ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和3年3月30日
評価年月日 令和3年3月5日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里
1 案件名
1-1 供与国名
インド
1-2 案件名
アンダマン・ニコバル諸島における電力供給能力向上計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、南アンダマン島において、フェニックスベイ発電所敷地内の蓄電池及び関連設備を整備することにより、再生可能エネルギー由来電力の有効性と電力供給の安定化を図り、もって産業競争力の強化に寄与するもの。
供与限度額は、40.16億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり、既存の発電所敷地内に機材を設置するため、環境社会への影響はないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)インド(一人あたり国民総所得(GNI)2,130ドル(2019年))は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低・中所得国に分類されている。
- (2)同国は、国家電力政策(2017年)において再生可能エネルギーの導入を加速させる目標を設定している。さらに、島嶼部においても電力自給と化石燃料依存からの脱却の方針が打ち出されており、ベンガル湾内に位置するアンダマン・ニコバル諸島においても、ディーゼル発電所による電力供給から、太陽光発電設備やLNG火力発電設備の導入といった再生可能エネルギーを中心とした電力開発計画を進めている。
- (3)同諸島の経済活動の中心である南アンダマン島の電力系統は、2020年時点でディーゼル発電所及び太陽光発電所の発電設備と送配電設備で構成されているが、近年はディーゼル発電所施設・関連設備の老朽化による発電効率の低下及び故障が頻発し、電力需要のピーク時における停電の頻発等により、医療施設等の重要インフラの機能不全が生じている。
- (4)加えて、太陽光発電については、昼間の余剰電力を充電し、夜間のピーク時に放電するための設備・能力がないため、環境負荷の低い太陽光発電が系統全体で効果的に活用されていないほか、LNG火力発電等の主力電源の脱落事故や配電線事故による遮断が発生した際に対応可能なバックアップ体制が構築されていない。
- (5)以上の観点から、同諸島における太陽光発電由来のクリーンな電力を最大限活用するために必要な蓄電池及び関連設備を整備し、再生可能エネルギー由来電力の有効性と電力供給の安定化に資する本計画の実施は、開発協力としての必要性が高い。
- (6)また、対インド国別援助方針(2016年3月)において「産業競争力の強化」として電力セクターを始めとするインフラ整備、「持続的で包括的な成長への支援」として貧困削減や気候変動対策への支援が定められており、本計画は同方針に合致する。さらに、日印両首脳は、気候変動への対応や再生可能エネルギーに関する協力を強化することで一致しており、本計画の実施は、二国間関係強化及び国際社会共通の課題への取組の観点から、外交的意義が大きい。
2-2 効率性
アンダマン・ニコバル諸島では、太陽光発電と火力発電を遠隔制御し、系統の安定性を維持しながら太陽光の導入を最大化させることを目的としたエネルギー管理センター設置を進めており、本計画も同センターにて導入される系統安定化システムの下、安定的な電力供給に貢献することができる。
2-3 有効性
本計画の実施により、主に以下のような成果が期待される。
- (1)最大出力30メガワット、最大容量14.25メガワット時(共に2026年時点)の蓄電が可能となり、電力供給の安定化に資する。
- (2)昼間に充電した太陽光発電由来の電力について、夜間等の必要なタイミングで放電する能力を年間あたり2,971メガワット時(2026年時点)まで高める。
- (3)系統周波数を、49.08~51.83ヘルツ(2020年時点)から50±0.5ヘルツ(2026年時点)にまで安定させる。
- (4)温室効果ガスである二酸化炭素の排出量について、年間あたり2,683トン(2026年時点、2020年比)削減することができ、気候変動対策の促進に資する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)インド政府からの要請書
- (2)インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)
- (3)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)