ODA(政府開発援助)

令和3年7月29日

評価年月日:令和3年3月5日
評価責任者:国別開発協力第一課長 竹端 昌宏

1 案件概要

(1)供与国名

 フィリピン共和国(以下、「フィリピン」という。)

(2)案件名

 マニラ首都圏地下鉄計画(フェーズ1)(第二期)

(3)目的・事業内容

 本計画は、マニラ首都圏において地下鉄を整備することにより、増加する輸送需要への対応を図り、マニラ首都圏の深刻な交通渋滞の緩和に資するとともに、大気汚染や気候変動緩和に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)駅間・駅部分の土木・建築工事
    • (イ)車両基地・フィリピン鉄道訓練センター整備
    • (ウ)鉄道システム整備
    • (エ)車両調達
    • (オ)コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    2,533億700万円 年0.1% 40(13)年 日本タイド
    (注)金利は、本邦技術活用条件(STEP)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる鉄道セクター及び影響を及ぼしやすい特性(大規模非自発的住民移転)に該当するため、カテゴリAに分類される。
  • イ 環境許認可:本計画に係る環境許認可(ECC)は、2017年10月に取得済み。また、線形変更等の修正に伴い環境影響評価(EIS)の修正を行っており、2019年12月に修正版を取得済み。
  • ウ 用地取得及び住民移転:本計画は、約2,100人の非自発的住民移転が想定されており、住民移転及び用地取得はフィリピン国内手続き及びJICAガイドラインの要件を満たす住民移転計画に沿って実施される。
  • エ 事業実施に当たっては、感染症対策を含め、関係者間で緊密に情報共有を行い、必要な安全対策を講じる。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
    • (ア)マニラ首都圏は、620平方キロメートルと比較的小さな都市地域であるにも関わらず、人口が年間1.8%の割合で増加しており、1990年の792万人から2015年には約1.6倍の1,287万人に達した。しかしながら、大量輸送手段としての軌道系公共交通の整備状況は遅れており、首都圏内の高架鉄道三路線(うち、二路線は軽量)の総延長は50キロメートルにとどまり、交通渋滞が深刻化している。
    • (イ)こうした状況の中、フィリピン政府は、2017年にインフラ計画「Build Build Build」を発表し、本計画を同インフラ計画の優先事業に位置づけている。
  • イ 我が国の基本政策との関係
    • (ア)我が国政府は、2017年10月の日フィリピン首脳会談に際し発表した「今後5年間の二国間協力に関する日フィリピン共同声明」において、マニラ首都圏の交通渋滞の抜本的な解決のために、本計画の整備及び実施に協力する方針を明示しており、本計画を実施することは二国間関係強化の観点から重要性が高い。
    • (イ)また、我が国の対フィリピン国別開発協力方針(2018年4月)は、「持続的経済成長のための基盤の強化」を重点分野として、大首都圏及び地方都市を中心とした交通網ネットワークを始めとした質の高いインフラの整備に対する支援の実施を掲げており、本計画は同方針に合致するものである。
    • (ウ)さらに、本計画はSDGsゴール9(強靭なインフラの構築)、ゴール11(包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市と人間住居の構築)及びゴール13(気候変動対策)にも貢献すると考えられ、本計画を実施する必要性は高い。

(2)効率性

  • ア 我が国はフィリピンに対し,これまでに「LRT1号線増強計画(I)(II)」,「メトロマニラ大都市圏交通緩和事業(I)(II)」、「マニラ首都圏大量旅客輸送システム拡張計画」、「南北通勤鉄道計画(マロロスーツツバン)」、「南北通勤鉄道延伸計画」及び「首都圏鉄道三号線改修計画」等の支援を行ってきており、同国の旅客輸送・システム整備におけるもっとも重要なパートナーとなっている。
  • イ 同国政府は、本計画の運営・維持管理主体を含めた鉄道人材育成のためにフィリピン鉄道訓練センター(以下「PRI」という。)を設立し、我が国としても、円借款附帯プロジェクト及び無償資金協力により支援中である。また、PRIにおける日本の鉄道運営ノウハウを活用した人材育成との連携により、本計画での効率性を確保する。

(3)有効性

 本計画の実施により、フィリピン首都圏の運輸・交通網の整備が進展することが期待される。現計画の最北端駅から最南端駅(イーストバレンズエラ駅からニノイ・アキノ国際空港駅)は、現在、自動車では約2時間であるが、2029年には、本地下鉄により約40分に短縮される見込みである。また、定性的効果として、地下鉄沿線における公共交通指向型(TOD)開発、マニラ首都圏の深刻な交通渋滞の緩和、大気汚染及び気候変動の緩和に貢献する見込みである。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

  • (1)フィリピン政府からの要請書、JICAガイドライン、その他JICAより提出された資料。2019年度フィリピン国別評価(外務省ODA第三者評価)。
  • (2)本計画に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース、事業事前評価表を参照。
  • (3)なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。
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