ODA(政府開発援助)

令和4年6月21日

作成年月日:令和4年6月14日
評価責任者:国別開発協力第一課長 竹端 昌宏

1 案件概要

(1)供与国名

 ベトナム社会主義共和国(以下、「ベトナム」という。)

(2)案件名

 衛星情報の活用による災害・気候変動対策計画(第二期)

(3)目的・事業内容

 本計画は、地球観測衛星の開発・利用に必要な関連設備及び施設の整備とそれら施設における衛星観測データ利用のための人材育成を行うことにより、災害・気候変動対策技術の高度化と体制の確立を図るもの。なお、我が国は、2011年10月にベトナム政府との間で円借款の供与に係る交換公文「衛星情報の活用による災害・気候変動対策計画(第一期)」に署名しており(供与限度額:72.27億円)、今次借款はその後続借款であり、事業内容は第一期と共通となる。

主要事業内容
  • (ア)地球観測衛星1基の調達(衛星開発技術及び衛星観測データ利用技術に関する人材育成支援を含む)
  • (イ)施設整備及び機材導入(本部棟、総受信アンテナ、衛星管制・運用棟、研究開発棟、製造加工棟、電力施設等)
  • (ウ)コンサルティング・サービス(入札補助、施工管理等)
供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件
188.71億円 年0.1% 40(10)年 日本タイド
  • (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)上、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリーBに該当する。
汚染対策
 工事中の大気質、騒音・振動、水質等については、散水や重機の使用制限、敷地内の下水システムの整備等の対策をとり、使用時の騒音、廃棄物については、ごみ収集設備や防音設備等の導入により、ベトナム国内の環境基準を満たす見込み。
自然環境面
 事業対象地域は国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当せず、自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。
社会環境面
 本計画はホアラック・ハイテクパーク内でホアラック科学技術都市振興事業を通じて取得された土地を使用するため、追加的な用地取得及び非自発的住民移転は発生しない。
モニタリング
 本計画ではベトナム国家宇宙センターが大気質、騒音、振動、水質、廃棄物等についてモニタリングする。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 ベトナムでは毎年台風や豪雨による風水害が頻発しており、加えて近年は、気候変動の影響による水災害リスクの更なる増大が懸念されている。このような状況下、人命及び社会経済資本の喪失防止のためにも、災害応急対策及び災害被害軽減・予防対策の推進が喫緊の課題となっている。
 現在は、他国衛星から観測データを購入し、災害モニタリングや森林管理を行っているが、画像入手に時間とコストを要するため、十分に活用できておらず、災害時に迅速かつ正確に観測データを入手するためには、地球観測衛星の自国での運用を行うための体制設備が課題となっている。
我が国の基本政策との関係
 本計画は、宇宙科学・技術による災害・気候変動対策を支援するものであり、我が国の対ベトナム国別開発協力方針において重点分野の一つとして掲げている「脆弱性への対応」のうち、成長の負の側面に対処すべく、災害・気候変動等の脅威への対応を支援することと合致するものである。また、我が国の宇宙分野における強みと耐風や豪雨への対応の経験をいかした支援への期待は高く、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール13(気候変動とその影響への緊急の対処)の達成にも貢献するものである。
 2021年11月に岸田総理大臣及びチン首相によって表明された共同声明「アジアの平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップにおける新たな時代の幕開けに向けて」において、「持続可能な開発のための環境保護、防災、気候変動緩和・適応、グリーン・トランスフォーメーション分野における継続的な協力の重要性に留意」することが確認されていることから、本計画は両国関係の更なる強化及び日本の外交政策推進の観点からの意義も高い。

(2)効率性

 2018年5月から2023年12月までの間、有償勘定技術支援「気象予測及び洪水早期警報システム運営能力強化プロジェクト」を実施しており、本計画での衛星による観測体制整備に加え、同プロジェクトによって地上の気象観測体制を強化し、災害時により正確で即時性の高い気象情報を提供することで、更なる防災対策の強化が期待される。

(3)有効性

 本計画の実施により、事業完成2年後の2025年には衛星画像の取得に要する時間が2011年実績値の20分の1以下、データ処理能力は現在の約6倍となる見込みである。それにより、災害・気候変動対策技術の高度化と体制の確立を図り、もって同国の脆弱性への対応に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

  • (1)ベトナム国別評価報告書(2015年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
  • (2)案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
  • (3)なお、本案件に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。
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