ODA(政府開発援助)

令和2年6月11日

評価年月日:令和2年2月14日
評価責任者:国別開発協力第一課長 渡邊 滋

1 案件概要

(1)供与国名

 フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)

(2)案件名

 「ダバオ市バイパス建設計画(第二期)」

(3)目的・事業内容

 本計画は,フィリピン・ミンダナオ島ダバオ市において,同市の南端部と中央部にかけてバイパス道路を建設することにより,増加する交通量への対応及び市内の交通渋滞の改善並びに同市を核とするミンダナオ島最大の経済圏内の物流改善を図り,もってミンダナオ島の経済発展に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)バイパス道路(両側4車線)の新規建設(約30キロメートル)
    • (イ)コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
348億3,000万円 年0.1% 40(12)年 日本タイド

 (注)金利は,本邦技術活用条件(STEP)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)に掲げる影響を及ぼしやすい特性に該当するため,カテゴリAに分類される。
環境許認可:本計画に係る環境許認可(ECC)は,第一期の想定で取得済みであったが,その後の詳細設計等を受けて影響評価報告書(EIS)を修正し,2019年8月に再取得済みである。
用地取得及び住民移転:本計画では,約155ヘクタールの用地取得及び約400世帯の非自発的住民移転が想定されており,住民移転及び用地取得はフィリピン国内手続き及びJICAガイドラインの要件を満たす住民移転計画に沿って実施される。住民移転に関する住民協議では,事業概要,補償及び支援の概要について説明がなされ,事業実施に係る特段の反対は確認されていない。
本計画の実施対象地域は,国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当しない。なお,本計画により,国際自然保護連合(IUCN)レッドリストに記載された植物主が影響を受けるため移植を優先するが,伐採する場合には,国内の基準に則り植林を行い,定期的にモニタリングがなされる。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 ダバオ市(人口約163万人)は,フィリピン・ミンダナオ島最大の都市であり,フィリピン国内においても第3位の人口規模を有する。ダバオ地域のGDP成長率は,2017年は10.7%,2018年は8.6%であり,同国全体の成長率(2017年6.7%,2018年6.2%)を上回り,高い経済成長を遂げている。また,ダバオ市港湾部からは,ミンダナオ島の主要輸出品目である農産物や周辺の日系企業が生産する工業製品等が輸出されている。ダバオ市はミンダナオ島経済の中心,牽引役として,今後重要性が一層増すことが見込まれている。
 一方,経済成長に伴い,車両登録台数は急増しており,2018年には前年から約20%増加した(約59万台)。また,市内幹線道路沿線に経済活動・宅地開発が集中しているほか,市街地を通過する必要がない通過交通も流入していることから,交通渋滞が発生し,同市の経済活動や物流に支障を来している。今後,同市が更に発展していく中で,交通渋滞の一層の深刻化が懸念される。
 このため,市街地を通過せずに港湾部と同市南端を結ぶバイパス道路を整備し,道路交通容量の拡充,都市内交通と通過交通の分離を行い,物流の改善,交通渋滞の緩和を促進する必要がある。
 なお,同国政府が進めるインフラ整備政策(「ビルド・ビルド・ビルド」)において,本計画は旗艦事業の一つに位置づけられている。
我が国の基本政策との関係
  • (ア)我が国は,2017年10月の日フィリピン首脳会談に際し発表した「今後5年間の二国間協力に関する日フィリピン共同声明」において,地方開発支援を柱の一つに掲げ,地方都市の活性化に向けて具体的な案件形成を進める方針を明示している。本計画を実施することは,首脳レベルのコミットメントを具体化するものであり,二国間関係の更なる強化に繋がることから,外交上の意義も高い。
  • (イ)また,我が国の対フィリピン国別開発協力方針(2018年4月)は,「持続的経済成長のための基盤の強化」への貢献を重点分野として位置づけ,地方都市を中心とした交通網ネットワークを始めとした質の高いインフラ整備に貢献していく方針を掲げており,本計画は同方針に合致している。
  • (ウ)さらに,本計画はSDGsゴール8(包摂的かつ持続可能な経済成長)及び11(包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市の実現)の達成にも貢献すると考えられる。

(2)効率性

 本計画では,維持管理主体となる民間事業者への適切なモニタリングが行われるよう,日本の技術を活用しつつトンネル維持管理に係る実施機関の能力強化を行うことで,効率的・効果的な運営・維持管理の実施を図る。また,維持管理主体となる民間事業者についてはトンネル維持管理実績を持つ海外事業者との共同企業体の組成が予定されている。

(3)有効性

 本計画によって,事業完成2年後(2025年)には,新設されるバイパスを一日当たり約26,000台(乗用車換算台数)が利用する見込みであるほか,既存の道路区間における交通量の増加も約1.2倍(2017年の約12,000台から2024年には15,000台(乗用車換算台数/日))まで抑制できることが見込まれる。また,ダバオ市南端から主要港への所要時間は約90分から約50分に短縮する見込みであり,同市及び周辺地域の経済活動の活性化,対外投資促進への貢献が期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,JICAガイドライン,その他JICAより提出された資料。2010年度フィリピン国別評価(外務省ODA第三者評価)。
 本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース,事業事前評価表を参照。
 なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。

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