ODA(政府開発援助)

令和8年6月23日

評価年月日:令和8年4月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 加藤 要太

1 案件概要

供与国名

 カンボジア王国(Kingdom of Cambodia

案件名、実施機関、供与限度額、供与条件

案件名 実施機関 供与限度額 金利(注) 償還(うち据置)期間 調達条件
プノンペン南西部灌漑・排水施設改修・改良計画(第三期)
Southwest Phnom Penh Irrigation and Drainage Rehabilitation and Improvement Project (III)
水資源気象省
Ministry of Water Resources and Meteorology: MOWRAM
242.37億円 TORF+35bp 25(7)年 アンタイド
  • (注)一般条件(変動・オプション1)を適用。
  • (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.80%とし、償還期間及び据置期間並びに調達条件は本体部分と同様とする。

目的・事業概要

 本計画は、プノンペン南西部の農村部貧困地域において灌漑排水施設等を改修・整備することにより、対象地域の農業生産性の向上並びに洪水被害の軽減を図り、もって同地域の農民の生計向上に寄与するもの。洪水被害低減のための設計変更による追加需要に対応するもの。

2 実施意義/資金協力案件の評価

(1)外交的意義

 カンボジアはメコン地域の中心に位置し、地域の連結性と域内の格差是正の鍵を握る重要な国であり、我が国は、同国内戦後の和平・復興・開発への貢献や活発な要人往来、国際場裡での協力等を通じ、同国との関係を強化してきた。近年は、二国間の経済関係も緊密化しており、我が国から同国への民間投資が増大している。またカンボジアは、我が国が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」についてASEAN諸国の中で最初に支持を表明しているほか、2022年11月には、その翌年の外交関係樹立70周年の機会に両国関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げすることで合意し、両国関係を更に飛躍させていくことで一致している。
 本計画は同国における排水施設を整備・改修することにより、雨水の排水機能の改善及び浸水被害の軽減を図るものであり、「自由で開かれたインド太平洋」のための新たなプランにおける柱の一つである「インド太平洋流の課題対処」の取組に位置付けられる。
 また、プノンペン農村部貧困地域において灌漑排水施設等を改修・整備することにより、対象区域の農業生産性の向上を図ることでSDGsゴール1「貧困をなくそう」及びゴール2「飢餓をゼロに」に貢献すると考えられることから、本事業を支援する必要性は高い。

(2)開発ニーズ/有効性

ア 開発ニーズ

 カンボジアでは、農業はGDPの16.6%を占め(世界銀行、2024年)、かつ労働人口の35%が農業に従事しており(世界銀行、2022年)、農業は地方農村部の主要生計手段となっている。カンボジアでは元来、天水を利用した耕作が主流であり、生産性向上が課題となっている。
 2024年7月に本計画で整備する幹線水路が引水するプレクトノット川周辺及び下流のプノンペン都近郊で大規模な洪水が発生したことを始め、近年の気候変動に伴う同地域での洪水被害の激甚化、並びにそれが今後も継続するとの想定から、カンボジアでは洪水対策が喫緊の課題となっている。

イ 有効性
  1. 定量的評価
    指標名 基準値(2011年実績値) 目標値(2035年)
    【事業完成5年後】
    灌漑面積(ヘクタール) 840 4,060
    米の作付面積(ヘクタール) 4,270 6,885
    米の単収(トン/ヘクタール) 2.2 3.7~3.8
    ローレンチェリー地区北幹線水路の流下能力の向上(立方メートル/秒) 15.6 100.0
    洪水被害面積(ヘクタール/回) 2,639(2024年の実績値) 2,516
  2. 定性的評価
     灌漑用水供給の安定化、農民の生計向上、洪水発生時の被害軽減

(3)我が国の基本政策との関係等

 我が国は、対カンボジア王国国別開発協力方針(2024年4月)において「持続可能で公平な成長の実現」を重点分野の一つとして位置付け、気候変動対策や防災対策等の支援を行うと同時にフードバリューチェーン構築を見据えた農業農村振興や地方インフラの整備等を支援するとしており、本計画は当該方針に合致する。また、2024年年7月に発表した「3つの新たな協力アプローチ」においても、社会基盤整備の面で協力を行っていくとしている。2023年8月にフン・マネット新カンボジア政権が発表した開発戦略「第一次五角形戦略」においても、持続可能な社会・経済開発と気候変動への耐性強化を5つの目標のうちの1つとして掲げており、こうした先方政府が重要視する分野において支援を行うことは、両国の更なる関係強化に資するなど外交的意義が大きい。

3 環境社会配慮、外部要因リスク等留意すべき点

 本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2014年6月制定)(以下、「JICA環境社会配慮ガイドライン」という。)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。
 工事中は大気質、水質、廃棄物、騒音等について、同国国内の排出基準及び環境基準を満たすよう、重機の適切な管理、排水前処理、及び作業時間の制限等の対策がとられることにより、環境への望ましくない影響は最小限とされる予定。供用時は、適切な営農活動に係る支援やコンポストの導入、水利組合間でのチェック体制の導入等により水質汚染等の負の影響は想定されない。
 また本計画では、ローレンチェリー地区において16.88ヘクタールの用地取得と32世帯の非自発的住民移転、カンダルスタン=バティ地区において2.78ヘクタールの用地取得と非正規住民8世帯の非自発的住民移転を伴い、同国国内手続き及びJICA環境社会配慮ガイドラインに沿って作成された住民移転計画に沿って取得が進められる。被影響住民から事業に係る特段の反対意見は出ていない。
 工事中及び供用時はMOWRAM及び環境省が大気質、水質や営農活動等についてモニタリングを実施する。

4 事前評価作成に用いた資料、有識者の知見等

 要請書、カンボジア国別評価(2017年度)、ASEAN地域別評価(2024年度)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料等。

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