ODA(政府開発援助)

令和3年11月25日

評価年月日:令和3年11月17日
評価責任者:国別開発協力第二課長 秋山 麻里

1 案件概要

(1)供与国名

 バングラデシュ人民共和国(以下「バングラデシュ」という。)

(2)案件名

 マタバリ超々臨界圧石炭火力発電計画(VI)

(3)目的・事業内容

 本計画は、バングラデシュ南東部チョットグラム管区マタバリ地区に定格出力1,200メガワット(約600メガワット×2基)の高効率の超々臨界圧石炭火力発電所、石炭輸入用港湾、送電線、及びアクセス道路等の関連設備を建設することにより、同国における電力供給の拡大を図り、もって同国における経済全体の活性化に寄与するもの。

主要事業内容
  • (ア)超々臨界圧石炭火力発電所建設(約600メガワット×2基)、石炭搬入用港湾建設
  • (イ)送電線建設(送電線約94キロメートル、鉄塔等)
  • (ウ)アクセス道路整備(橋梁約800メートル、新規道路建設約7キロメートル、既存道路補修約5キロメートル等)
  • (エ)周辺地域電化(送電線約25キロメートル、変電所、配電設備)
  • (オ)コンサルティング・サービス(基本設計/詳細設計、入札補助、施工監理、組織強化等)
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
1,372.52億円 0.6% 30(10)年 一般アンタイド
  • (注)金利は、一般条件(固定・基準)を適用。
    コンサルティング・サービス部分に係る金利は、0.01%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

EIA(環境影響評価)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)に掲げる火力発電セクターに該当し、カテゴリAに分類される。発電所及び港湾の建設・整備に係るEIAは2013年10月に、送電線及びアクセス道路の建設・整備に係るEIAは2013年11月に、バングラデシュ環境森林省環境局(DOE)により承認済み。その後、変更された送電線ルートについては、「ダッカ-チッタゴン基幹送電線強化計画」の中にて一括でEIA報告書が作成され、2016年6月にDOEにより承認済み。周辺地域電化事業(送配電網の建設)に係るEIAは2015年10月にDOEにより承認済み。なお、港湾設計変更による本計画のEIA報告書の改訂は不要であることを確認済み。同部分における環境影響評価結果及び緩和策については、「マタバリ港開発計画」のEIAとして2018年11月に承認済み。
用地取得
 本計画では、発電所・港湾に係る用地取得面積は約709ヘクタールであり、当該地域の一部は、乾季は塩田、雨季はエビの養殖場として利用されていた。発電所・港湾の建設・整備により、44世帯の非正規居住者の住民移転が必要であった。また、被影響住民は2,300人である。さらに、アクセス道路の新設及び補修(橋梁約800メートル、新規道路建設約7.4キロメートル、既存道路補修5キロメートル部分)に係る用地取得面積は約11ヘクタールであり、102世帯580人の住民移転を伴う。バングラデシュ国内手続きとJICA環境社会配慮ガイドランに沿って作成された住民移転計画(RAP)に従い、用地取得及び補償や支援の手続が進められる。送電線建設及び周辺地域電化については、実施機関所有地又は政府所有地を活用するため、用地取得は発生しない。なお、現地ステークホルダー協議で寄せられた要望に関し、実施機関が適切に対応し、参加者から理解を得ている。
外部要因リスク
 特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 バングラデシュでは、近年の安定した経済成長や工業化の進展に伴い電力需要は急増しており、2020年から10年間に亘り、年率約7.9%(注1)の電力需要の増加が見込まれる一方、発電の6割を依存する国内天然ガスは産出が頭打ちとなる見通しであり、2018年からはLNGの輸入が開始された。このような状況において、エネルギー多様化が、同国のエネルギー安全保障上の重要課題となっている。
 同国政府の「第8次五か年計画」(2020/21~2024/25年度)において、エネルギー源の多様化が進んでおらず、継続して重要な課題であるとの認識から、「第7次五か年計画」と同様に、電力セクターが最優先セクターの一つと位置付けられている。改訂版「電力・エネルギーマスタープラン」(Power System Master Plan 2016)においても、国内天然ガスに代わる新たなエネルギー源を輸入石炭、LNG及び原子力により賄う同国政府の方針が示されている。また、本計画は首相直轄の優先インフラ事業の一つに位置付けられている。
 (注1)電力エネルギー鉱物資源省、Power System Master Plan 2016
我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは、人口の約1/4弱が依然として貧困状態にあり、電力、運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足している。こうした開発ニーズを踏まえ2018年2月に策定された「対バングラデシュ国別開発協力方針」においては、今後の対バングラデシュODAの重点目標として、中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化(「経済成長を通じた貧困削減」を追求するためのインフラの整備等)を掲げている。
 本計画は、電力需要の急増に対応し、経済全体の活性化を図るものであることから、上記の重点目標に合致するとともにSDGsのゴール7(エネルギーアクセス)及びゴール9(強靭なインフラ整備)に貢献する側面も有している。
 また、本計画は、2014年の日バングラデシュ首脳会談で合意した「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の下、経済インフラ整備や投資環境改善に寄与する重要案件であり、本計画を通じて、経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは、日バングラデシュ関係の更なる強化につながる。

(2)効率性

 本計画では、コントラクター及びコンサルタントからの技術移転や、長期保守契約を通じ、維持管理体制の構築と定着を図るほか、本計画において別途雇用する組織強化コンサルタントにより実施機関の管理体制強化を図る。

(3)有効性

 本計画により、バングラデシュ南東部チョットグラム管区マタバリ地区に定格出力1,200メガワット(約600メガワット×2基)の高効率の超々臨界圧石炭火力発電所、石炭輸入用港湾、送電線、及びアクセス道路等の関連設備を建設することにより、2024年を目処にダッカ首都圏の電力ニーズの30%に相当する年間7,865ギガワットアワーの発電量が生み出される見込みである。これにより、同国における電力供給の拡大やエネルギー源の多様化が図られ、もって同国における経済全体の活性化に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、JICAガイドライン、その他JICAより提出された資料。
 本計画に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び計画概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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