ODA(政府開発援助)

令和3年3月30日

評価年月日:令和3年3月23日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里

1 案件概要

(1)供与国名

 インド

(2)案件名

 ベンガルール・メトロ建設計画(フェーズ2)

(3)目的・事業内容

 インド南部のベンガルール都市圏において、総延長約80キロメートルの大量高速輸送システム(3路線:2A号線、2B号線、6号線の新設)を建設することにより、増加する輸送需要への対応を図り、もって交通渋滞の緩和と自動車公害減少を通じて、産業競争力の強化に寄与するものである。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)地下鉄道(約14キロメートル)、地上鉄道(約2キロメートル)、高架鉄道(約64キロメートル)、及び地下駅・地上駅・高架駅(計約48駅)の土木工事
    • (イ)軌道・分岐器、換気及び空調設備等の資機材調達
    • (ウ)駅、車両保守基地、変電所等の電気設備工事
    • (エ)自動料金収受システム
    • (オ)信号・列車制御システム
    • (カ)通信システム
    • (キ)車両調達(318両)
    • (ク)車両保守基地工事(3か所)
    • (ケ)コンサルティング・サービス(設計レビュー、入札補助・施工監理等)
      円借款対象部分は、上記のうち、(オ)、(キ)及び(ケ)。インド政府は、(ア)及び(ク)については実施機関が他機関から資金を調達し、(イ)、(ウ)、(エ)及び(カ)については実施機関の自己資金により賄う計画である。なお、(ケ)の内容は主として円借款対象部分に限定される。
  • イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
520.36億円 1.15% 30(10)年 アンタイド

 (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる鉄道セクターに該当するため、カテゴリAに該当する。なお、本計画に係る環境影響評価(EIA)報告書は、インド国内法上作成が義務付けられていないものの、2A号線及び2B号線は2020年9月に、6号線は2017年8月に作成済みである。
用地取得及び住民移転
 本計画では、約63ヘクタールの用地取得、458世帯2,131人の非自発的住民移転を伴うが、用地取得は、2020年12月時点で全線において全対象世帯からの取得合意を得ている。
外部要因リスク
 新型コロナウイルス感染症拡大の影響が生じうる可能性があることから、その対策として、実施機関が案件形成時及び案件実施時に取り組むべき全36項目の対策リストに合意済みである。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは近年急速な都市化が進み、自動車登録台数急増に伴う道路交通需要が拡大する一方で、公共交通インフラの整備が進んでいない。特に、デリー、ムンバイ、コルカタ及びベンガルール等の大都市では、交通渋滞が深刻であり、経済損失及び大気汚染並びに騒音等の自動車公害による健康被害が深刻化している。こうした中、同国政府は、近年の経済成長に伴う輸送需要に対応することに加え、これらの課題に対応するため、安全性・エネルギー効率・社会環境保全等の観点から優れている公共交通システムの整備を重視している。
 カルナタカ州政府は、インドのシリコンバレーと呼ばれ、産業集積地としての発展を背景に経済成長を遂げているベンガルール都市圏において、公共交通システムの混雑緩和、大気汚染の緩和等を目指し、同州政府が策定した「ベンガルールマスタープラン2015」の下でメトロ整備計画を推進している。2017年には第一次計画が完工し、ベンガルール・メトロの開業に至っている。同州政府は、2020年に改定された「ベンガルールマスタープラン2031」においても引き続きメトロ整備計画を推進しており、本計画は、2027年までの完成を目指す第二次整備計画の一端を担う支援として位置付けられている。
我が国の基本政策との関係
 インドの人口の約3割が依然として貧困状態にあること、電力及び運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえ、2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては、今後の対インドODAの重点目標として、(a)連結性の強化、(b)産業競争力の強化及び(c)持続的で包摂的な成長への支援を掲げており、本計画は同方針に合致するものである。
 また、両国は「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の下で関係強化を着実に進めており、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは、こうした二国間関係の更なる強化にもつながり、外交上の意義が高い。

(2)効率性

 各公共交通機関が競合するのではなく、体系的な都市交通を構成するよう互いに補完し、公共交通機関全体として効率よく運営されること、また、財務的に自立した事業実施体制の確立が重要であることから、乗客数の目標値設定に当たっては、対象地域の交通量や住民の所得水準及び移動手段等を調査した上で、既存線の乗客数実績も考慮した推計をしており、より現実的な目標値を設定した上で、それをもとに事業規模を決定した。
 また、同実施機関は、運賃以外の収入についても、キオスク・銀行ATM・レストラン等のほか、ベンガルールの特性を活かし起業家等への駅の空きスペースの貸し出し、不動産開発等を中心に注力しており、財務体質の強化を図っている。

(3)有効性

 本計画の実施により、事業完成2年後(2029年)には、以下のような成果が期待される。

  • ア 定量的効果
    • (ア)新規に建設される2A号線における列車運行数:150本/日・一方向
    • (イ)新規に建設される2B号線における列車運行数:233本/日・一方向
    • (ウ)新規に建設される6号線における列車運行数:125本/日・一方向
    • (エ)新規に建設される2A号線における乗客輸送量:3,100,000人・キロメートル/日
    • (オ)新規に建設される2B号線における乗客輸送量:6,900,000人・キロメートル/日
    • (カ)新規に建設される6号線における乗客輸送量:4,700,000人・キロメートル/日
    • (キ)新規に建設される2A号線における女性専用車両数:1両(全6両編成中)
    • (ク)新規に建設される2B号線における女性専用車両数:1両(全6両編成中)
    • (ケ)新規に建設される6号線における女性専用車両数:1両(全6両編成中)
  • イ 定性的効果
    ベンガルール都市圏における交通渋滞の緩和、気候変動の緩和、大気汚染を原因とする健康被害の緩和、移動の定時性確保による利便性の向上、ベンガルール都市圏の経済発展及び女性専用車両の整備を通じた女性の社会進出促進に寄与する。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 インド政府からの要請書、インド国別評価報告書(第三者評価/2017年度)JICAガイドライン別ウィンドウで開く、その他JICAより提出された資料。
 本計画に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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