ODA(政府開発援助)

令和7年12月24日

評価年月日:令和7年11月17日
評価責任者:国別開発協力第二課 廣瀬 愛子

1 案件名

1-1 供与国名

 タジキスタン共和国(以下、「タジキスタン」という。)

1-2 案件名

 カスピ海ルート上のスピタメン税関における貨物検査機材整備計画

1-3 目的・事業内容

 本事業は、スピタメン地区の鉄道国境税関所において、鉄道用大型X線検査機材及び貨車の検査導線確保のための軌道を新たに整備、税関密輸取締の強化及び貨物検査能力の強化並びに迅速化を図り、もってタジキスタンと中央アジア地域全体の平和と安全な社会の実現に寄与するもの。供与限度額は13.41億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本事業は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境や社会への望ましくない影響は最小限あるいはほとんどないと考えられる。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)タジキスタン共和国(一人当たり国民総所得(GNI)2,150ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
  • (2)タジキスタンを含む中央アジア地域は、ユーラシアの中央に位置し、隣国アフガニスタンの自立と安定に向けて積極的な役割を果たす等、国際社会の取組において、同国の安定は不可欠である。また、現下の国際情勢を背景に、中央アジア・欧州間の物流ルートであるカスピ海ルートの重要性が高まっている。
  • (3)こうした中、アフガニスタン・中央アジアを結ぶ結節点であるタジキスタンの税関設備を整備することは、カスピ海ルートの安全性・利便性の向上、中央アジア地域の運輸・物流環境の改善に寄与する他、インド太平洋地域との連結性強化の可能性を開くものであり、タジキスタンの経済発展、安定に資する取組といえる。
  • (4)ユーラシア大陸の東西を結ぶ物流ルートは、従来、北回廊が主であるが、現下の国際情勢を背景に不安定化している。このため、カスピ海横断国際輸送ルート(以下、「カスピ海ルート」という。)への注目が高まっており、ロシア経由の中国-欧州間輸送量が2021年から2022年にかけて31.9%減少する一方、同期間のカスピ海ルートの貨物輸送量は2.5倍(欧州復興開発銀行(以下、「EBRD」という。)、2023年6月)に増加した。EBRDは、さらに2030年には、コンテナ貨物の輸送量だけでも現在の6倍に増加すると予測している。
  • (5)タジキスタンの北部ソグド州スピタメン地区の鉄道国境税関所(以下、「スピタメン税関」という。)は、中央アジア内陸最奥部からカスピ海ルートの南部ルートに接続する国際鉄道路線上に位置する。特に、鉄道が輸出入貨物輸送手段の77%(アジア開発銀行、2018年)を占めるタジキスタンにおいて、スピタメン国境がタジキスタン北部とウズベキスタン南部を繋ぐ物流の要衝となっている。スピタメン税関においては、1日あたり最大250~300両の貨物車両(列車1本平均45両編成)が通過し、外観検査を実施している。タジキスタン政府は隣接するアフガニスタンで生産された麻薬や、イスラム過激派に渡るリスクのある銃器が国境を通過することに対し警戒しており、国境における水際対策の強化が必要となっている。しかし、現状ではスピタメン税関には鉄道用の大型X線検査機材が未導入であることから、国境における密輸や輸出入禁止・規制貨物の取締が不十分な状況である。
  • (6)タジキスタン政府が掲げる「2030年までの国家開発戦略」において、国際貨物通過国としての物流能力強化が優先的な国策として掲げられ、さらに「税関発展の中期プログラム2020‐2024」では、税関当局の密輸摘発や関税逃れに関連する申告外物品の摘発能力向上の重要性が示されている。「カスピ海ルート上のスピタメン税関における貨物用検査機材整備計画」(以下、「本事業」という)は、スピタメン税関における大型X線検査機材及び貨車の検査導線確保のための軌道の整備により、輸出入が禁止または規制されている貨物に対する摘発率の向上、貨物検査能力の強化並びに迅速化を図り、もってタジキスタンと中央アジア地域全体の平和と安全な社会の実現に寄与するものであり、同国政府の開発計画において優先度の高い事業と位置付けられている。
  • (7)加えて、我が国は、対中央アジア外交の基本方針として、中央アジア諸国の、開かれ、安定し、持続可能な発展を後押しし、地域協力の触媒としての役割を果たしていくことを表明しているところ、2022年12月の「中央アジア+日本」対話第9回外相会合の共同声明では、海への出口を模索する運輸・物流の各分野での協力が重要であることで一致しており、本案件はこれを具体的にフォローアップするものである。また、我が国の国別開発協力方針(2018年)で援助重点分野として掲げている「安定化促進」には国境管理強化が含まれており、その方針にも合致する。さらに、SDGsゴール99産業と技術革新の基盤を作ろう)、ゴール16(平和と公正をすべての人に)、ゴール17(パートナーシップで目標を達成しよう)の実現にも貢献する。

2-2 効率性

 機材の据付工事費の積み上げ項目スリム化に伴う、増額抑制に努めた。

2-3 有効性

  • (1)定量的効果:基準値(2024年実績値) 目標値(2030年)【事業完了3年後】
    • ア スピタメン税関におけるX線検査対象となる輸出入貨物の非合法貨物摘発件数(件/年間) 1から3に増加する。
      スピタメン税関での貨車停車処理時間(分/1便) 180から120に減少する。
    • イ 年間取扱貨物量(千トン/年間) 3,238から4,209に増加する。
  • (2)定性的効果
    • ア 大型X線検査機材の導入により、麻薬・武器等のハイリスク貨物に対する摘発精度が向上する。これにより、麻薬・銃器・爆発物等の流入を防止する。
    • イ 輸出入貨物の不正申告の取締りが強化される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)タジキスタン政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)タジキスタン国別評価報告書(2011年度・第三者評価)
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