ODA(政府開発援助)

平成30年6月14日

評価年月日:平成30年4月19日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件名

1-1 供与国名

フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)

1-2 案件名

カガヤン・デ・オロ川流域洪水予警報システム改善計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,フィリピン北部ミンダナオ地域のカガヤン・デ・オロ川流域において,洪水予警報システムを改善することにより,同川流域における洪水被害の軽減を図り,もって同地域の脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定に寄与する。供与限度額は,12.78億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)環境社会配慮:特になし
  • (2)外部要因リスク:事業対象地域は,外務省海外安全ホームページの危険情報1から2に該当する地域であり,当該地域ではイスラム過激派及び共産主義過激派及び共産主義過激派の活動も確認されている。資金協力関係者(邦人)については,実施設計にて事業計画のレビューを行うとともに,どうしても渡航が必要な際には,JICAによる関係機関(外務省,日本大使館)との事前の相談結果を踏まえつつ,各社が施主との間で必要な安全対策を講じて業務に従事する。また,事業実施機関や施主等との情報収集・連絡協議態勢の構築を行う。資金協力事業関係者(邦人以外)については,本体事業者は必要な安全情報の提供を行う。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)フィリピンでは,2005年からの10年間において,自然災害によって約2万人が死亡・行方不明,約7,500万人が被災,1,829億ペソ(約38.9億米ドル)の経済損失が生じるなど,甚大な自然災害被害が同国の社会・経済に致命的な影響をもたらしている。このうち,被災人口の70%は台風・モンスーンによる降雨・洪水によるもので,風水害が主要な災害となっている。フィリピン政府は災害対策を重要課題として位置付けており,「フィリピン開発計画2017-2022」においては,災害による脆弱性の克服を目標の1つとしている。
  • (2)北部ミンダナオ地域のカガヤン・デ・オロ川流域は,フィリピン国内の18主要流域の一つに指定されており,地域の中心都市であるカガヤン・デ・オロ市は人口約60万人を抱える。同流域においては,本格的な治水対策計画,治水事業は実施されてこなかった。そのような中,2009年以降,立て続けに台風による洪水被害に見舞われ,特に2011年の熱帯暴風雨センドンは,近隣地域も含め,被災者約117万人,死者約1,250人という甚大な被害をもたらした。近年のこれら連続した台風被害に鑑み,同流域での洪水対策計画の策定が喫緊の優先課題となったため,フィリピン政府は,我が国の支援を受け,洪水対策マスタープランを策定した。同マスタープランでは,築堤や遊水地建設等のハード面での対策に加え,ソフト面での対策の優先プロジェクトの一つとして,洪水予警報システムの整備が提案されている。
  • (3)本計画により,主要流域の中でもフィリピン政府として優先度の高い同流域のカガヤン・デ・オロ川流域洪水予警報センターにおいて,洪水予警報システムが構築されることにより,同流域における統合的な洪水リスク管理能力が向上し,同流域における流域住民の人命,暮らし,経済資産の保護が図られ,もって同地域の脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定に寄与する。これらは,我が国の対フィリピン国別援助方針(2012年4月)の「脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定」に合致する。
  • (4)本計画は,2015年3月の国連防災世界会議で我が国が発表した「仙台防災協力イニシアティブ」において自国の知見と技術を活かした国際貢献の実現に資するとともに,2017年1月の日フィリピン首脳会談の場で安倍総理大臣が発表した,フィリピンに対するODA及び民間投資を含めた今後5年間で1兆円規模の支援の一環でもある。また,SDGsゴール11「包摂的,安全,強靭な都市及び人間居住の構築」及び13「気候変動とその影響への緊急の対処」の実現にも貢献する。

2-2 効率性

  • (1)本計画対象地域においては,有償資金協力「洪水リスク管理計画(カガヤン・デ・オロ川)」(2015年3月E/N署名)を実施中である。同計画によるハード面での対策(堤防建設,橋梁改良,避難道路嵩上げ等)と,本計画によるソフト面での対策(洪水予警報システム)を組み合わせることにより,当該地域の統合的な洪水リスク管理能力の一層の向上が期待される。
  • (2)洪水予警報システムの運営を行う洪水予警報センターの運営体制強化及び本計画の実施機関であるフィリピン気象天文庁本部のデータ管理・洪水予警報の能力強化等を企図したJICA技術協力「洪水予警報の統合データ管理能力強化プロジェクト」(2016年7月~2019年6月)にて設定した警報基準の活用等の相乗効果が期待される。

2-3 有効性

  • (1)2023年(事業完成3年後)において,雨量観測メッシュサイズが2017年の138平方キロメートルから0.022平方キロメートルと水文観測密度が高くなり,内水氾濫の予測精度が向上する。
  • (2)専用通信回線を用いたシステムが構築されることにより,2023年(事業完成3年後)において,水位・雨量観測データの欠測率が2017年の84.2%から5%以内に向上し,水文気象観測データの送受信が安定する。
  • (3)適切な洪水予警報が発出されることにより,洪水発生時において,流域住民の生命・経済資産の被害軽減につながる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)フィリピン政府からの要請書
  • (2)有償資金協力「洪水リスク管理計画(カガヤン・デ・オロ川)」
  • (3)技術協力「洪水予警報の統合データ管理能力強化プロジェクト」
  • (4)フィリピン国別評価報告書(2010年度)
ODA(政府開発援助)
ODAとは?
広報・イベント
国別・地域別の取組
SDGs・分野別の取組
ODAの政策を知りたい
ODA関連資料
皆様の御意見
政策評価法に基づく事前・事後評価へ戻る