ODA(政府開発援助)

令和4年3月11日

評価年月日:令和4年2月7日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一

1 案件名

1-1 供与国名

 モーリタニア・イスラム共和国(以下「モーリタニア」という。)

1-2 案件名

  水産職業訓練センター施設整備計画

1-3 目的・事業内容

 水産職業訓練センター(CQFMP)ヌアクショット本部の建て直し・拡張及び機材の整備を通じ、モーリタニアの水産訓練実施体制・能力の強化を図り、もって同国の水産業従事者の育成に寄与するもの。
 供与限度額は19.15億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリ-Cであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
 前提・外部条件として、(1)施設建設工事の入札前にモーリタニア側負担による既存施設の解体・撤去・整地が行われること、(2)モーリタニアの水産政策が大幅に変更されないこと、などが確保される必要がある。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)モーリタニア(一人当たり国民総所得(GNI)1,660ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リストにおいて、後発開発途上国(LDC)に分類されている。
  • (2)モーリタニアにおいて、水産業は輸出額全体の22.1%を占めるなど国家経済の柱となっているが、歴史的には外国船による企業型沖合漁業と主に周辺国からの移動漁民による沿岸漁業に牽引されて発展したこともあり、近年の水産物輸出の増加は、実態として、自国の水産業従事者ではなく、セネガルを始めとする周辺国の漁船や移民労働者によって支えられており、漁獲・加工を行う自国の水産業従事者の育成が急務となっている。この状況を受け、同国政府は、国家開発計画「成長の加速化と繁栄の共有(SCAPP)2016~2030」において、自国出身の水産業従事者を現在の6.6万人から2030年までに20万人まで増加することを目指している。
  • (3)全国7か所の施設から構成される水産訓練センター(CQFMP)は、主に沿岸漁業で必要とされる技術訓練全般を行うモーリタニア唯一の公的機関であり、年間約1,000人の訓練生を受け入れている。このうちヌアクショット本部は、漁業未経験者を対象としたまき網漁業の訓練、民間水産加工場で就労するための水産物選別及び水産物加工の訓練などを年間約200人に対して行い、自国民の水産業従事者育成に取り組む中核的な機関である。しかしながら、訓練施設としてのキャパシティ不足や老朽化、実習用機材の不足や老朽化、宿泊施設の不備などの問題を抱え、政府が目指している訓練受入れ人数の増加及び訓練希望者のニーズに応えることができていない。かかる状況から、モーリタニア政府から我が国に対して、同国の水産訓練実施体制・能力の強化に係る要請がなされた。
  • (4)我が国は1977年以降、モーリタニアに対して継続的に水産分野の協力を実施してきている。現在日本へ輸入されているタコの約4割が同国産であり、同国EEZは日本の漁船にとって西アフリカ最重要漁場の一つになっている。対モーリタニア国別開発協力方針(2017年9月)では、「水産業への包括的な支援」を同国の持続可能な経済成長に貢献するための重点分野に位置付けており、「水産業による国家経済振興及び雇用創出への道筋をつける」としている。加えて、我が国は暴力的過激主義への対応を含めた紛争予防や平和の持続のための「アフリカの平和と安定に向けた新たなアプローチ(NAPSA)」を第7回アフリカ開発会議(TICAD7)(2019年)の公約として打ち出している。若年層に職業訓練の機会を提供する本事業は、若年層の過激化防止にも寄与するものであり、同方針に合致するものである。
  • (5)本事業は、モーリタニアの開発課題・開発政策及び我が国の協力方針に合致し、同国の水産訓練実施体制・能力の強化を通じて、同国の水産業従事者の育成や増加に資するものであり、SDGsゴール8「持続的、包摂的で持続可能な経済成長と、万人の生産的な雇用と働きがいのある仕事の促進」や、ゴール14で推進されている「健全で生産的な海洋の実現」にも貢献すると考えられることから、本事業の実施を支援する必要性は高い。

2-2 効率性

  • (1)施設形状の計画、杭基礎の構造において、複数案を比較検討の上、経済性にも優れた工法等を採用した計画としている。
  • (2)施設に要求される本部管理、訓練実習機能、訓練生寮の機能について、本部組織の運営体制、計画されている訓練コースの内容(訓練内容、期間、訓練人数)、その訓練コースの実施に必要な訓練生寮の容量等を分析・検討の上、それを計画・設計条件に反映し、施設・機材整備計画を策定しており、経済的・技術的に合理的な規模・仕様となるようにした。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2027年の目標値と比べると、主に以下のような効果が期待される。

  • (1)定量的効果:施設での訓練修了者数が、168人/年から368人/年に、訓練実施日数が、192日/年から641日/年(全コース延べ日数)に、また、同施設が提供可能な訓練コースの種類が、4から11に増加する。さらに、国際規格(STCW-F)に準拠して養成される漁船員数が、0人/年から15人/年に増加する。
  • (2)定性的効果:施設での訓練修了者に対する民間企業等からの評価が高まり、同修了者が新規に水産業従事者として就労する機会が増える。零細漁業者や漁船乗組員の安全と海上保安に関する意識、知識及び技術が向上し、海難防止に寄与する。また、全寮制訓練生が、衛生的かつ適切な住環境で滞在できるようになる。さらに、保健室、訓練生寮、調理場・衛生設備等の整備により、CQFMP職員及び訓練生向けの福利厚生が向上する。

事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)モーリタニア政府からの要請書
  • (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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