ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和8年10月9日
評価年月日:令和8年3月23日
評価責任者:国別開発協力第二課 廣瀬 愛子
1 案件名
1-1 供与国名
ネパール
1-2 案件名
トリブバン国際空港における航空交通管制施設整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、首都カトマンズ市にあるトリブバン国際空港(以下、「TIA」とする)において、管制塔・航空交通管制センターの建替え及びATM(Air Traffic Management)システム等を整備することにより、同空港における航空交通管制サービスの質の向上を図り、もってネパールの航空安全の確保・向上に資する運輸交通インフラの発展に寄与する。
供与限度額は28.53億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本事業は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)上、環境への望ましくない影響は最小限であると判断されるため、カテゴリCに分類する。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- ネパール(一人あたり国民総所得(GNI)1,480ドル(2024年))は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- 同国は、インドと中国と国境を接し、地政学上重要な位置にある。同国の安定と繁栄及び同国における民主主義の定着は、我が国にとって政治的・経済的に重要な南西アジア地域全体の安定を確保する上で重要である。また、インドを中心に南西アジアが将来の世界経済の中心の一つとなることが予測される中、同国に対する支援を行う必要性は高い。特に、内陸国であるネパールにとって、空路は経済成長に重要な移動・流通手段となっており、同国の航空整備の意義は大きいが、その中でもTIAは全ての国際定期便及び各地方都市を結ぶ主要国内線が運航する同国の最重要ハブ空港かつ最大の国際空港である。
- 一方、TIAは周囲が高い山に囲まれているため、離着陸が非常に難しい空港であり、TIA及び近隣の空域では過去に複数の事故が発生している。これを背景に、我が国は、1990年代半ば以降、TIAの飛行中の航空機の監視や正確な滑走路進入に係る同空港の安全を確保するため、機材供与や管制官の能力向上等に関する支援を長年実施してきた。その結果、航空機の安全運航に係る状況は改善し、TIAを運営するネパール民間航空庁の管制能力が向上した。これらの一連の協力は、国際空港の能力向上のための協力の実現となっており、ネパール政府からも高く評価される等、空港整備は我が国のプレゼンスが高い分野の一つである。
- 近年の同国の航空需要の高まりによるTIAの離着陸スケジュールの更なる過密化によって管制官の負荷が増大しており、TIAの安全性強化は喫緊の課題となっている。具体的には、航空便の増加に伴う累次の空港施設の拡張により、既存の管制室からでは視認できないエリアが存在すること、運用室や機械室等も狭く航空需要の増加に見合った十分な人員や機材を収容できないこと、航空管制システム機器の老朽化に伴い機能が頻繁に一時停止すること等、管制業務の効率性や安全性の確保に支障が生じている。かかる状況下、同国政府は第16次5か年計画(2024年度~2028年度)にて航空輸送の安全性、定時性及び利便性の向上を目標の一つとしている。
- 対ネパール国別開発協力方針(2021年9月)では、重点分野「経済成長及び貧困削減」の中で交通インフラの整備が掲げられている。さらに、「『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』のための新たなプラン」の4つの柱のうち、「多層的な連結性」に位置付けられ、インドを含む南アジアの各国との連結性強化に資する他、「『海』から『空』へ拡がる安全保障・安全利用の取組」にも位置付けられ、ネパール国内の空の状況把握の能力向上にも資するものであり、本事業はこれらの方針に合致する。以上本案件は、ネパールの開発を後押しするとともに、これまでの日本の協力による開発効果の持続的な発現を確保し、ビジビリティの高い首都の空港に関する協力を一貫して継続することで我が国のプレゼンスを確保するものであり、実施の意義・必要性は大きい。また、TIAの管制塔・航空交通管制センターの建替え及びATMシステム等の整備を通じて、航空交通管制サービスの質を向上させることで航空安全の確保・向上に資するものであり、SDGsのゴール9「強靭なインフラ整備」に貢献する。
2-2 効率性
- 協力対象となる構造物について、現地調査等で検討を行った結果、要請のあった構造物及び機材全てを対象とするのではなく、先方政府にて対処・負担可能な部分は先方政府負担と整理し、支援の効率化を図っている。
- 現在実施中の技術協力プロジェクト「トリブバン国際空港における飛行処理能力強化のための航空管制業務改善プロジェクト」(2023年~2026年)によりTIAにおける飛行処理能力の拡大に必要なネパール民間航空庁の能力の向上を図っており、本事業の航空管制業務の質向上、監視力向上による安全性確保との相乗効果を図る。
2-3 有効性
本事業の実施により、2025年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2032年の目標値と比較すると、主に以下の効果が期待される。
- 定量的効果
- 管制塔から視認できる離陸時の航空機主要動線(注)の割合が、51%から100%に増加する。
- 管制塔から視認できる滑走路・誘導路面積の割合が、93%から100%に増加する。
- 航空管制システムの単位月当たり停止回数が、15回から1回以下に改善される。 (注)離陸時に航空機がエプロンから滑走路に進入するまでの誘導路の主要区間のこと。
- 定性的効果
- 空港内の航空機運航の安全性が向上する。
- 管制官の勤務環境が改善される。
- 航空管制システムの信頼性向上により、航空機運航の遅延が抑制される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- ネパール政府からの要請書
- ネパール国別評価報告書(令和6年度・第三者評価)
- JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
