ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和8年7月15日
評価責任者:国別開発協力第一課長 加藤 要太
1 案件概要
供与国名
モンゴル国(Mongolia)
案件名、実施機関、供与限度額、供与条件
| 案件名 | 実施機関 | 供与限度額 | 金利(注) | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| チンギスハーン国際空港拡張計画 (Chinggis Khaan International Airport Expansion Project) |
道路・運輸省(Ministry of Road and Transport) 民間航空庁(Civil Aviation Authority of Mongolia) フシギーンフンディー公社(Khushigiin Khundii Airport State Owned LLC) | 1,582.84億円 | 1.10% | 40(10)年 | 日本タイド |
- (注)STEPを適用。
- (注)コンサルティング・サービス部分も本体部分と同じ。
目的・事業概要
本計画は、首都ウランバートル近郊に位置するモンゴル国唯一の国際空港の施設拡張(新旅客ターミナルビル建設等)により、航空旅客及び貨物輸送の将来的な需要増加に対応することで空港の混雑緩和及び更なる利便性の向上を図り、もって同国の経済発展に寄与することを目的とする。
2 資金協力案件の評価
(1)外交的意義
- 中国とロシアに挟まれた内陸国という地政学的特性をもつモンゴルが、民主主義国家として自立的かつ安定的に成長・発展していくことは、地域の安定と繁栄に資するのみならず、我が国との関係発展にとっても重要である。モンゴルは隣国である中国及びロシアとのバランスの取れた外交関係を展開しながら、両隣国に過度に依存することなく、日本を含む「第三の隣国」との関係を発展させることを外交の基本方針としている。
- 我が国は、2023年3月に岸田総理(当時)が発表した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のための新たなプラン」で「多層的な連結性」を掲げている。本計画は、内陸国であるモンゴルにとって、隣国である中国及びロシア以外の国との、空路を通じた連結性向上に資するものであり、本計画を実施する外交的意義は高い。
(2)開発ニーズ/有効性
ア 開発ニーズ
モンゴル国のチンギスハーン国際空港(以下、「新空港」)は、1957年に建設された旧チンギスハーン国際空港(現ボヤント・オハー空港)の老朽化に加え、地理的要因による離発着の難しさに起因する遅延・欠航の頻発を受け、日本の有償資金協力(円借款)を活用して建設され、2021年7月に開港した。新空港の運営は、モンゴル政府とのコンセッション契約により、日本企業4社とモンゴル政府の合弁企業が担っており、新空港は日本・モンゴル二国間協力の象徴となっている。
他方、新空港の旅客数・貨物量は、2022年以降、コロナ禍以前の水準を上回る勢いで拡大傾向にあり、計画段階では2019年に165万人と予想されていた旅客数は、開港2年目である2023年にして165万人を越え、2025年には245万人に達している。さらに同国政府は2023年~2028年を「モンゴル訪問の年」として位置づけ、査証免除国や就航地の拡大等、積極的な観光誘致策を実施しており、今後更なる観光需要の増加や旅行産業の伸長が見込まれ、2039年には旅客数が520万人に達すると予測されている(国際協力機構(JICA)、2026年)。
また、モンゴル政府は航空輸送の自由化を推進しており、新空港で取り扱う貨物量は、2025年10月時点では前年同月比2.7倍に上昇(NUBIA、2025年)、2039年には20,225トンになると予測されている。取扱品目の中でも、特に、中東および中央アジア諸国向けのハラル肉の輸出産業は、鉱物資源に過度に依存する経済構造からの脱却を目指す同国において、有望な国家戦略産業に位置付けられており、旅客のみならず、ハラル肉輸出をはじめとした貨物取扱需要に対応するため、早期の空港拡充が求められている。
イ 有効性
- 定量的評価
指標名 基準値
(2024年実績値)目標値(2035年)
【事業完成2年後】年間旅客数(万人)(うち国際線) 216(174) 436(384) 年間外国人旅客数(万人)(うち観光客数) 85(73) 173(121) 年間航空機発着回数(回)(うち国際線) 16,279(11,803) 29,885(24,799) 貨物取扱量(トン) 10,172 18,358 - 定性的評価
運航頻度の増加によるヒトやモノの移動の活性化、空港利用者の利便性・快適性・安全性の向上、日本・モンゴルの二国間関係の発展が期待できる。
(3)我が国の基本政策との関係等
我が国は、対モンゴル国国別開発協力方針(2017年12月)における重点分野として「環境と調和した均衡ある経済成長の実現」を定めており、本計画はこれら方針に合致する。また、SDGsゴール9「産業と技術革新の基盤を作ろう」及び11「住み続けられるまちづくりを」にも貢献することから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
3 環境社会配慮、外部要因リスク等留意すべき点
本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月公布)に掲げる空港セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。
工事中は大気質、水質、騒音等について、モンゴル国内の排出基準及び環境基準を満たすよう散水、浸出水処理及び作業時間の制限等の対策がとられ、事業開始後の騒音については、防音壁の設置等の対策がとられる予定である。また、実施中は道路・運輸省が大気質、水質、廃棄物、土壌汚染、騒音・振動、地盤沈下、悪臭、生物多様性、地形・地質、社会的弱者、労働環境、地域社会の衛生・安全・保安、既存の社会インフラや社会サービス、事故、越境の影響および気候変動、苦情等についてモニタリングする。
事業対象地域は国立公園等の影響を受けやすい地域またはその周辺に該当せず、自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。
本計画は既存敷地内で行われるため、用地取得や住民移転は生じない。同敷地内にある各種貨物事業運営者の施設は、リース契約に基づく交渉により明け渡される予定である。
なお、本計画係る環境影響評価(EIA)報告書は2027年12月に自然環境・気候変動省により承認が予定されている。
4 事前評価作成に用いた資料、有識者の知見等
モンゴル政府からの要請書、モンゴル国別評価報告書(2020年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料等。
