ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和4年5月26日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里
1 案件概要
(1)供与国名
ウズベキスタン共和国(以下「ウズベキスタン」という。)
(2)案件名
園芸作物バリューチェーン強化計画(フェーズ2)
(3)目的・事業内容
ウズベキスタンにおいて、参加金融機関を通じた園芸作物の生産・加工・流通に従事する農家や農業関連企業へのツーステップローンの供与、参加金融機関の能力向上支援及びエンドユーザーへの営農支援等により、園芸作物バリューチェーンの強化及び金融アクセスの改善を図り、もって輸出力強化、所得向上及び雇用促進を通じた農業分野の発展に寄与するもの。
- ア
- 主要事業内容
- ツーステップローン:園芸作物の生産・加工・流通に従事する農家や農業関連企業に対する中長期資金の供給
- コンサルティング・サービス(参加金融機関の能力向上支援、エンドユーザー等への営農支援等)
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 200百万ドル 米ドルTerm SOFR + 125bp 15(5)年 一般アンタイド - (注)コンサルティング・サービス部分に係る金利は、0.01%を適用。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA)
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)上、JICAの融資承諾前にサブ・プロジェクトを特 定することができず、かつそのようなサブ・プロジェクトが環境への影響を持つことが想定されるため、カテゴリFIに該当する。なお、サブ・プロジェクトにカテゴリA案件は含まれない。 - イ
- 社会環境面
特になし。 - ウ
- 外部要因リスク
特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ウズベキスタンの農業は、旧ソ連時代から綿花生産を中心に発展し、総就業人口の約27%、GDPの約27%、全輸出の約19%を占める主要産業である。他方、綿花に依存する農業は、国際市況価格の変動等に対し脆弱であることから、同国政府は近年、野菜や果樹といった園芸作物の生産への転換や、生産から加工、流通を含めた関連産業(園芸作物バリューチェーン)の強化等により、農作物の多様化や輸出力強化を目指している。なお、園芸作物生産は、年間を通じてそのバリューチェーンに関連する多岐に亘る雇用を生み出すことから、地方における雇用の受け皿としても貢献している。
他方、園芸作物バリューチェーン強化に向けては、生産、加工、流通の各段階での資金不足による関連設備の未整備が大きな阻害要因となっているが、通常の銀行融資は高金利かつ短期貸付の場合が多い上、園芸作物バリューチェーン関連産業のキャッシュフローに合致する中長期の資金供給が不足しており、また、銀行側の営農に係る知識・知見が十分ではないため、農業関連事業者向けの融資判断が困難であるといった課題を抱えている。このような状況から、同国においては、園芸作物バリューチェーン関連産業における旺盛な資金需要に対応しうる十分な融資の提供が急務となっている。
同国政府の「農業開発基本戦略2019-2030」においては、園芸作物バリューチェーン全体の強化やアグリビジネス環境改善のための農業金融の改善の必要性が指摘されているとともに、「新しいウズベキスタンの開発戦略2022-2026」においては、園芸作物生産への転換、温室建設などによる園芸作物の生産拡大及び輸出振興により、農業生産の年率5%の成長達成と農家の所得倍増が目指されており、本計画は同国の政策において、優先度の高い事業として位置づけられている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国の対ウズベキスタン国別開発協力方針(2017年3月)では、重点分野として「社会セクターの再構築支援(農業・地域開発、保健医療)」を掲げ、「地方部の主要産業である農業分野や保健医療を中心に支援を行う」としており、本計画はこれに合致する。さらに、SDGsゴール8(包摂的で持続可能な経済成長、万人の生産的な雇用と働きがいのある仕事の促進)にも貢献すると考えられることから、本計画の実施を支援する必要性は高い。また、2014年7月に開催された「中央アジア+日本」対話・外相会合において、「中央アジア+日本」対話の枠組みで農業分野地域協力ロードマップが採択され、農業協力は優先的協力テーマの一つとなっていることから、本計画の実施を通じてウズベキスタンの農業分野の発展に寄与することは、二国間関係の強化に資するものであり、外交的にも意義が大きい。
(2)効率性
本計画では、サブローン規模・融資条件の設定は譲許性を維持することを条件に各参加金融機関の判断に委ねることで、参加金融機関にとって使い勝手の良い形とするとともに、農業の生産性向上、作物の多角化等に資する農業技術研修も合わせて実施し、エンドユーザーがサブローンをより有効活用できるよう工夫する。
(3)有効性
本計画により、ウズベキスタンにおける参加金融機関の能力向上(審査能力、リスク管理能力等)、園芸作物の生産性・生産量の向上、輸出力強化、園芸作物バリューチェーンに関連する分野における雇用促進等を通じた農業セクターの発展が期待できる。
また、事業完成2年後(2030年)に見込まれる定量的効果は以下のとおり。
- ウズベキスタンにおけるサブローン融資件数 250件
- エンドユーザーの園芸作物関連の売上高の増加率 10%
注:サブローン融資件数は、ウズベキスタン政府の要望(輸出力強化のため比較的大規模な融資を行うと共に、一定の割合は小規模農家向け融資とする)を踏まえて設定したもの。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
ウズベキスタン政府からの要請書、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
本計画に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び計画概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。