ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和5年12月18日
評価年月日:令和5年12月12日
評価責任者:国別開発協力第一課長 鴨志田 尚昭
1 案件概要
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国(以下、「ベトナム」という。)
(2)案件名
ホーチミン市都市鉄道建設計画(ベンタイン-スオイティエン間(1号線))(第四期)
(3)目的・事業内容
本計画は、ベトナム最大の都市であるホーチミン市において、都市鉄道(約20キロメートル)及びその関連施設の整備を行うことにより、ホーチミン都市圏の交通渋滞及び大気汚染の緩和を図り、もって地域経済の発展及び都市環境の改善を通じた成長と競争力強化に寄与するもの。なお、今次借款は輪切り4期目として、事業完了までの資金需要に対応するもの。
- ア
- 主要事業内容
- (ア)土木工事(地下区間、高架区間の鉄道土木工事、車両基地工事)
- (イ)車輌調達、電気・通信・信号システム、開業後5年間のメンテナンス
- (ウ)コンサルティング・サービス
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件 412.237億円 年0.1% 40(10)年 日本タイド - (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA)
本計画は「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(2002年4月公示)に掲げる鉄道セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当するため、カテゴリーAに該当する。また、EIA報告書は、2006年11月にベトナム天然資源環境省により承認済み。 - イ
- 用地取得及び住民移転
約31ヘクタールの用地取得、140世帯の非自発的住民移転を伴ったが、ベトナム国内法及び住民移転計画に沿って用地取得が進められ、2015年3月に用地取得及び住民移転が完了している。 - ウ
- 外部要因リスク
特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ホーチミン市の人口は2000年の約530万人から2021年には約920万人に増加しており、バイク及び自動車の登録台数も大幅な増加が見られ、市内道路交通量の増加が著しい。この結果、交通渋滞の深刻化、交通事故の増大、大気汚染の悪化、都市サービスへのアクセス困難等の問題が生じており、効率的な経済社会活動を阻害する要因となっている。既存の公共交通(バス等)の輸送能力及び道路網の大幅な拡充が困難な状況から、同市では都市鉄道を軸とした新たな大量輸送公共交通システムの整備が計画されている。
同市の都市交通マスタープランにおいては、現在8路線の都市鉄道を建設する事業計画が掲げられており、本計画の対象である1号線に最も高い優先度が付されている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
2017年12月に策定された対ベトナム国別援助方針においては、「成長と競争力強化」を重点分野に掲げており、「経済成長に伴い増大している経済インフラ需要に対応するため、幹線交通及び都市交通網の整備」に係る支援を重点的に取り組むとしている。都市交通網の整備を目的とする本計画は右方針に整合している。また、同国の経済・社会発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。さらに、本計画は都市鉄道の建設を通じて増加する輸送需要への対応を図り、ホーチミン市の交通渋滞緩和及び温室効果ガス排出抑制に資するものであり、SDGsゴール9(強靭(レジリエント)なインフラの構築)、ゴール11(包摂的、安全、強靭で持続可能な都市と人間居住の構築)及びゴール13(気候変動対策)にも貢献するものである。
(2)効率性
我が国は「ホーチミン市都市鉄道規制機関及び運営会社能力強化プロジェクト(有償勘定技術支援)」を2017年度に開始し、2015年に設立されたホーチミン市都市鉄道1号線の運営会社の安定的かつ継続的に質の高い都市鉄道運営に係る体制構築を支援している。また、「鉄道学校における都市鉄道研修能力強化プロジェクト(有償勘定技術支援)」を2021 年度に開始し、鉄道訓練学校を対象に、継続的かつ質の高い都市鉄道人材の養成を支援している。
本件の実施については、これらの技術協力案件との相乗効果が期待される。
(3)有効性
本計画によって、事業完成2年後には、都市鉄道の1日当たりの乗客輸送量が約3,400,000(人・km)となることが見込まれる等、交通需要の高まりへ対応するとともに、ホーチミン都市圏の交通渋滞及び大気汚染の緩和を図り、もって地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与する。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
- (1)ベトナム国別評価報告書(2015年度・第三者評価)、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン、その他国際協力機構から提出された資料。
- (2)案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
- (3)なお、本案件に関する事後評価は、実施機関である国際協力機構が行う予定。