ODA(政府開発援助)

令和7年2月7日

評価年月日:令和4年10月18日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一

1 案件名

1-1 供与国名

 モロッコ王国(以下「モロッコ」という。)

1-2 案件名

 スイラケディマ新世代漁港整備計画

1-3 目的・事業内容

 モロッコ中央部のスイラケディマ零細漁港において、施設及び機材の拡充を行うことにより、同港の鮮魚取扱能力及び漁船収容能力の向上並びに既存の漁港機能に観光連携機能を付加する多機能化を図り、もって同港及びその周辺の経済活動の強化を通じた、同国の経済競争力の強化に寄与するもの。
 供与限度額は20.03億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月制定)に掲げる港湾セクターのうち大規模なものに該当せず、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)モロッコ(一人当たり国民総所得(GNI)3,350ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類される。
  • (2)同国は、3,500キロメートルにわたる海岸線を有しており、水産セクターはGDPの2.5%を占め、間接雇用も含めて66万人の雇用(労働人口の5.7%)を生む重要な産業である。漁業生産量は、2019年は約146万トン(アフリカ第1位)であり、その94%は沿岸を中心とする零細漁業によるものである。全漁民数約12万人のうち、47%は零細漁業に従事している。
  • (3)現在、同国には大・中規模漁港が22か所、防波堤、岸壁、斜路などの外郭施設が十分に整備されていない小規模な零細漁港(VDP:Villages de Pêches)が約40か所あり、零細漁民は主にVDPを中心に操業しているが、VDPでは漁港内の混雑、水揚げ作業の機械化の遅れ、不十分な衛生・維持管理、水産物の品質劣化による価値の低下等が課題となっている。本計画の対象となるスイラケディマ零細漁港は、1998年に我が国の無償資金協力「スイラケディマ漁村開発計画」により建設されたVDPであり、その活用状況は良好であるものの、建設当時に想定していた同港の漁船数150隻に対し、現在は約380隻まで増加し、漁港内船置場に収納できずに沖止め・通路保管されている漁船が105隻に上るなど、施設が飽和状態にあり、安全な航行や施設の適切な利用に支障をきたしている。また、同港は、海外で需要の高いヒメジ・シタビラメ・マダコなどの高単価の漁獲物の取扱いが多いものの、卸売施設の空調・冷蔵設備が未整備であり、さらに、漁港内動線の錯綜により鮮魚の汚染リスクが高いことから、適切な品質管理が難しく、海外輸出による漁業者の増収につながっていない。加えて、同港は観光地に近く、国内外の旅行客が増加しているが、安全性等の観点から観光ニーズの取り込みが十分できていない。
  • (4)同国政府は、2009年に水産セクターの長期開発計画Plan Halieutis(漁業計画)を策定し、ア 資源の持続的活用、イ 水産物の品質向上及びウ 付加価値向上による競争力強化の三つの柱を掲げており、イ において水揚げ施設の整備や卸売市場の機能強化を優先事項として位置づけている。
  • (5)我が国は、対モロッコ国別開発協力方針(2020年9月)における重点分野として「経済競争力の強化」を重点分野の一つとして定め、「農水産業の生産性・競争力の強化を推進する」としており、本計画は同方針に合致するとともに、SDGsゴール14「海の豊かさを守ろう」にも貢献するものである。
  • (6)同国は、統計上その一人当たり所得水準は高いが、本計画は、我が国がかつて整備した漁港の拡張・再整備を通じ、同港の鮮魚取扱能力の向上を図り、漁獲物の品質向上と漁獲物廃棄を削減するものであり、水産資源の持続的利用に貢献することが期待され(「地球規模課題への対応」)、また、我が国は、同国と漁業協定を締結し、同協定に基づき我が国のまぐろはえ縄漁船が入漁していること、さらに、大西洋沿岸アフリカ諸国漁業協力閣僚会議(COMHAFAT)の中心国である同国を通じ、西アフリカ諸国と我が国との協力を促進していること、加えて、同国は肥料原料であるリン酸アンモニウムの世界有数の原産国であり、原料調達国の多角化を図っている我が国にとって新たな調達先としての重要性を有していることから、本計画の実施を通じ、同国との二国間関係の強化を図る外交的意義は大きく(「外交的観点」)、無償資金協力として本計画の実施を支援する必要性及び妥当性は高い。

2-2 効率性

 建築資材価格の高止まりや海上輸送費の高騰、円安の影響等により事業費が上昇していることを踏まえ、モロッコ側と協議し、既存卸売市場の小売市場への再整備、漁具ロッカー・組合事務所/会議室新設、トイレ・シャワー棟新設、駐車場兼臨時船置場新設等については先方負担事項として整理するなど、コスト削減に努めた。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2020年の実測値を基準値とし、事業完成3年後の2028年の目標値と比較すると、主に以下のような効果が期待される。

  • (1)高度に衛生管理された区画を通じて水揚げされる漁獲物の量が、現状の0トンから年間700トン以上に増加する。
  • (2)漁港内船置場に収納できずに沖止め・通路保管されている漁船数が、現状の105隻から5隻以下に減少する。
  • (3)漁港施設内で行われる経済活動の数が、現状の0事業者から4事業者以上に増加する(注:現行では漁港施設内での経済活動は許可されていない。目標値は観光用テラス及び小売市場棟内に入居する事業者の総数)。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)モロッコ政府からの要請書
  • (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)モロッコ国別評価報告書(2015年度・第三者評価)
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