ODA(政府開発援助)

令和3年12月20日

評価年月日:令和3年11月2日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野 修一

1 案件名

1-1 供与国名

 ジブチ共和国(以下「ジブチ」という。)

1-2 案件名

 海上保安能力向上計画

1-3 目的・事業内容

 ジブチ沿岸警備隊に対し巡視艇2隻の建造及び浮桟橋の整備を実施することにより、海上保安能力の向上を図り、もって地域の安定化努力強化に寄与する。
 供与限度額は29.46億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本事業は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
  • (2)政情、治安等が極度に悪化しないこと。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ジブチはソマリア、エチオピア、エリトリアなどの紛争国・地域と国境を接するのみならず、アジア、アフリカ、欧州を結ぶ結節点に位置し、その沿岸海域は、アデン湾、紅海の出入口に当たるバブ・エル・マンデブ海峡を含み年間約19,000隻もの船舶が通航する、海上交通の要衝である。同国は国家開発計画Vision Djibouti 2035において、あらゆるリスクから国家を守るため、保安機関強化の必要性を謳っているが、同国の海域では海賊被害を始め、密航・密漁・密輸等の違法行為や難民の海難事故等の問題が生じている。
  • (2)これらの課題に対処するため、ジブチ沿岸警備隊(Djibouti Coast Guard。以下「DCG」という。)は同海峡付近を重点海域として哨戒体制の強化を目指している。しかし、現在のDCG保有船艇35隻のうち同海峡での安全な哨戒が可能な船艇は、2015年に無償資金協力にて配備した巡視艇2隻のみで、これら2隻の巡視艇も季節風が吹くハムシン季の約2か月間は同海峡での安定的な哨戒が困難となり、また1航海当たりの連続航海時間が限定されているため、年間を通じた遠洋海域における安定性を備えた巡視艇の整備が喫緊の課題となっている。
  • (3)我が国の対ジブチ国別開発協力方針では、「地域の安定化努力支援」を重点分野として掲げており、ジブチ政府の海上保安能力強化に寄与する本事業は、同方針に合致する。また、海上犯罪等の問題に対処する観点から、SDGsゴール16「平和と公正」にも貢献するものである。
  • (4)2019年8月に開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)において、我が国はアフリカにおけるブルーエコノミーの発展を支援する旨表明しており、本事業は右表明を実現するものである。
  • (5)ジブチに我が国の自衛隊が派遣されて以来、活発な要人往来等を通じて二国間関係は急速に緊密化し、我が国にとって同国は、「自由で開かれたインド太平洋」を実現する上での西の要所として戦略的に重要なパートナーとなっている。また、同国はこれまで国際社会においては我が国の立場を一貫して支持してきている友好国でもあることから、同国との二国間関係を維持・強化する意味でも、本事業の実施は極めて重要である。

2-2 効率性

  • (1)ジブチ政府からの要請を踏まえながら、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とした。
  • (2)過去に実施した同様の案件との比較を行い、事業費の妥当性を検討し、コスト縮減を図った。

2-3 有効性

 本事業の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2026年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 一渡航当たりの連続哨戒(パトロール)可能期間が5日間から14日間に増加する。
    • イ 堪航性(安全に航行可能な波高条件)が波高2.5メートル以下から波高3.0メートル以下に向上する。
    • ウ 重点海域(バブ・エル・マンデブ海峡)への年間配備日数/配備巡視艇数が62日/2隻から182日/4隻に増加する。
  • (2)定性的効果
     バブ・エル・マンデブ海峡を含む同国海域の哨戒体制が強化され、海難事故、密輸、密漁、海賊事案等の軽減に寄与するとともに、安全で円滑な海上輸送及び社会経済活動の確保に寄与する。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ジブチ政府からの要請書
  • (2)「海上保安能力向上計画」協力準備調査報告書
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