 対象サイト周辺地域における水産物輸出関連産業が振興される。
  • (注1)EU向け輸出水揚施設としての基準を満たした施設で取り扱われていることを指す。
  • (注2)2012年から2021年までの輸出向け水産物の平均水揚量である4,722トン/年を維持することを想定したもの。既存施設は水産物取扱区画の衛生・品質管理面に問題があるため、基準値は0とする。
  • (注3)2021年時点の零細漁船(14メートル未満の登録漁船数)676隻に平均乗組員数(3人)を乗じることで算出したもの(14メートル以上の大型漁船は輸出対象魚種の漁獲を行っていない。)。また、実際の登録利用者数には仲買人なども含まれるが、現在は輸出用と国内用で登録が分けられていないため目標値には計上していない。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)セネガル政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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