ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和8年6月2日
評価年月日:令和8年4月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 加藤 要太
1 案件名
1-1 供与国名
カンボジア王国(以下、「カンボジア」という。)
1-2 案件名
コンポンチャム州における教員養成大学設立計画
1-3 目的・事業内容
コンポンチャム州教員養成校の4年制教員養成大学への格上げに必要な教育施設・機材整備を行うもの。
供与限度額は11.89億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- カンボジア(一人当たり国民総所得(GNI)2,520ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
- インドシナ半島のメコン川流域に位置するカンボジアはタイ、ラオス、ベトナムと国境を接し、内陸諸国と沿岸国をつなぐ交通の要衝として、地域の連結性向上の観点から重要な役割を果たしている。我が国は、カンボジア内戦後の和平・復興・開発への貢献や活発な要人往来等を通じ、同国との関係を強化しており、2023年1月には、両国関係が「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされた。また、カンボジアは我が国が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)についてASEAN諸国の中でも最初に支持を表明するなど、地域・国際場裡の課題に関しても緊密に連携・協力してきている。
- 対カンボジア王国国別開発協力方針(2024年4月)では、重点分野「持続可能で公平な成長の実現」において基礎教育を含む教育の質向上やデジタル基盤の整備の重要性が挙げられている。また、2024年7月の日・カンボジア外相会談では、上川外務大臣(当時)から、「新たな協力アプローチ」として、デジタル分野の支援を拡充する考えを表明している。本件にて、コンポンチャム州の教員養成校を4年制教員養成大学に格上げするためSTEM(科学、技術、工学、数学を分野横断的に学ぶ教育)教室棟などを整備することで、教員のデジタルリテラシーの向上、将来的なデジタル人材の裾野拡大に貢献するため、「新たな協力アプローチ」における「発展段階に応じた社会基盤整備」に合致するものである。また、2023年9月に発表した「日ASEAN包括的連結性イニシアティブ」では「人・知の連結性」強化のため、ASEAN諸国の国づくりを担う人材育成を推進する旨表明しており、本案件は同表明を具体化するものである。
- カンボジア政府は、2023年8月策定の「第一次五角形戦略」において、人的資本開発を重点分野に位置づけ、高度人材の育成を通じた継続的な経済発展を重視している。他方、カンボジアでは都市部と農村部、特に山間部や少数民族地域との間で教育へのアクセスに大きな差があり、教育支援はカンボジアの持続的な発展と子どもたちの基本的な人権保障の観点からも重要な課題となっている。整備予定のコンポンチャム教員養成校は、へき地の多い同国東北部の小・中学校の教員養成を中心的に担う好立地にある。また、同校と他の教員養成大学間を遠隔で接続するサテライト講義や遠隔講義を通じて、先行する教員養成大学の成果を展開し大学化するモデルケースとなることで、4年生教員養成課程をカンボジア全土へ展開するための足掛かりとなることが期待される。
- 既存の教員養成大学2校で確立してきた4年制教員養成課程は、「子どもの学びを中心に据えた授業研究」を組み入れ、日本式のアプローチの強みとしてカンボジア政府から高い評価を得ている。同教員養成課程の全国化を通じて、日本式のアプローチ及び我が国の協力成果を全国の教員養成大学学生及び小中学校の教員、生徒・児童に拡大させることで日本のプレゼンスの向上につながることからも、本計画を実施する必要性は高い。また、教員養成大学の学習環境の整備により、全国における質の高い教員養成のための基盤構築を図り、もって基礎教育の質向上に資するものであり、SDGsゴール4(質の高い教育)に貢献する。
2-2 効率性
一般講義室や、教職員用の管理諸室、図書室、寮等、現キャンパスの既存施設で充足できるものについては使用を継続し、本プロジェクトの計画対象から除外した。本事業で新設する施設は、基本的に現地で調達できる建設資機材を用いて建設することのできる仕様とした。
要請機材については、講義や実習における必要性の観点から優先度を設定するとともに、選定基準(上位計画やカリキュラムとの整合性、不足により支障をきたしている実習・実験機材、等)に基づいて機材の品目の絞り込みを行った。機材数についても、機材の用途(教員による講義および演示、グループ実習、個人実習)や設置諸室の規模に照らして算出・精査している。
2-3 有効性
本計画の実施により、2024年の実績値を基準値として、事業完成4年後の2032年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。
- 定量的効果
コンポンチャム教員養成大学における教員資格向上プログラムの初等・前期中等教育教員養成課程学生数が0人から1,400人に増加する。 - 定性的効果
教育実践の高度化のための環境整備により、コンポンチャム州での教員資格向上プログラムの質が向上する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- カンボジア政府からの要請書
- JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- カンボジア国別評価(2017年度)、ASEAN地域別評価(2024年度)
