ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和5年3月31日
評価年月日:令和5年2月6日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士
1 案件名
1-1 供与国名
ホンジュラス共和国(以下、「ホンジュラス」という。)
1-2 案件名
感染性廃棄物管理改善計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、対象10県における医療施設及び自治体において、感染性廃棄物管理に必要な資機材等を整備することにより、新型コロナウイルス感染症対応で生じた感染性廃棄物等の適切な処理及び滅菌・感染制御基盤の強化を図り、もって廃棄物由来の感染防止を通じたホンジュラスの質の高い社会サービスの普及に寄与するもの。
供与限度額は10.13億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は、国際協力機構(JICA)環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
- (2)ホンジュラスの治安・新型コロナウイルス感染症流行状況が大幅に悪化しないか注視する必要がある。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ホンジュラス(一人あたり国民総所得(GNI)2,540ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類される。
- (2)同国では、新型コロナウイルス(以下、「COVID-19」という。)の感染拡大が依然収束せず、延べ感染者数は44万人に達している(2022年8月時点。出典:Our World in Data)。同国政府は感染拡大防止のためにワクチン接種を進めているが、これに伴い、国内の医療施設においては注射筒や注射針等に加え、個人防護具(マスク・ガウン等)を含む感染性廃棄物の発生量が急激に増加しており、同問題への対策が喫緊の課題となっている。
- (3)同国では、2008年に制定された「医療施設より発生する感染性廃棄物管理規則」に基づき、感染性廃棄物の管理に係る所管省庁である保健省監督のもと、全国を20に区分けした保健行政区において各医療機関が感染性廃棄物を管理している。しかしながら、同国の国公立病院では院内で発生した感染性廃棄物の収集運搬を民間業者に委託しているものの、これらの業者は無害化処理機材を保有しておらず、何ら処理がなされないまま最終処分場に運ばれ、一般廃棄物と混在して埋め立てられている。また、地方部においても、従来からの収集運搬車両や処分場重機の不足のため、COVID-19感染拡大下における感染性廃棄物の発生量の増加に対応しきれていない状況にあり、医療従事者や廃棄物管理従事者、周辺住民への廃棄物を介した感染リスクが懸念され、管理体制の強化が急務となっている。このような背景を踏まえ、同国政府は「COVID-19感染拡大の緊急事態下における衛生と固形廃棄物の適正な管理に関するガイドライン」(2020年、環境省)を制定し、感染性廃棄物の分別収集、適切な無害化処理の実現を優先度の高い事業として位置づけており、本計画はその趣旨に合致するものである。さらに、我が国の対ホンジュラス国別開発協力方針(2021年6月)においても、「地方活性化施策を中核とした持続的な社会経済開発への支援」を基本方針とした上で、「地方開発」を重点分野の1つとして定めており、本計画は同方針にも合致し、SDGsゴール3(すべての人に健康と福祉を)及びゴール11(住み続けられるまちづくりを)にも貢献するものである。
- (4)ホンジュラスの所得水準は相対的に高いことから、「所得水準が相対的に高い国に対する無償資金協力の効果的な活用について」に基づき、無償資金協力の供与の適否について精査が必要である。我が国は、COVID-19の世界的な感染拡大を受け、ワクチンの公平なアクセス確保のために、COVAX等を通じたワクチンの調達や供給面での取組に貢献するとともに、ワクチンを接種現場まで届けるためのコールドチェーン体制等を整備する「ラスト・ワン・マイル支援」を77か国・地域で実施した。これらの取組は、途上国におけるワクチン接種促進に極めて有効な支援として、被援助国のみならず主要ドナーからも高い評価を得ている。本計画は、COVID-19感染症の流行が急性期を過ぎた後を想定し、日本が引き続きコロナ関連支援で国際社会をリードすべく、経済社会活性化に向けて必要なニーズを先取りした支援を実施していくものである。また、2022年5月に開催された日米豪印首脳会合において4か国の首脳は、より良い健康安全保障の構築及びユニバーサル・へルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組を主導することを確認しており、本計画の実施を通じてウィズ・コロナの経済社会活性化に必要な支援を呼びかけ、国際社会にアピールしていくことは外交的に大きな意義がある(「外交的観点」)。本事業は、同国の開発課題・開発政策並びに我が国及びJICAの協力方針・分析に合致し、感染性廃棄物管理体制強化のための機材整備を通じ、世界的な脅威であるCOVID-19の感染拡大防止を軽減することは、人間の安全保障の観点からも極めて重要である(「人道上のニーズ」)。またSDGs ゴール11(住み続けられるまちづくりを)にも貢献する。加えて、廃棄物由来の感染症対策のモデル事業として中南米地域へ広域的に波及が期待されることから(「広域性」)、本事業は、無償資金協力による実施が適当である。
- (5)以上の観点から、本計画の実施は、長い信頼と友好の歴史を有し、基本的価値観を共有するホンジュラスとの更なる関係強化及び開発協力としての必要性の観点から外交的意義が高い。
2-2 効率性
これまで同国の廃棄物管理分野では、個別専門家「市連合会廃棄物管理」(2013年~2016年)及び「市連合会廃棄物管理能力強化」(2016年~2019年)により、本計画の対象となっている自治体連合を含む自治体や自治体連合における都市固形廃棄物の管理、及び感染性廃棄物の管理を実施するための能力強化を行ってきており、相乗効果が期待される。
2-3 有効性
本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成から3年後の2027年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果
医療機関にて滅菌処理される感染性廃棄物の量が2,585キログラム/日となる(無害化処理機材が稼働していないため、2021年の実績はゼロ)。 - (2)定性的効果
自治体連合を構成する地方部の21の自治体における感染性廃棄物の分別収集・運搬及び最終処分場の管理体制及び国公立病院での感染性廃棄物の分別保管と収集体制が強化され、対象地域における医療従事者や廃棄物関連事業者等の廃棄物由来感染症罹患リスクが減少する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ホンジュラス政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)